こんにちは。行政書士の大石です。

遺言書の作成を専門家に任せず、お一人で行う場合には、相続遺言に関する最低限の法律の知識が必要です。

何故ならば、遺言書は法律上の要件を満たさないことで無効となるリスクが大いにあることや、遺言書に書ける内容で、法律上の効力が生じる事項は決まっているためです。

この記事では、専門家に頼らず、お一人で遺言書を作成する場合に必ず知っておくべきことについてご説明します。

法律用語の確認

遺言書を作成する場合、相続・遺言に関する用語をある程度知っておかなければなりません。

遺言書はどんな書き方をしても良いわけではないからです。

法律で定められた言葉を使わないと、あとあと相続人間でトラブルとなる危険があります。

遺言書で頻繁に登場する用語の一部を以下に示します。

  • 相続させる

遺言者が、相続人に対して財産を譲る場合に、「相続させる」という言葉を使います。相続人以外に対しては使えません。

たとえば、「長男の太郎に預金1000万円を相続させる。」のように使います。

  • 遺贈する

遺贈とは、遺言者の財産を無償で譲ることをいいます。遺贈の相手は相続人であっても、それ以外の者であっても構いません。

たとえば、「長男の妻 花子に現金200万円を遺贈する。」という使い方をします。

「相続させる」は相続人に対してのみ使え、「遺贈する」は相続人に対しても、相続人以外に対しても使えます。

  • 負担付遺贈

負担付遺贈とは、上で説明した遺贈に、何かしらの負担(義務)を付けた遺贈です。

「財産を譲る代わりに、〇〇をしてください」というイメージです。

たとえば、「長男の太郎に土地と家を相続させる。その負担として、母親の扶養をすること」のように使います。

  • 付言

付言(ふげん)とは、遺言書の最後に付け加えて記載する、遺産相続に関係しない内容を書く場所です。

付言に書いた内容には、法的な拘束力が生じず、何を書いても構いません。

たとえば、「家族への感謝の気持ち」「遺言書を作成した理由」などを書くことが多いです。

上記に挙げた用語は遺言書を書く場合に最低限知っておくべきものとなります。

上記以外にも相続、遺言、遺産分割などに関する法律用語は数多くあります。

遺言能力と遺言の効力・遺言でできること

遺言を作成する場合の大前提として、遺言を作成するには遺言能力がなければなりません。

遺言能力とは、「遺言をするために必要な、行為の結果を弁識、判断しうるに足りる意思能力」とされています。

つまり、簡単に言いますと、遺言を書いたことで、その後どのような結果となるのか(どんな効力が生じるのか)を、遺言を書く当時に理解できていなければ、遺言能力がないことになるのです。

民法963条に次のとおり規定されています。

第九百六十三条 遺言者は、遺言をする時においてその能力を有しなければならない。

遺言能力がない方が書いた遺言は無効です。

たとえば、重度の認知症を患っていた場合には、遺言能力が認められないことが多いです。

上記を理解した上で、遺言書を書くと、どんな効力が生じるのか、また遺言でどんなことができるのかをご説明します。

まず、遺言には法定遺言事項と付言事項を書くことができます。

法定遺言事項とは、遺言書に書くと法的な効力が生じるものとして、法律で定められているものです。

つまり付言事項とは反対の性質を持つものと言えます。

法定遺言事項として書くことができる内容は法律で決められており、その一部を以下に示します。

  • 相続分の指定
  • 遺産分割方法の指定
  • 推定相続人の廃除
  • 遺贈
  • 子の認知
  • 遺言執行者の指定

遺言の効力発生時期、遺言能力と判断基準、遺言でできることの詳細はこちらでまとめています。

遺言の効力発生はいつから?遺言能力と判断基準、遺言で「できること」

相続財産(遺産)に含まれるもの

相続について、民法では次のように規定されています。

(相続の一般的効力)
第八百九十六条 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

条文中の、「一切の権利義務」の中には、被相続人(亡くなられた人)の有していたプラスの財産とマイナスの財産が含まれます。

プラスの財産の例としては、不動産や預貯金、貴金属などですね。

マイナスの財産とは、借金などの負債です。

遺言者は、遺言書を作成するに際し、自己の有する財産の中で、どれが相続の対象となるのかを知っておきましょう。

法定相続人、法定相続分を理解する

被相続人の死後、誰が相続人(法定相続人)となるか、また遺産の取り分(法定相続分)はどれだけかは知っておく必要があります。

遺言書がなければ、法定相続人が法定相続分に応じて遺産を受け継ぐことになります。

相続人の間で遺産分割協議が成立すれば、その内容に従うことになります。

ただ、「妻には多めに遺産を残したい」というように、法定相続分とは異なった分け方をしたい場合もあるでしょう。

その場合には、遺言書を作成し、相続分の指定や、遺産分割方法の指定をしておきます。

遺留分を理解する

以下に示す相続人には、遺留分が保障されています。

  • 配偶者
  • 第1順位の相続人(被相続人の子や孫)
  • 第2順位の相続人(被相続人の父母、祖父母)

遺留分とは、相続人が最低限得ることができる相続分(遺産の取り分)のことをいいます。

たとえば、遺言によって、「私のすべての財産を愛人の京子に遺贈する」なんて書かれた場合、相続人である配偶者や子は唖然とするでしょう。

遺言書の文言だけからすると、相続人には1円も入ってこないことになります。

ですが、これでは相続人があまりに不憫です。

よって、遺留分という「相続人に保障された最低限の遺産の取り分」を認めてあげ、その遺留分すら入ってこない場合、遺留分の限度で財産を取り返すことを認めているのです。

上記の例ならば、配偶者や子は、被相続人の愛人から、自身の遺留分を満たす限度で遺産を取り返すことができます。これを遺留分減殺請求といいます。

遺留分の仕組み、計算方法、遺留分の請求のやり方の詳細はこちらでまとめています。参考にしてみてください。

【相続で損しない】遺留分の仕組みと減殺請求のやり方を【丁寧に!】

遺言書は3種類ある

遺言書には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言と3種類があります。

それぞれにメリット・デメリットがあり、遺言書を作成する上でとても重要なポイントとなります。

以降で一つ一つご説明します。

自筆証書遺言

自筆証書遺言とは、一番お手軽に作成できる遺言書です。

遺言者が一人で自宅などで作成することができ、作成に費用もかかりません。

ただし、注意すべき点は、遺言書の書き方や訂正の仕方が法律で定められていることです。

もしも形式上の不備があった場合、遺言書の全体が無効となる場合があります。

無効とならない自筆証書遺言の書き方、訂正の仕方、注意事項の詳細をこちらでまとめています。

【初心者向け】遺言書の正しい書き方&訂正のやり方【見本あり!】

自筆証書遺言を発見した相続人は、家庭裁判所に遺言書の検認申立てをしなければなりません。

検認とは、一種の証書保全手続きです。

相続人の全員が立ち合い、遺言書を開封し、現時点での遺言書の状態を証拠として保全する手続きとなります。

なお、作成した自筆証書遺言は、遺言者自身で保管することとなります。

紛失してしまうことがないよう、慎重に保管する必要があります。

自筆証書遺言の保管場所はどこが良いのか、こちらでまとめています。

遺言書の保管場所はどこが良い?銀行の貸金庫は要注意?

公正証書遺言

公正証書遺言とは、公証役場公証人に作成してもらう遺言となります。

公証役場には、遺言者本人と、証人2人を連れて行きます。

自筆証書遺言は自分で作成しますが、こちらは法律の専門家である公証人に作成してもらうのです。

そのため、公証人に支払う費用はかかりますが、一番安全で確実な遺言が出来上がります。

自筆証書遺言との違いは、遺言が形式上の不備により無効となる心配がないということです。

さらに、公正証書遺言の原本は、公証役場で保管されますので、紛失の恐れや、第三者による偽造、変造、隠匿の心配がありません。

遺言者の死後も、全国どこの公証役場からでも遺言書の検索が行えます。遺言書の保管場所が悪く、見つからないという心配もありません。

公正証書遺言の作成の流れ、必要書類、手数料等について詳細はこちらをご覧ください。

公正証書遺言の作り方、手数料(費用)と計算方法、必要書類と遺言撤回

秘密証書遺言

秘密証書遺言のメリットは、遺言書の中身を誰にも知られないということです。

自筆証書遺言は家族に発見されて見られる可能性は残りますし、公正証書遺言も作成の都合上、公証人や証人に内容を知られます。

秘密証書遺言が出来上がるまでの流れとしては、遺言者が自宅で作成した後、封筒に入れ封印をし、証人2人とともに公証役場へ持っていき、公証人の前に封筒を提示します。

最後に公証人、証人、遺言者が封筒に署名・押印して完成です。

遺言書の原本は遺言者自身で保管します。

上記の流れからわかるように、証人も公証人も、封筒の中身までは確認できません。つまり、完全に秘密にすることができるのです。

公証人が絡んでくるので、費用はかかります。

ただし、自筆証書遺言と同様に、遺言書が形式上の不備により無効となる危険はあります。

秘密証書遺言の作り方、手数料等の詳細はこちらをご覧ください。

秘密証書遺言の書き方&作成手数料とメリット・デメリット

遺言の撤回

遺言書の作成後、時が過ぎ、気持ちが変わったり、財産状況の変化などから、遺言書を作り直したくなる場合もあるでしょう。

基本的に、遺言は自由に撤回することができます。

民法に次のように規定されています。

(遺言の撤回)
第1022条 遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。

前に作成した遺言の撤回は、新しい遺言を作り直すことで行います。

遺言書とは、作成された日付が新しいものが優先されることになるためです。

遺言書の撤回方法、公正証書遺言の撤回における注意事項については、こちらでまとめています。

公正証書遺言の撤回は要注意!撤回の撤回はできない?

相続人の廃除と欠格

相続において、廃除欠格は、いずれも相続人から相続権をはく奪する制度です。

被相続人から廃除された推定相続人や、欠格事由に該当した相続人は、被相続人を相続することができません。

廃除とは、被相続人が生前に、または遺言によって、推定相続人に対して行う行為です。

推定相続人とは、ある人が亡くなったと仮定した場合に、その者の相続人となる予定の人のことをいいます。

廃除は家庭裁判所への申立てにより行いますが、どんな場合にも行えるわけではありません。

具体的には、推定相続人が被相続人に対して、虐待をしたり、重大な侮辱をしたりした場合に認められるものです。

これに対して相続欠格とは、特定の行為をしてしまうと、当然に相続権を失う制度です。被相続人の意思は関係ありません。

具体的には、故意に被相続人を殺害した場合や、遺言書の偽造、変造、隠匿などの行為をした場合に欠格となります。

推定相続人の廃除、相続欠格の要件について詳細はこちらでまとめています。

⇒ 相続欠格と廃除の違いは?相続欠格事由と廃除の要件、手続きを解説!

共同遺言の禁止

共同遺言とは、複数の者が、同一の証書(遺言書)に共同で遺言を書き、署名・捺印をすることです。

この点に関して、民法975条が定めています。

(共同遺言の禁止)
第975条 遺言は、二人以上の者が同一の証書ですることができない。

たとえ夫婦であっても、共同遺言をすることはできません。

共同遺言となっている場合には、その遺言は無効となりますのでご注意ください。

まとめ

お一人で遺言書を作成される場合に知っておくべきこと、注意することについてご説明しました。

さらに詳しい内容については、それぞれ説明ページへのリンクを貼ってありますので、よろしければクリックしてご覧ください。

せっかく時間と労力をかけて作成した遺言書が無効となってしまうことがないようにしたいですね。