遺産分割をする場合、相続人の中に未成年の子がいるとどうなるでしょうか。

結論として、未成年者は遺産分割協議に参加できません。そして利益相反となるため、共同相続人である親権者は未成年者を代理することもできません。

このようなケースでは、家庭裁判所に未成年者のために特別代理人を選任してもらう必要があります。

ちょっと難しいですが、言葉の意味を含め、以降でわかりやすく解説していきます。

記事のテーマ
  • 遺産分割協議で特別代理人の選任が必要な2つのケース
  • 利益相反とは何か
  • 胎児と相続について

遺産分割協議と特別代理人が必要なケース【未成年・認知症】

遺産分割協議では、相続人の状況に応じて、本人が参加することができず、代わりに特別代理人を選任して参加してもらう必要が生じます。

それでは、どのようなケースで特別代理人の選任が必要なのかご説明していきます。具体的には次のとおりです。

  • 未成年の子とその親権者が共同で相続人となる場合
  • 認知症などで成年被後見人である者とその後見人が共同で相続人となる場合

上記について、具体的にご説明していきます。

特別代理人を選任1:未成年の子と親権者が相続人となり遺産分割協議をする

次のようなケースで相続人が遺産分割協議を行う場合を考えてみます。

  • 父が亡くなり相続が開始した
  • 相続人は母と未成年の子である

被相続人が若くして亡くなったようなケースでは、その相続人に未成年者がいることもありえます。そして、遺産分割協議では注意すべきことがあります。

未成年者は自ら遺産分割協議に参加することができません。

ですので通常は未成年の子の法定代理人である親権者が代理で参加することになります。

ですが、その法定代理人も相続人である場合(上記のケース)では、両者の間で利益相反となるため、親権者は未成年者を代理することができません。

結論として、この場合には未成年者のために特別代理人を選任する必要があります。特別代理人選任の申立を家庭裁判所に対して行うのです。

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利益相反については、後程くわしく解説していきます。

特別代理人を選任2:認知症などの成年被後見人と後見人が相続人となり遺産分割協議をする

次のようなケースで相続人が遺産分割協議を行う場合を考えてみます。

  • 父が亡くなり相続が開始した
  • 相続人は母と長男である
  • 母は認知症であり、長男が後見人となっている

このケースは、母が認知症となり、法律行為を単独で有効に行うことが難しくなったため、後見開始の審判を家庭裁判所にしてもらった場合です。

後見開始の審判によって、母は成年被後見人であり、長男が後見人となっています。つまり母にとって長男は法定代理人です。

この場合、遺産分割を行う上で、後見人である長男は母を代理することができません。両者の間で利益相反となるからです。

そのため、母のために特別代理人を選任する必要があります。父の遺産分割協議では、長男と母の特別代理人が協議することになります。

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ただし、被後見人のために後見監督人が選任されている場合には、後見監督人が被後見人を代表するので、特別代理人の選任は不要です。(民法860条但し書き)

遺産分割協議における利益相反とは?

利益相反について、裁判所のHPで次のように説明されています。

利益相反行為とは,例えば,父が死亡した場合に,共同相続人である母と未成年の子が行う遺産分割協議など,未成年者とその法定代理人の間で利害関係が衝突する行為のことです。

(出典:裁判所HP)

つまりは、親と子で遺産分割協議をするにあたり、法定代理人である親が得すれば、子(未成年者)が損をするような行為のことを、利益相反行為というのです。

親が財産を多く相続することとなれば、それだけ子の相続する財産は少なくなります。このため、お互いの利害が衝突することになるのです。

利益相反行為について、民法に規定されています。

(利益相反行為)
第八百二十六条 親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。
2 親権を行う者が数人の子に対して親権を行う場合において、その一人と他の子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その一方のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。

(利益相反行為)
第八百六十条 第八百二十六条の規定は、後見人について準用する。ただし、後見監督人がある場合は、この限りでない。

(出典:e-gov-民法)

上記の第八百六十条にて、利益相反について規定する第八百二十六条を後見人について準用しています。つまり、親子の利益相反に関する取り決めを、後見人と被後見人についても適用するという意味です。

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このとおり遺産分割協議では親子の利益相反があるため、未成年の子を親権者である母が代理することはできないわけです。

【具体例】遺産分割協議で親子の利益相反となるケース

遺産分割協議で親子の利益相反となる具体例を2つ紹介します。

ケース1:親権者と未成年の子が共同相続人である

次のケースを考えてみます。

  • 被相続人の相続が開始した
  • 相続人は配偶者と未成年の子である
  • 配偶者と未成年の子で遺産分割協議をすることになった

上のケースでは、相続人である配偶者と未成年の子とで遺産分割を行わなければなりません。ですが、未成年者は遺産分割協議に参加できません。

利益相反となるため、共同相続人である母親も子を代理することができません。上記のケースで母が相続する遺産の取り分が多くなると、必然的に子の取り分が少なくなりますね。

ということで、未成年の子のために特別代理人の選任が必要となります。遺産分割協議は配偶者と特別代理人で行うことになります。

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ちなみに、上記のケースでは子が1人ですが、子が2人いれば2人の特別代理人の選任が必要となります。

ケース2:未成年の子が複数いて、親権者が共通である

次のケースを考えてみます。

  • 被相続人の相続が開始した
  • 被相続人には内縁関係の妻と、その間に子が2人いる
  • 相続人は認知された2人の子(未成年)である
  • 相続人(2人の子)で遺産分割協議を行うこととなった

上記は、内縁関係にあった2人の間に子が生まれ、内縁の夫が亡くなり相続が開始した場合です。内縁関係にある者はお互いを相続することができませんが、認知された子は相続人となります。

つまり、相続人である2人の子で遺産分割協議を行うパターンです。繰り返しになりますが、未成年者は遺産分割協議に参加できません。彼らの代理人が必要です。

ですが、今回は母親(内縁の妻)が共同相続人ではないので、子との間で利益相反とはならず、子のどちらか一方を代理することが可能です。(子の2人を代理することはできません。)

したがって、一方の子については母親が法定代理人として遺産分割協議に参加し、他方の子については特別代理人の選任が必要です。

遺産分割協議で特別代理人の選任をする【家庭裁判所へ申立】

特別代理人の選任申立てについて以下に示します。(家庭裁判所HPを参照)

申立人
  • 親権者
  • 利害関係人
申立先 子の住所地の家庭裁判所
管轄裁判所を調べたい方はこちら
必要な費用
  • 収入印紙800円分(子1人につき)
  • 連絡用の郵便切手(申立てされる家庭裁判所へ確認してください。)
必要な書類

(1) 申立書

(2) 添付書類

  • 未成年者の戸籍謄本(全部事項証明書)
  • 親権者又は未成年後見人の戸籍謄本(全部事項証明書)
  • 特別代理人候補者の住民票又は戸籍附票
  • 利益相反に関する資料(遺産分割協議書案,契約書案・抵当権を設定する不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)等)
  • (利害関係人からの申立ての場合)利害関係を証する資料(戸籍謄本(全部事項証明書)等)

※ 同じ書類は1通で足ります。
※ もし,申立前に入手が不可能な戸籍等がある場合は,その戸籍等は,申立後に追加提出することでも差し支えありません。
※ 審理のために必要な場合は,追加書類の提出をお願いすることがあります。

申立書の記載例については、特別代理人選任(家庭裁判所HP)にてご確認いただけます。

【参考】胎児にも相続権はあります

参考までに、胎児と相続についてもお話しておきます。

胎児と相続について考えてみましょう。そもそも胎児には相続権があるのでしょうか。民法に次のように規定されています。

(権利能力)
第3条1項 私権の享有は、出生に始まる。

(相続に関する胎児の権利能力)
第886条 胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。
2 前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは、適用しない

(出典:e-gov-民法)

民法では、権利能力(相続権など)は生まれたときから有するとしています。民法886条では、胎児は相続については、既に生まれたものとみなす、と規定されています。

つまり、胎児であっても相続ができる、ということです。

ただし、それは胎児が生きた状態で外へ出てきた場合です。もしも死産であった場合には相続人とはなりませんので、注意が必要です。

遺産分割協議に胎児は参加できるか?

胎児が相続人になれるというのであれば、遺産分割協議に参加する資格がありそうな気がします。

ですが、上でご説明したとおり、それは生きて生まれてきた場合の話です。実際に生まれてくるまで、誰にもこのことはわかりませんね。

この件につき判例は諸説ありますが、結論としては、胎児は遺産分割協議が行えません。

死産だった場合、胎児は相続人にはなれないのです。遺産分割協議を行った後に死産となってしまった場合、遺産分割協議をやり直さなければならなくなります。

胎児がいる場合には、出産の予定日がだいたいわかっているはずですから、特別問題がなければ、遺産分割協議は生まれるまで待つ、というのが好ましいでしょう。

胎児が生まれてきた後は、親権者も相続人である場合には、胎児のために特別代理人の選任が必要となります。

まとめ

相続人の中に未成年者や胎児がいる場合の遺産分割協議について解説してきました。親権者が共同相続人である場合には、親子で利益相反となるので、特別代理人の選任が必要となります。