被相続人(亡くなられた人)の相続が開始した後、その相続人も亡くなると、相続が重なることになります。
この複数の相続が重なった状態を、数次相続といいます。
数次相続が起こると、ただでさえ複雑でトラブルになりやすい遺産分割協議がさらに複雑になります。
ここでは、この数次相続の仕組みと、遺産分割協議との関係についてご説明します。
この記事でわかること!
この記事を最後までお読みいただくと、次のことが理解できます。
- 数次相続とは何か?
- 数次相続が起こる具体的な事例と遺産分割協議との関係
- 数次相続となった場合の相続の承認・放棄の注意事項
数次相続とは「複数の相続」が重なること
数次相続とは、被相続人(故人)の遺産相続が開始した後に、遺産分割協議や相続した不動産の登記といった相続手続きが行われる前に、さらに相続人の一人が死亡し、次の遺産相続が開始されることを言います。
はじめに起こった相続を一次相続、次の相続を二次相続と言います。
数次相続の具体例
具体例を図で見てみましょう。
浜一郎さんには配偶者の浜代さんと、子の浜二さん、浜男さんがいます。
浜男さんには配偶者の浜子さんと、子の太郎君、花子さんがいます。 浜一郎さんが亡くなり、相続が開始しましたが、遺産分割協議がされる前に、相続人の一人の浜男さんも亡くなりました。 |
■ 一次相続の相続人と取り分
浜一郎さんの相続を一次相続とします。
この相続における相続人と相続分は以下のとおりです。
浜代(2/4)、浜男(1/4)、浜二(1/4)
■ 二次相続の相続人と取り分
続いて、浜男さんの相続を二次相続とします。
この相続における相続人と相続分は以下のとおりです。
浜子(2/4)、太郎(1/4)、花子(1/4)
浜男さんの相続財産の中には、浜一郎さんから相続した分が含まれていると考えられます。
つまり、二次相続で浜子さんが相続する財産には、浜男さんが相続した「浜一郎さんの財産」も含まれていることになります。
要するに、「浜一郎さん→浜男さん」の一次相続と、「浜男さん→浜子さん」の二次相続という2回分の相続における財産が含まれているということになります。
このように相続が2回以上重なっている状態を、数次相続といいます。
誰が相続人となるか、遺産の取り分はいくらか、詳細はこちらでまとめています。
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数次相続における遺産分割協議はより複雑になる
上で示しました具体例では、浜一郎さんの相続における遺産分割協議やその他の相続手続きが行われる前に、すぐさま浜男さんが亡くなったことで、数次相続となってしまいました。
このように、遺産分割協議がされないうちに次の相続が開始してしまうと、やがて行われる遺産分割協議では、協議に参加する相続人の数も多くなっていきます。
上の例では、浜一郎さんの相続財産について、「浜代さん、浜二さん、浜子さん、太郎君、花子さん」の5人で遺産分割協議をすることになります。
もしも、浜男さんが亡くなる前に遺産分割協議が行えていたなら、浜一郎さんの相続における遺産分割協議の参加者は、「浜代さん、浜二さん、浜男さん」の3人でした。
このように、遺産分割協議に参加する人数が増えていくと、場合によっては、全く顔を見たこともない親戚との協議をすることになる、ということもあるかもしれません。
こうした場合には、トラブルになる恐れもあります。
こうならないためにも、遺産分割協議は後回しにせず、その都度行うようにしたいものです。
数次相続の「承認・放棄」で注意すべきこと
数次相続が生じた場合、相続の承認、相続の放棄をするにあたり、注意すべきことがあります。
もう一度、上の具体例の図で話しを進めます。
もし浜一郎さんが多額の負債を遺して亡くなった場合、負債も含めて遺産となります。
遺産の中で負債が占める割合が多ければ、相続放棄をしたいところです。
しかし、相続人であった浜男さんが相続の放棄をせずに亡くなった場合、数次相続により浜一郎さんの遺産を他の相続人とともに受け継ぐことになった浜子さん、太郎君、花子さんは、いったいどうすれば良いのでしょう。
やりたいことは、相続放棄の意思表示です。
ただ、「浜一郎さん→浜男さん」の一次相続と、「浜男さん→浜子さんら」の二次相続が同時に存在しているのです。
ここでは、それぞれの相続について考える必要があります。
説明の都合上、浜子さんに注目してお話しします。
- 浜子さんが「浜男 → 浜子」の相続を放棄した場合
浜子さんは浜男さんの相続人としての地位を失うので「浜一郎→浜男」の相続の承認・放棄のいずれもできなくなります。
- 浜子さんが「浜男 → 浜子」の相続を承認した場合
浜子さんは浜男さんの相続人として、「浜一郎→浜男」の相続の承認・放棄のいずれもすることができます。
- 浜子さんが「浜一郎 → 浜男」の相続を放棄した場合
「浜男→浜子」の相続の承認・放棄のいずれもすることができます。
上記からわかるように、浜子さんは「浜一郎→浜男」と「浜男→浜子」の双方の相続について承認/放棄の判断をすることになります。
相続放棄をする場合、熟慮期間である3ヶ月以内に家庭裁判所に意思表示をしなければなりません。
浜子さんに与えられた熟慮期間は、「浜一郎→浜男」と「浜男→浜子」の双方の相続について、浜子さんが『自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月』となります。
まとめ
数次相続の仕組みと、遺産分割協議との絡み、数次相続の承認と放棄の注意事項についてご説明しました。
誰かが亡くなり、すぐにまた誰かが亡くなる・・・という事態もないことはないので、念のため、ご注意くださいね。