特別養子の親『特別養子縁組を解消したいのですが、これは可能でしょうか。また特別養子縁組を解消した場合、私たち夫婦や養子の戸籍にはどのように表示されますか?』 |
このような疑問にお答えします。
この記事では以下の内容を解説します。
- 特別養子縁組の解消(離縁)は可能なのか
- 特別養子縁組の離縁(解消)が成立した場合の養親戸籍・養子戸籍の表示
特別養子縁組の離縁(解消)は可能か?【結論:原則できません】
特別養子縁組とは、実父母による子の監護が著しく困難または不適当であること、その他特別の事情がある場合において、子の利益のため特に必要があると認めるときに、家庭裁判所の審判によって行われます。
さらに、特別養子縁組が成立するためには厳しい条件を満たしている必要があり、簡単に認められるものではありません。
そのため、原則として、特別養子縁組の離縁はすることができません。
ただし、養親による虐待などが理由で、養子の利益を著しく害する場合、その他の要件を満たしていれば、家庭裁判所の審判によって離縁をすることができます。(以下、民法817条の10)
(特別養子縁組の離縁)
第八百十七条の十 次の各号のいずれにも該当する場合において、養子の利益のため特に必要があると認めるときは、家庭裁判所は、養子、実父母又は検察官の請求により、特別養子縁組の当事者を離縁させることができる。
一 養親による虐待、悪意の遺棄その他養子の利益を著しく害する事由があること。
二 実父母が相当の監護をすることができること。2 離縁は、前項の規定による場合のほか、これをすることができない。
(出典:e-gov-民法)
参考:特別養子縁組の効果と、離縁(解消)の要件
特別養子縁組が成立すると、養子と実親との親族関係が消滅します。養子は養親の戸籍に入り、氏(苗字)も養親の氏を名乗ることになります。
そして特別養子縁組が離縁(解消)されると、一度消滅した実親やその血族との親族関係が再び生じます。さらに、養子は縁組前の戸籍に戻り、氏も縁組前の氏に戻ります。
特別養子縁組の離縁(解消)と戸籍の表示【記載例を解説】
特別養子縁組を解消(離縁)した場合の、戸籍の表示について解説していきます。
この記事では、以下の具体例(ケース)について考えます。
【ケース】
- 特別養子離縁の審判が家庭裁判所によって成立した
- 特別養子離縁届が特別養子の本籍地の市区町村長にされた
【養父母の情報】
本籍地:東京都千代田区平河町〇丁目〇番地
養父氏名:山田太郎
養母氏名:山田花子
養子氏名:山田雄介(平成25年10月9日生)
【実父母の情報】
本籍地:静岡県浜松市中区〇〇町××番地××
父氏名:鈴木大介
母氏名:鈴木京子
【特別養子離縁の裁判確定日】
平成30年9月8日
【戸籍の届出日】
平成30年9月14日
【離縁前の情報】
- 特別養子の山田雄介は特別養子縁組により、養親・山田太郎の戸籍に入籍していた
(縁組前は実親・鈴木大介の戸籍に在籍していた) - 特別養子の山田雄介は特別養子縁組により、氏が鈴木から山田に変更されていた
特別養子縁組を解消(離縁)する:養親戸籍の表示
特別養子縁組の解消(離縁)の審判が確定した後の、養親・山田太郎を筆頭者とする戸籍を以下に示します。
赤枠で囲った部分をご覧ください。次のように記載されています。
平成参拾年九月八日特別養子離縁の裁判確定同月拾四日鈴木京子届出静岡県浜松市中区〇〇町××番地××鈴木大介戸籍に入籍につき除籍
このままだとよくわかりませんが、つまり次のように書かれています。
- 平成30年9月8日、特別養子離縁の裁判が確定した
- 同じ月の14日、鈴木京子(実母)が戸籍の届出を行った
- 鈴木大介(実父)の戸籍(本籍地:静岡県浜松市中区〇〇町××番地××)に入籍したため除籍
要するに、特別養子離縁の審判がなされ、それにより養子・雄介の実母が役所に特別養子離縁届を行いました。
その結果、養子・雄介は実父を筆頭者とする戸籍に入籍したため、それまで在籍していた養親・山田太郎の戸籍から除籍されたということです。
養子・雄介が除籍された印として、氏名の上に×印が書かれています。
以上が、特別養子離縁が確定した後の、養親の戸籍です。
参考 【ゼロから易しく!】除籍とは?除籍謄本や除籍抄本の違いは?全部事項証明書の記載例
特別養子縁組の解消(離縁)の審判が確定した後の、養親・山田太郎の戸籍について、全部事項証明書の記載例を以下に示します。
基本的に内容は上でご紹介したものと同じです。
特別養子離縁に関する事項の表示のされ方について、上と比較してみてください。
赤枠の中に注目してみてください。
同じように、養子・雄介が除籍されているので、[除籍]という印が記載されています。
そして、特別養子離縁の裁判確定日、届出日、届出人、入籍戸籍が記載されています。
このように、表示されている内容は上で示した戸籍謄本と変わりません。
全部事項証明書とは、平成6年の戸籍法改正にあたり、それまで紙媒体で管理されていた戸籍が、コンピュータ管理されるようになった戸籍のことです。
今はほとんどの市区町村役場で、戸籍謄本の交付請求をすると、全部事項証明書が交付されていますので、見覚えのある方は多いのではないでしょうか。
戸籍謄本・抄本や全部・個人事項証明書について
戸籍謄本や戸籍抄本、全部事項証明書や個人事項証明書の違いについて、詳しくは以下の記事をご覧ください。
おすすめ【見本あり】戸籍謄本と戸籍抄本の違いは?記載事項の見方も解説! おすすめ戸籍の全部事項証明書とは?見方・戸籍謄本との違い|行政書士が解説
特別養子縁組を解消(離縁)する:養子戸籍の表示
特別養子縁組の解消(離縁)の審判が確定した後の、養子の縁組前の戸籍について見ていきましょう。つまりこの戸籍は特別養子縁組がされる前まで子・雄介が在籍していた、実父を筆頭者とする戸籍となります。
赤枠の中にご注目ください。
以下のように記載されています。
平成参拾年九月八日特別養子離縁の裁判確定同月拾四日母届出同月拾九日東京都千代田区長から送付同区平河町〇丁目〇番地山田太郎戸籍から入籍
つまり、次のような意味となります。
- 平成30年9月8日、特別養子離縁の裁判が確定
- 同じ月の14日、実母(鈴木京子)が届出を行った
- 同じ月の19日、東京都千代田区長から送付された
- 養親・山田太郎の戸籍(本籍地:東京都千代田区平河町〇丁目〇番地)から入籍した
要するに、特別養子離縁の裁判が確定したため、実母の鈴木京子が東京都千代田区長に対して戸籍の届出を行いました。
同じ月の19日に、当該届出を受理した千代田区長から浜松市中区長(実親の戸籍を管理する)へと届出事項が送付されました。
その結果、養親・山田太郎の戸籍から、実親の戸籍へと入籍した(戻ってきた)、ということが書かれています。
この戸籍からわかることとして、特別養子縁組の審判確定により、一度は除籍された子・雄介が、離縁によって再び同じ戸籍に戻ってきたことが挙げられますね。
全部事項証明書の記載例
続いて、上の戸籍の全部事項証明書について以下に示します。
赤枠の中にご注目ください。
書かれている内容は、上で示した戸籍謄本と同じです。
【参考】特別養子縁組の要件と家庭裁判所への申立て
特別養子縁組はその影響力の大きさから、縁組が成立する要件が細かく定められています。
特別養子縁組が成立するための要件や、家庭裁判所への申立て手続きについて、以下の記事で詳しくまとめています。
⇒ 【特別養子縁組】制度趣旨、成立の条件、申立て手続き【行政書士が解説】
まとめ
特別養子離縁の審判が確定した際の、養親、実親それぞれの戸籍をご紹介しました。
原則として、特別養子縁組の離縁はできませんが、養子の利益を守るために必要な場合には、家庭裁判所によって離縁の審判が可能となります。
要チェック養子縁組の基礎知識まとめ(届出、戸籍その他)
養子縁組や離縁、届出などに関する基礎知識をまとめたリストです。お好きな記事からご覧ください。