こんにちは。行政書士の大石です。

特別養子縁組とは、養子と実親との親子関係を完全に消滅させる縁組です。

ここでは、特別養子縁組が成立する要件、家庭裁判所での手続き、縁組後の戸籍の表示、縁組と相続の関係、離縁についてご説明します。

もっと知りたい方へ

養子縁組の手続き(届出)、養子縁組の解消(離縁)、養子縁組と戸籍の表示(記載例)、養親の相続など、養子縁組に関する多くを以下の記事でまとめています。

養子縁組とは?縁組や解消の手続き、戸籍の記載、相続との関係を解説!

特別養子縁組ってどんな縁組?

特別養子縁組とは、「養子となる子」とその実親との親子関係を、完全に消滅させる縁組です。

つまり、完全に親子の縁を切ってしまうのです。

特別養子となった子は、養親の実の子として育てられることになります。

この点で、一般的な普通養子縁組とは異なります。

普通養子縁組の場合、養子と実親の親子関係は消滅することなく、継続します。

 

それでは、いったいなぜ、このような特別な制度が存在するのでしょうか。

これは、子の福祉を図るためというのが理由です。

 

たとえば実親が、精神的、身体的、経済的な事情により、子の養育ができない場合があります。

さらには、虐待や遺棄など、子の利益が著しく害されるような場合もあります。

これらの場合に、子の利益を守るために、特別養子縁組という制度があるのです。

実親との関係を断絶してしまうだけに、縁組が認められる要件は細かく決められています。

特別養子縁組が成立する要件

特別養子縁組は、家庭裁判所の審判によって行われます。

これは、子にとっては実親との親子関係を完全に消滅させるという、重大な結果をもたらすためです。

特別養子縁組が成立するためには、以下の要件をすべて満たす必要があります。

  • 養親は夫婦である
  • 養親の年齢は25歳以上である
  • 養子となる子が6歳未満である
  • 実親の同意がある
  • 養親による6ヶ月以上の監護
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上記の要件を満たし、さらに「実親による、幼児の監護が著しく困難または不適当であることその他特別の事情があり、なおかつ、子の利益のために特に必要があると認めるとき」に該当する場合、家庭裁判所の審判によって縁組が決定します。

民法に次のとおり規定されています。

(子の利益のための特別の必要性)
第八百十七条の七 特別養子縁組は、父母による養子となる者の監護が著しく困難又は不適当であることその他特別の事情がある場合において、子の利益のため特に必要があると認めるときに、これを成立させるものとする。

なお、特別養子縁組の申立人は、養親となる者です。

それでは、上記の要件について順番に見ていきましょう。(厚生労働省「特別養子縁組制度について」参照)

養親は夫婦である

特別養子縁組とは、両親のもとで、実子として養子を育てる制度です。

そのため、特別養子縁組をする場合には、養親は必ず夫婦であり、夫婦そろって縁組をしなければなりません(共同縁組)。

(養親の夫婦共同縁組)
第八百十七条の三 養親となる者は、配偶者のある者でなければならない。
2 夫婦の一方は、他の一方が養親とならないときは、養親となることができない。ただし、夫婦の一方が他の一方の嫡出である子(特別養子縁組以外の縁組による養子を除く。)の養親となる場合は、この限りでない。

養親の年齢は25歳以上である

養親の年齢は、25歳以上でなければなりません。

ただし、養親となる夫婦の一方が25歳以上である場合、もう一方は20歳以上であれば養親となることができます。

つまり、25歳と20歳の夫婦であれば、特別養子縁組の養親となることは可能です。

(養親となる者の年齢)
第八百十七条の四 二十五歳に達しない者は、養親となることができない。ただし、養親となる夫婦の一方が二十五歳に達していない場合においても、その者が二十歳に達しているときは、この限りでない。

養子となる子が6歳未満である

特別養子縁組をする場合の子は、原則6歳未満とされています。

縁組の審判申立てを行う時に、6歳未満である必要があります。

この年齢を超えてくると、さすがに実子として育てるのは無理があると考えられているようです。

ただし、子が6歳に達する前から養親となる方に監護されていた場合には、子が8歳に達する前までは、審判を請求することができます。

(養子となる者の年齢)
第八百十七条の五 第八百十七条の二に規定する請求の時に六歳に達している者は、養子となることができない。ただし、その者が八歳未満であって六歳に達する前から引き続き養親となる者に監護されている場合は、この限りでない。

実親の同意がある

特別養子縁組を行うには、養子となる子の実親(父母)の同意がなければなりません。

ただし、実親がその意思を表示できない場合や、実親による虐待、悪意の遺棄その他養子となる子の利益を著しく害する事由がある場合は、実親の同意が不要となることがあります。

(父母の同意)
第八百十七条の六 特別養子縁組の成立には、養子となる者の父母の同意がなければならない。ただし、父母がその意思を表示することができない場合又は父母による虐待、悪意の遺棄その他養子となる者の利益を著しく害する事由がある場合は、この限りでない。

養親による6ヶ月以上の監護

特別養子縁組が成立するためには、養親となる方が養子となる子を6ヶ月以上監護している実績が必要です。

そのため、縁組成立前に養子となる子と一緒に暮らし、その監護状況等を考慮して、家庭裁判所が特別養子縁組の成立を決定することになります。

(監護の状況)
第八百十七条の八 特別養子縁組を成立させるには、養親となる者が養子となる者を六箇月以上の期間監護した状況を考慮しなければならない。
2 前項の期間は、第八百十七条の二に規定する請求の時から起算する。ただし、その請求前の監護の状況が明らかであるときは、この限りでない。

特別養子縁組の申立て(家庭裁判所手続き)

家庭裁判所での特別養子縁組の申立て手続きについて、以下に示します。

  • 申立人

養親となる者

  • 申立先

養親となる者の住所地の家庭裁判所
管轄裁判所を調べたい方はこちら

  • 申立て費用

・収入印紙800円分(養子となる者1人につき)
・連絡用の郵便切手(申立てされる家庭裁判所へ確認してください。)

  • 必要書類

・申立書
・養親となる者の戸籍謄本(全部事項証明書)
・養子となる者の戸籍謄本(全部事項証明書)
・養子となる者の実父母の戸籍謄本(全部事項証明書)

申立書のダウンロードと、記載例は裁判所HPでご確認いただけます。

特別養子縁組と戸籍の表示

家庭裁判所での審判によって、特別養子縁組が成立した後は、戸籍の届出を行います。

⇒ 特別養子縁組成立による戸籍の届出、手続き、届書の書き方(記載例)を解説

養子となった子は実親の戸籍から除籍され、最終的に養親の戸籍に入ることになります。

養親の戸籍上では、養子は養親の実子と同様に扱われるため、一見して特別養子であることがわからない配慮がされています。

ただし、養子となった子の身分事項欄には、特別養子縁組の規定が置かれている民法の条文番号が記載されます。

特別養子縁組した後の戸籍の表示の詳細はコチラから。

⇒ 特別養子縁組をすると戸籍にどう表記される?記載例を解説!

特別養子縁組と相続

特別養子縁組は、養子と実親との親子関係を完全に消滅させる縁組です。

そのため、養子と実親の間では、お互いがお互いを相続することはできません。扶養義務も消滅します。

そして、養子は養親を相続することができます。

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普通養子縁組では、養子と実親との親子関係が継続するので、養子は実親を相続することができますし、養親を相続することもできます。

特別養子縁組の「離縁」とは?

特別養子縁組の離縁は原則としてできません。

ただし、以下の要件をすべて満たす場合、例外として家庭裁判所の審判によって、離縁をすることができます。

  • 養親による虐待、悪意の遺棄その他養子の利益を著しく害する事由がある
  • 実父母が相当の監護をすることができる

民法に次のとおり規定されています。

(特別養子縁組の離縁)
第八百十七条の十 次の各号のいずれにも該当する場合において、養子の利益のため特に必要があると認めるときは、家庭裁判所は、養子、実父母又は検察官の請求により、特別養子縁組の当事者を離縁させることができる。
一 養親による虐待、悪意の遺棄その他養子の利益を著しく害する事由があること。
二 実父母が相当の監護をすることができること。
2 離縁は、前項の規定による場合のほか、これをすることができない。

条文のとおり、離縁の申立てができるのは、「養子」「実父母」「検察官」のみです。

つまり、養親からの申立てはできません。

そして、実父母が相当の監護ができる状態でなければなりません。

しかし、もともと実父母が子を監護することができないために、特別養子縁組がなされたわけなので、この要件を満たすことはなかなか難しいでしょう。

特別養子縁組の離縁が認められた場合には、離縁した日から、実父母と子の親族関係が復活します。

(離縁による実方との親族関係の回復)
第八百十七条の十一 養子と実父母及びその血族との間においては、離縁の日から、特別養子縁組によって終了した親族関係と同一の親族関係を生ずる。

まとめ

特別養子縁組が成立する要件と、例外的に離縁ができる要件をご説明しました。

特別養子縁組は、その影響力の大きさゆえ、かなり細かい要件が設定されています。

特別養子縁組を考えていらっしゃる場合には、十分に理解しておきましょう。