被相続人名義の居住建物に暮らしていた配偶者が、被相続人の相続開始後も引き続き建物を使用できるための方策が配偶者居住権の制度です。
この記事では、配偶者居住権の存続期間について解説していきます。
- 配偶者居住権の存続期間について
- 存続期間を明確に定めなかった場合
- 存続期間の満了と更新の可否について
配偶者居住権の存続期間について
配偶者居住権の存続期間ですが、原則として配偶者の終身の間とされています。つまり、一度配偶者居住権を取得することで、配偶者は一生涯、被相続人名義だった居住建物に暮らすことができるということです。
ただし、被相続人の遺言や、相続人間で行った遺産分割協議にて、存続期間について別段の定めをしたとき、または家庭裁判所の審判で別段の定めをしたときは、それに従うことになります。
参考までに、配偶者居住権は次に示す方法で成立します。
- 被相続人が遺言書で「遺贈」する
- 相続人間での遺産分割協議で取得する
- 家庭裁判所の遺産分割審判で取得する
被相続人の配偶者が、配偶者居住権を取得する方法について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
配偶者居住権の仕組みと成立要件、施行日について
配偶者居住権とは?制度の内容・成立要件・施行日をわかりやすく解説!
家庭裁判所の審判で配偶者居住権を取得できるケース
【遺産分割の請求】配偶者居住権を家庭裁判所の審判で取得できるケース
配偶者居住権の存続期間を「当分の間」「別途定める」とした場合
遺言による遺贈や遺産分割協議にて配偶者居住権を取り決める場合には、その存続期間を定めることができます。定めなければ、原則どおり配偶者の終身の間となります。
ですが、もしも配偶者居住権の存続期間について、「当分の間」や「別途定める」のような曖昧な合意をしてしまった場合、ちょっと困ることになります。
まず、配偶者居住権には登記請求権や第三者対抗力が認められています。そのため、配偶者居住権の設定の登記をする必要があります。
ですが、登記をする際に、存続期間を「当分の間」だとか「別途定める」とすることはできません。
そのため、このような曖昧な合意をしてしまうと、配偶者居住権は登記がなく、第三者対抗力もない不安定な権利となります。
配偶者居住権の存続期間の更新について
配偶者居住権は存続期間の満了によって当然に消滅することとされています。そして、存続期間の更新は予定されていません。
配偶者居住権の消滅後も配偶者が居住建物を使用するための方法としては、建物所有者との間で使用貸借契約または賃貸借契約を結ぶことが考えられます。
配偶者居住権の存続期間を規定する民法1030条
以下に配偶者居住権の存続期間を規定する民法条文を引用します。
(配偶者居住権の存続期間)
第千三十条 配偶者居住権の存続期間は、配偶者の終身の間とする。ただし、遺産の分割の協議若しくは遺言に別段の定めがあるとき、又は家庭裁判所が遺産の分割の審判において別段の定めをしたときは、その定めるところによる。(出典:e-gov-民法)
まとめ
配偶者居住権の存続期間について解説しました。遺言や遺産分割協議で配偶者居住権を取り決める場合には、その存続期間について明確にしておきましょう。