除籍(じょせき)というものをご存じでしょうか。
たとえば、人は亡くなると現在の戸籍から除籍されます。結婚しても、それまでいた親の戸籍から除籍され、新しい夫婦の戸籍が作られます。
「除籍」という言葉は、こんなふうに使われます。
ここでは、除籍とは何か、何が原因で戸籍は除籍となるのかをご説明します。
また、除籍謄本(とうほん)、除籍抄本(しょうほん)、全部事項証明書、個人事項証明書の違いについてもお話しします。
- 戸籍、除籍、改製原戸籍を要点だけ解説
- 戸籍謄本と戸籍抄本の違い
- 戸籍の「全部事項証明書」と「個人事項証明書」
- 戸籍の「除籍」とは何?除籍謄本、除籍抄本の違い【この記事】
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除籍とは?「除籍する」と「除籍謄本」の2つの意味がある!
除籍と言った場合、次の2通りの意味で使うことがあります。
- 婚姻や死亡によって、現在の戸籍から外れること
→ 「除籍する」(動詞としての使い方)
- 戸籍を編製していた構成員が全員いなくなった戸籍のこと
→ 「除籍謄本」(名詞としての使い方)
婚姻によって、子はそれまで在籍していた父母の戸籍から外れ、夫婦のどちらか一方(一般的には夫)を筆頭者とする新しい戸籍が編製(作成)されます。
それまでいた父母の戸籍から外れることを「除籍する」といいます。婚姻だけでなく、死亡したことでも除籍されます。
これらの「除籍」は、「除籍する」という動詞としての意味で使われていることがわかります。
また、戸籍に入っていた人(構成員)の全員が、婚姻や死亡などの理由で戸籍から外れると、最終的にその戸籍には誰もいないことになりますよね。
このように、生存している人が誰も残っていない戸籍は「除籍謄本」といいます。
ここでの「除籍」は、「除籍謄本」という名詞としての意味で使われています。
単純に「除籍」といった場合、上記の2つのうち、どちらを指しているのか、文脈から判断する必要がありますね。
イメージとしては、戸籍謄本は「今を生きている戸籍」であり、除籍謄本は「役目を終えた戸籍」と言えそうです。
ただ、除籍謄本であってもしっかり保管しておかないと、相続の手続きなどで困ることになるので、役所では除籍簿で保管されています。
戸籍は本籍のある市区町村で管理されています。
戸籍謄本と、除籍謄本を一緒に管理するのではややこしいので、戸籍謄本は戸籍簿で、除籍謄本は除籍簿で管理されることになります。
除籍謄本と除籍抄本の違い、全部(個人)事項証明書とは?
役所で戸籍や除籍の交付を申請するときに、〇〇謄本とか〇〇抄本とか、全部事項証明書とか個人事項証明書とか色々あって、よくわからないんですけど・・・
これらの違いがよくわからないという方は多いのではないでしょうか。
ここでは、除籍にしぼってご説明していきます。
とはいえ、大切なのは「謄本、抄本、全部事項証明書、個人事項証明書」という言葉の意味を知っておくことです。
ただその前に「戸籍」「除籍」という言葉が追加されるだけの話なので。
除籍謄本と除籍抄本の違い
それでは、除籍謄本と除籍抄本の違いからご説明します。
役所の窓口で、「本籍地が〇〇、筆頭者が〇〇の除籍謄本(または除籍抄本)を下さい」と請求する場面を想定します。
除籍謄本 | 除籍簿に記載されている人たち全員の証明 |
除籍抄本 | 除籍簿に記載されている人のうち、特定の人だけの証明 |
そもそもですが、
謄本には、原本の全部を写した文書という意味があります。
抄本には、原本の一部分を写した文書という意味があります。
私たちが役所窓口で交付してもらうことができる戸籍(除籍)謄本(抄本)とは、原本の写しなのです。
原本とは、役所で管理されている戸籍簿や除籍簿のことです。
たとえば、山田太郎を戸籍筆頭者とする、家族全員分の除籍の証明が必要ならば、筆頭者・山田太郎の除籍謄本を請求するのです。
交付された除籍謄本には、山田太郎一家の全員分の情報が記載されています。
今度は、山田太郎の妻・山田花子1人分の除籍の証明が必要であれば、筆頭者・山田太郎の除籍から「山田花子」の除籍抄本を請求するのです。
交付された除籍抄本には、山田花子1人分の情報しか記載されません。
全部事項証明書と個人事項証明書の違い
全部事項証明書と個人事項証明書についてご説明します。これらはそんなに難しくはありません。
平成6年の戸籍法の改正により、それまでの紙媒体で管理されていた戸籍は、コンピュータ管理されるようになりました。
現在はほとんどの市区町村で戸籍のコンピュータ化が完了しています。
そして、コンピュータ化された戸籍(除籍)のことを、全部事項証明書、個人事項証明書といいます。
紙媒体であったときの「謄本」が全部事項証明書に該当します。同じく「抄本」が個人事項証明書に該当します。
コンピュータ化前(紙媒体)の名称 | コンピュータ化後の名称 |
除籍謄本 | 除かれた戸籍の全部事項証明書 |
除籍抄本 | 除かれた戸籍の個人事項証明書 |
戸籍(除籍)のコンピュータ化が完了している市区町村役場の窓口で、「戸籍謄本(除籍謄本)を交付してください」というと、戸籍(除籍)の全部事項証明書を交付してくれます。
同様に、「戸籍抄本(除籍抄本)を交付してください」というと、戸籍(除籍)の個人事項証明書を交付してくれます。
戸籍が除籍となる原因(死亡、転籍、改製)
それでは、どんなことが原因で戸籍が除籍となるのかについて、いくつかご紹介します。
戸籍の全員が死亡、その他の理由により除かれた場合
既にお話したように、人は亡くなると戸籍から除籍されます。
また、婚姻した子は父母の戸籍から除籍されます。
婚姻して夫の戸籍に入っていた妻は、離婚すると夫の戸籍から除籍されます。
上記のような原因がいくつも起こり、最終的にその戸籍から誰もいなくなってしまった場合、その戸籍を存続させておく必要がありませんので、その戸籍は除籍となります。
他市区町村へ転籍した場合(管外転籍)
戸籍は市区町村の単位で管理されています。
したがって、他の市区町村へ本籍地を移動(これを転籍といいます。)した場合には、転籍先の市区町村で新たに戸籍を作成しなければなりません。
そのため、転籍前の戸籍は除籍となります。
ちなみに、上記の他市区町村への転籍を管外転籍といい、同一市区町村内での転籍を管内転籍といいます。
管内転籍の場合は、転籍前の戸籍が除籍となることはありません。
あくまで、他の市区町村へ転籍する管外転籍の場合にのみ、それまでの戸籍が除籍されるのですね。
戸籍の改製があった場合
改製(かいせい)とは、法律の改正や命令などによって、戸籍の様式が変えられることをいいます。
明治になって戸籍制度ができてから、明治19年、明治31年、大正4年、昭和23年、平成6年に戸籍の改製が行われてきました。
戸籍が改製されると、改製前の戸籍は不要となるので除籍となります。
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まとめ
除籍とは何か、戸籍が除籍になる原因についてご紹介させていただきました。
除籍となっても、除籍簿に保管されているので、なくなるわけではありません。
相続手続きを進める中で、最新の戸籍を確認しただけでは、わからないことも多くあります。
そんなときは、除籍も確認しなければならないことも多いでしょう。
戸籍も除籍も、普段関わらないので、なかなか難しい概念ですが、この記事を読まれたことを機会に、少しでも興味を持っていただければ幸いです。