遺言により自己の財産を無償で譲る行為を「遺贈」といいます。

この記事では、遺贈がされていた場合の、遺贈義務者の引き渡し義務、被相続人の財産に含まれない物、権利の遺贈について解説します。

この記事でわかること
  • 遺贈がされた場合の遺贈義務者の引き渡し義務施行日
  • 相続財産に含まれない物、権利の遺贈に対する扱い

遺贈がされた場合の「遺贈義務者」の引き渡し義務

遺贈とは、遺言により財産を無償で譲る行為をいいます。

被相続人が生前に遺言を残しており、遺贈がされていた場合、遺贈義務者は遺贈の受遺者(遺贈を受ける者)に対して、遺言どおりに遺贈の執行をする必要があります。

また、遺贈義務者は、遺贈の目的となる物または権利について、その物または権利を相続開始の時の状態で引き渡す、または移転することを義務とされています。

ただし、遺言者が遺言により、これとは異なる意思を示していた場合には、それに従うことになります。

遺贈義務者の引き渡し義務を規定する民法998条

遺贈義務者の目的物または権利の引き渡しに関する義務を規定する民法条文を以下に引用します。

(遺贈義務者の引渡義務)
第九百九十八条 遺贈義務者は、遺贈の目的である物又は権利を、相続開始の時(その後に当該物又は権利について遺贈の目的として特定した場合にあっては、その特定した時)の状態で引き渡し、又は移転する義務を負う。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

(出典:e-gov-民放)

遺贈義務者の引き渡し義務の施行日

遺贈義務者の引き渡し義務を規定した法律の施行日は、2020年(令和2年)4月1日(附則(平成三〇年七月一三日法律第七二号)第一条三号)とされています。この施行日より後になされた遺贈に関して、当規定が適用されることとなります。

相続財産に含まれない財産の遺贈について

被相続人の相続開始時、被相続人の財産に含まれない物や権利が遺贈の目的とされた場合、この遺贈は原則として無効です

ただし例外として、その権利が相続財産に含まれるかどうか関係なく、これを遺贈の目的としたと認められるような場合には、この遺贈が有効となります。

例えば、「今は私の所有ではないが、後程必ず権利を取得して遺贈する」のようなケースが該当します。

また、このような遺贈が有効となる場合、遺贈義務者はその権利を取得して、受遺者(遺贈を受ける相手)に移転する義務を負うことになります。

以上を規定する民法条文を以下に引用します。

(相続財産に属しない権利の遺贈)
第九百九十六条 遺贈は、その目的である権利が遺言者の死亡の時において相続財産に属しなかったときは、その効力を生じない。ただし、その権利が相続財産に属するかどうかにかかわらず、これを遺贈の目的としたものと認められるときは、この限りでない。

第九百九十七条 相続財産に属しない権利を目的とする遺贈が前条ただし書の規定により有効であるときは、遺贈義務者は、その権利を取得して受遺者に移転する義務を負う。
2 前項の場合において、同項に規定する権利を取得することができないとき、又はこれを取得するについて過分の費用を要するときは、遺贈義務者は、その価額を弁償しなければならない。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

(出典:e-gov-民放)

まとめ

遺贈義務者の目的物または権利の引き渡し義務、被相続人の財産に含まれない物、権利の遺贈について解説してきました。遺言により遺贈がされている場合には注意が必要です。