特別養子縁組をすると、子や親の戸籍にはどのように記載されるのでしょうか?第三者からすぐ分かるような記載でしょうか?
そもそも特別養子縁組の制度についても知りたいです。』

 

こんにちは。行政書士の大石です。

何かの手続きで自分の戸籍謄本を取り寄せる機会は多々あります。婚姻届の提出時がその例かと。

では、過去に特別養子縁組がされた方の戸籍には、どのような表記がされているのでしょうか。この点について戸籍の見本を示して解説していきます。

この記事でわかること!
  • 特別養子縁組をすると、戸籍にどのように記載されるか
  • 特別養子縁組はどんな制度か
  • 養子縁組の種類(普通養子縁組・特別養子縁組)

特別養子縁組をすると戸籍にどう表記される?【記載例を解説】

特別養子縁組がされた場合に、養子、実親、養親のそれぞれの戸籍がどのように表記されるのかご説明します。

家庭裁判所の審判により特別養子縁組が認められ、特別養子縁組の届出(戸籍の届出)がされたとします。

この後、戸籍上では次のように変化していきます。

  1. 特別養子は実親の戸籍から除籍される
  2. いったん特別養子を筆頭者とする新戸籍が編製される
  3. 特別養子は新戸籍から除籍され、養親の戸籍へと入る

「編製」というのは、戸籍が新しく作成されることです。

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上から2つ目の新しく編成(作成)される特別養子の戸籍では、本籍地は実親の本籍地と同じであり、氏(苗字)は養親の氏となっています。

上記の3つのステップにより、最終的には養子は養親の戸籍に入ります。

具体例から考える!

それでは、特別養子縁組をした場合の戸籍の表示について、以下の具体例をもとに解説していきます。

<実親と子の情報>

  1. 静岡浜子(本籍:東京都中央区)が、平成18年7月16日に娘(花子)を出産
  2. 同年7月20日に出生の届出

※花子は婚姻外で生まれた子であり、父親から認知をされていないとします。

<特別養子縁組についての事項>

  1. 平成22年5月4日に、花子と鈴木夫妻(夫:一郎、妻:和子、本籍:東京都豊島区との間で特別養子縁組の裁判確定
  2. 同年5月14日に養父母(鈴木夫妻)が特別養子縁組の届出

この具体例によって、養子の花子が実親の戸籍から抜け、養親・鈴木夫妻の戸籍に入るまでを追ってみます。

1-1 実親の戸籍の表記

特別養子縁組の届出がされた後の、実親である静岡浜子の戸籍を見てみましょう。

(画像クリックで拡大表示します)

特別養子縁組と戸籍謄本の表記例

養子である花子の身分事項欄(氏名欄の上)の赤い箇所をご覧ください。

特別養子となる縁組の裁判確定と記載がありますね。このとおり、実親の戸籍を見れば、その表示内容から、特別養子縁組があった旨がよくわかります。

そして、養父母(鈴木夫妻)が特別養子縁組の届出を行った旨の記載があります。

最後に、養子の花子を筆頭者とする新戸籍(氏は鈴木)が編製されたことで、この戸籍(実親の戸籍)から除籍された旨が記載されています。

新しく作られる花子を筆頭者とする戸籍では、本籍地は実親と同じ「東京都中央区〇〇」であり、氏は養親と同じ「鈴木」となります。ちょっとややこしいですが、そういうものだとお考えください。

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上記の戸籍の具体例で、「壱」は「一」、「弐」は「二」、「参」は「三」、「拾」は「十」を表しています。ちょっと難しいですね。現在のように戸籍がコンピュータ管理されるようになるまでは、このように表記されていました。

1-2 【比較】全部事項証明書の場合

平成6年の戸籍法改正で、コンピュータ管理されるようになった戸籍(全部事項証明書といいます)での表記についても見てみましょう。上で示した戸籍とは様式が変わるだけで、内容は同じです。

(画像クリックで拡大表示します)特別養子縁組と戸籍謄本の表記例

上図で、赤く強調した箇所にご注目ください。

特別養子縁組についての記載があり、花子がこの戸籍から除籍されている旨がわかりますね。この後に養子・花子を筆頭者とする新戸籍が編製されるためでしたね。

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今では、ほとんどの役所で戸籍のコンピュータ化が完了しているので、上記の様式をご覧になった方は多いのではないでしょうか。

2-1 特別養子を筆頭者とする新戸籍の編製

では、新しく編製(作成)された養子・花子を筆頭者とする戸籍を見てみましょう。

(画像クリックで拡大表示します)

特別養子縁組と戸籍謄本の表記例

さきほどご説明しましたとおり、新しく編製される養子・花子を筆頭者とする戸籍では、本籍地は実親と同じであり、氏は養親と同じとなります。

1つ上で見てきた実親の戸籍と同様に、養子である花子の身分事項欄には、特別養子縁組があった旨の記載があります。この戸籍からも、特別養子縁組があったことがわかります。

身分事項欄の最終行の赤い箇所をご覧ください。東京都豊島区〇〇鈴木一郎戸籍入籍につき除籍」と記載されていますね。

つまり、東京都豊島区に本籍がある鈴木一郎(養親)の戸籍に花子が入籍したため、花子を筆頭者とする戸籍(上図)は除籍となりますよ、ということを言っています。

最後に花子の父母欄にご注目ください。養親の名前がしっかりと記載されていますね。続柄も「養子」ではなく、「長女」と記載されます。

2-2 【比較】全部事項証明書の場合

それでは、全部事項証明書での表記についても見てみましょう。上で示した戸籍とは様式が変わるだけで、内容は同じです。

(画像クリックで拡大表示します)

特別養子縁組と戸籍謄本の表記例

赤く強調した箇所が特別養子縁組に関する記載です。

花子の身分事項欄では、「養父・養母」ではなく、「父母」になっているのがわかります。続柄も「養子」ではなく「長女」となっています。

3-1 養親の戸籍に特別養子が入籍

最後に、養子の花子が入籍した養親・鈴木夫妻の戸籍を見てみましょう。

(画像クリックで拡大表示します)

特別養子縁組と戸籍謄本の表記例

戸籍の筆頭者は鈴木一郎です。

夫の一郎と妻の和子の身分事項が順番に記載され、最後に特別養子となった花子の身分事項が続きます。

養親(鈴木一郎、和子)の身分事項欄をご覧ください。

特別養子縁組を行い、養子をとった旨の記載はまったくありません

では、養子となった花子の身分事項欄をご覧ください。

特別養子となる縁組の裁判確定」という記載はなくなっており、代わりに民法817条の2による裁判確定」と記載されています。

民法817条の2って何ですか?となりますよね。下記に示してみます。

(特別養子縁組の成立)
第八百十七条の二 家庭裁判所は、次条から第八百十七条の七までに定める要件があるときは、養親となる者の請求により、実方の血族との親族関係が終了する縁組(以下この款において「特別養子縁組」という。)を成立させることができる。
(以下略)

つまり、特別養子縁組の規定となります。

3-2 【比較】全部事項証明書の場合

それでは、養親・鈴木夫妻の戸籍についても全部事項証明書での表記を見てみましょう。

(画像クリックで拡大表示します)

特別養子縁組と戸籍謄本の表記例

養親である一郎と和子の身分事項欄には、花子と特別養子縁組を行った旨の記載はありませんね。

そして、養子の花子の身分事項欄には、「特別養子縁組」という記載はなく、代わりに「民法817条の2」という記載に変更されています。

民法817条の2と書かれる理由は?

なぜ、直接「特別養子縁組」という単語を使わずに、民法の条文番号で記載されているのかといいますと、そのほうが一見してわかりにくいためです。

中には特別養子縁組が行われたことを他人に知られたくないという方もいます。そのための配慮なのですね。

このように、養子・花子の現在の戸籍を見ただけでは、わざわざ「民法817条の2って何だ?」と調べることをしなければ、一見して特別養子縁組があったことはわかりません。

花子は最初から養親夫婦の子であったように見えるわけですね。

特別養子縁組の「離縁」と戸籍の表記について

『特別養子縁組と戸籍の表記については理解できました。ちなみに、特別養子縁組を「離縁」した場合の戸籍の表記はどうなりますか?』

さて、今度は上記のような疑問を抱かれる方がいらっしゃるかと思います。

離縁とは、一度行った養子縁組を解消する手続きです。まず、原則として特別養子縁組は離縁することができません

ただし、子の利益を守るため一定の要件を満たした場合に限り、例外として離縁が認められています

特別養子縁組を離縁することで養親の戸籍、養子の戸籍にそれぞれ離縁事項が記載されることになります。くわしくは「特別養子縁組の解消(離縁)と戸籍の表示・記載例を解説!(見本あり)」をご覧ください。

特別養子縁組は「子」と「実親」との親子関係を消滅させる縁組です

『そもそも特別養子縁組とはどういった制度なのですか?何のためにあるのですか?』

特別養子縁組と戸籍の関係について解説したところで、改めて特別養子縁組とはどんな制度であるのか、解説していきますね。

まず、養子縁組には次の2つの種類があります。

  • 普通養子縁組
  • 特別養子縁組

上記について、簡単にご説明します。

  • 普通養子縁組
    養子と実親との親子関係が縁組後も存続します
  • 特別養子縁組
    養子と実親との親子関係は完全に消滅します

普通養子縁組では、養子と実親との親子関係が存続するので、養子にとっての親は実親と養親ということになります。養子の戸籍を見るとわかりますが、実親、養親の氏名がそれぞれ記載されます。

特別養子縁組では、養子と実親との親子関係が完全に消滅するので、養子にとっての親は養親だけとなります。

今回解説していくのは、特別養子縁組の制度と戸籍の表示についてです。

特別養子縁組の制度はなんのためにある?

どうして特別養子縁組のような制度が存在するのか、お話ししていきます。そもそも、養子と実親との関係を消滅させるというのですから、大問題ですよね。

結論から言うと、子の福祉を図るためというのが理由です。つまり、特別養子縁組は「子のための制度」なのです。

たとえば実親が、精神的、身体的、経済的な事情により、子の養育ができない場合があります。さらには、虐待や遺棄など、子の利益が著しく害されるような場合もあります。

これらの場合に、子の利益を守るために、特別養子縁組という制度があるのです。つまり子の監護ができない、または不適切な実親から子を引き離し、大切に育ててくれる養親のもとへ引き渡すということです。

ただし、特別養子縁組はその影響力の大きさから、厳しい要件を満たした場合にのみ、家庭裁判所の審判によってなされます。

特別養子縁組が認められる要件、裁判所での手続きなどについて、くわしくは「特別養子縁組が成立する要件と家庭裁判所手続き、離縁、相続との関係」をご覧ください。

まとめ

特別養子縁組をした場合の戸籍の記載例についてご説明しました。特別養子縁組は、普通養子縁組とは異なり、戸籍にどのように記載されるのか心配・不安といった方も多いかもしれませんね。

養親の戸籍を見ただけでは、「特別養子縁組を行った事実」は直接的にはわからないような配慮がされています。この記事の内容が少しでもお役に立てれば幸いです。

養子縁組についてもっと知りたい方

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