一度は有効に成立した婚姻であっても、ある事情により「婚姻の取消し」が行える場合があります。

婚姻適齢、重婚、再婚禁止期間、近親者間の婚姻、直系姻族間の婚姻、養親子間の婚姻などの婚姻が該当し、これらを婚姻障害といいます。

さらに、詐欺強迫により成立した婚姻も取り消すことが可能です。

婚姻を取り消すことができるパターンについて、具体的にご説明していきます。

詐欺・強迫による婚姻

婚姻とは、男女それぞれに婚姻する意思の合致があって、成立します。

しかし、第三者または婚姻の相手からの詐欺や強迫によって、やむをえず婚姻してしまったという場合が考えられます。

このような詐欺、強迫による婚姻は、取り消すことができる婚姻となります。

民法に次のとおり規定されています。

(詐欺又は強迫による婚姻の取消し)
第七百四十七条 詐欺又は強迫によって婚姻をした者は、その婚姻の取消しを家庭裁判所に請求することができる。
2 前項の規定による取消権は、当事者が、詐欺を発見し、若しくは強迫を免れた後三箇月を経過し、又は追認をしたときは、消滅する。

婚姻の取り消しは、家庭裁判所に請求することで行います。

また、詐欺、強迫を理由に婚姻を取り消す場合には、期間制限があるので注意しましょう。

婚姻の当事者が、詐欺の事実に気づいた、または強迫を免れたのち、3ヶ月間が経過した場合には、婚姻を取り消すことができなくなります。

または、3ヶ月間経過せずとも、当事者が当該婚姻を、「詐欺・強迫」の事実を知った上で、追認、つまり受け入れて承諾をした場合には、やはり取り消すことができなくなります。

婚姻適齢でない

婚姻適齢とは、男女それぞれについて、婚姻できる年齢を定めたものです。

男子は18歳、女子は16歳に達しなければ、婚姻できません。これは皆さまよくご存知のことと思います。

民法に次のとおり規定されています。

(婚姻適齢)
第七百三十一条 男は、十八歳に、女は、十六歳にならなければ、婚姻をすることができない。

それでは、もし18歳の男子と、15歳の女子による婚姻届が誤って受理されてしまったら、どうなるでしょうか。

実は、男女に婚姻する意思の合致があれば、この婚姻は有効に成立してしまうのです。

婚姻が成立する要件について詳細は、こちらにまとめています。

婚姻が無効となるのはどんな場合?「婚姻意思の有無」が重要

とはいえ、民法に規定しているとおり、婚姻適齢にない婚姻は認められません。

そのため、婚姻適齢にない婚姻は、あとから取り消すことができる婚姻となります。

重婚

重婚という言葉もご存知の方は多いのではないでしょうか。

既に婚姻している人が、さらに別の人と婚姻することを重婚といいますね。

重婚は禁止されています。民法に次のように規定されています。

(重婚の禁止)
第七百三十二条 配偶者のある者は、重ねて婚姻をすることができない。

では、どんな場合に重婚が生じてしまうのでしょうか。

たとえば、次のような場合を考えてみましょう。

婚姻関係にあった太郎と花子が離婚した。

その後、花子は三郎と再婚した。

しかし、太郎と花子の離婚は詐欺・強迫によるものであり、後に取り消された。

既にご説明しましたとおり、詐欺や強迫による婚姻は取り消すことができます。離婚の場合も同様です。

すると、太郎と花子の離婚は取り消されたわけですから、そもそも離婚などなかったことになります。太郎と花子は今も夫婦なのです。

ということは、太郎と花子の婚姻関係と、花子と三郎の婚姻関係が同時に生じてしまっているわけです。つまり重婚ですね。

よって、太郎と花子の婚姻中に行われた、花子と三郎の婚姻は重婚となり、取り消すことができる婚姻となります。

再婚禁止期間

女性の場合には、前婚の解消(離婚、死別)または取消しの日から100日を経過した後でなければ、再婚することができません。

この100日のことを再婚禁止期間といいます。

民法に次のように規定されています。

(再婚禁止期間)
第七百三十三条 女は、前婚の解消又は取消しの日から起算して百日を経過した後でなければ、再婚をすることができない。
2 前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。
一 女が前婚の解消又は取消しの時に懐胎していなかった場合
二 女が前婚の解消又は取消しの後に出産した場合

これは、女性が子を産んだ場合、婚姻解消前の夫の子なのか、再婚した夫の子なのか、法律的に見て判断できなくなるのを回避するためとされています。

再婚禁止期間を無視した婚姻届が誤って受理されても、取り消すことができる婚姻となります。

近親者間の婚姻

近親者の間で婚姻することはできません。

皆様も耳にしたことがあるのではないでしょうか。「血が濃くなる」といいますよね。

具体的には、直系血族と3親等内の傍系血族は婚姻をすることができません。

血族、姻族、親等の数え方などの詳細は、こちらでまとめています。

今さら人に聞けない!親族の範囲と親等の数え方を丁寧に!

民法に次のとおり規定されています。

(近親者間の婚姻の禁止)
第七百三十四条 直系血族又は三親等内の傍系血族の間では、婚姻をすることができない。ただし、養子と養方の傍系血族との間では、この限りでない。

なお、特別養子縁組により、実父母またはその血族との親族関係が終了した後であっても、婚姻はできません。

特別養子縁組で親族関係は消滅しても、血縁関係は消滅するわけではないためですね。

このような婚姻届が誤って受理された場合でも、取り消すことができる婚姻となります。

直系姻族間の婚姻

今度は血族ではなく、姻族の場合です。

たとえば、配偶者である妻(夫)の母(父)は、あなたにとって姻族となります。血縁関係にないので、血族ではありません。

つまり、あなたにとって義理の親ですね。

ここで問題となるのが、配偶者と離婚した後に、元配偶者の親(元義理の親)と婚姻できるのか、ということです。

結論は、婚姻できません

今度は血が濃くなるという理由ではなくて、道徳上の問題です。一度でも義理の親子関係を結んだわけですから、たとえその関係が消滅したあとでも、婚姻は許されないのです。

民法に次のとおり規定されています。

(直系姻族間の婚姻の禁止)
第七百三十五条 直系姻族の間では、婚姻をすることができない。

なお、離婚などで姻族関係が消滅したあとであっても、同様に婚姻はできません。

このような婚姻届が誤って受理された場合、後から取り消すことができます。

養親子等の婚姻

例で考えてみましょう。

太郎が花子を養子として迎えたとします。養子縁組ですね。

数年たち、二人は離縁しました。これにより、二人は他人に戻ります。

太郎と花子は離縁後に婚姻できるでしょうか。

結論は、婚姻できません。

これも、道徳上の理由から、婚姻が許されないのです。

一度でも、養親、養子という法律上の親子関係を結んだわけですから、たとえ離縁したとしても、婚姻をすることはできないのです。

民法に次のとおり規定されています。

(養親子等の間の婚姻の禁止)
第七百三十六条 養子若しくはその配偶者又は養子の直系卑属若しくはその配偶者と養親又はその直系尊属との間では、第七百二十九条の規定により親族関係が終了した後でも、婚姻をすることができない。

条文の後半は、たとえ離縁した後であっても、婚姻することができないと言っています。

このような婚姻届が誤って受理されたとしても、あとで取り消すことができめます。

まとめ

婚姻障害となり、婚姻が成立した後でも取り消すことができる場合をご紹介してきました。

基本的には、このような婚姻障害となっている婚姻届は受理してはいけない決まりですが、誤って受理されてしまう場合もあります。

そうした場合に、取り消すことができるわけです。