ちょっと想像してみてください。

あなたは亡くなった父と長年同居し、ほとんど無償で介護をしてきたとします。そのおかげで、父は自身の財産を最後まで維持することができたとします。

その財産(遺産)の相続が開始したとたん、それまで一切介護にはノータッチだった兄が均等な相続を要求してきました。

あなたは納得できますか?

遺産を法定相続分どおり分ければ、あなたと兄は1/2ずつとなります。(他に相続人がいなければ)

ですが、寄与分を主張することで、法定相続分より多めに遺産を相続できる可能性があるのです。

今日は、この寄与分とは何か?についてお話します。

この記事でわかること!

この記事を最後までお読みいただくと、次のことが理解できます。

  • 寄与分の制度の趣旨
  • 寄与分が認められる条件
  • 寄与分が認められた場合の相続分の計算方法
  • 寄与分を定める調停の申立てについて

公平な相続を!寄与分の制度

寄与分(きよぶん)とは、相続人間の公平を図るために、法定相続分を一部修正する制度です。

例えば、記事冒頭の例のように、「ほぼ無償に近い形で父の介護に専念してきた」などの場合、その相続財産をそれだけ残せたのは、介護に専念してきた相続人のおかげですよね。

それなのに他の相続人と均等に財産を分けるのは、不公平ですよね。

ですので、こういう場合、介護に専念してきた相続人を優遇しよう!というのが寄与分の制度なのです。

ちなみに、”寄与”とは、「役に立つことを行うこと。貢献」の意味ですね。

役に立った分、相続分を増やして!ということです。

民法904条の2に寄与分についての決まりがあります。とりあえず、下線部と赤い部分にご注目ください。

(寄与分)
第904条の2 共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする
2 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、同項に規定する寄与をした者の請求により、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、寄与分を定める。
3 寄与分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。
4 第二項の請求は、第九百七条第二項の規定による請求があった場合又は第九百十条に規定する場合にすることができる。

つまり、「被相続人の仕事を手伝っていた」、「介護など療養看護をしていた」などによって、被相続人の財産の維持や増加に貢献していた場合、寄与分が認められるのです。

さらに、その寄与は「特別の寄与」である必要があります。

記事冒頭の例のように、”ほぼ無償に近い形で”介護していた場合などはそれにあたるでしょう。

しかし、ただ介護していただけで、被相続人の財産の減少を防止したり、増やしたとは言えないような場合は、残念ながら特別の寄与とは認められない場合もあります。

寄与分を定める処分調停/審判とは

寄与分は、まずは相続人同士の話し合いで決めますが、決まらない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てることができます。

また、調停が不成立になった場合には、寄与分を定める審判(しんぱん)に進みます。

この場合、遺産分割審判の申立てをしなければなりません。

これをしないと、寄与分を定める審判が却下されます。

寄与分を定める審判の申立てがなされると、寄与分を定める審判と遺産分割審判は併合され、一つの審判がなされることになります。

寄与分を定める処分調停の申立て方法については、後ほどご説明します。

寄与分がある場合の相続分の計算方法

具体例で寄与分が認められる場合の、各相続人の取り分を計算してみましょう。

浜一郎さんが亡くなり、その子の浜子さんと浜男さんが相続した。浜一郎さんの相続財産の価額は6000万円であり、浜子さんの寄与分が2000万円となった。浜子さん、浜男さんの相続分はいくらか。

寄与分がある場合の相続分は次のように計算します。

1.全体の相続財産の価額から寄与分を引きます。

6000万円 – 2000万円 = 4000万円

2.上記の金額を、各相続人に法定相続分どおりに取得させます。

浜子さんの取り分:4000万円 × 1/2 = 2000万円
浜男さんの取り分:4000万円 × 1/2 = 2000万円

3.最後に特別の寄与をした者に寄与分を足してあげます。

浜子さんの取り分:2000万円 + 2000万円 = 4000万円

以上の計算により、浜子さんが4000万円、浜男さんが2000万円を取得します。

ちなみに、被相続人が遺言で遺贈をしていた場合、遺産から遺贈の額を控除し、残った遺産の範囲内で、寄与分を決めることになります。

※相続分については、(配偶者・子・父母・兄弟の相続順位&相続分の計算方法を解説!)で説明しています。
※遺贈については、(兄弟に遺留分はなし?計算方法&遺留分減殺請求のやり方)で説明しています。

寄与分を定める処分調停の申立て

既にお話したとおり、寄与分について相続人間で話し合いがまとまらない場合、家庭裁判所の調停又は審判の手続を利用することができます。

調停手続を利用する場合は、「寄与分を定める処分調停事件」として申し立てます。

寄与分を定める処分調停の手続き

  • 申立人

被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした相続人
※申立人以外の共同相続人全員が相手方になります。

  • 申立て先

相手方のうちの1人の住所地の家庭裁判所、又は当事者が合意で定める家庭裁判所、遺産分割事件が係属している場合は,その事件が係属している裁判所
(※係属とは、「ある訴えが裁判所で取り扱い中であること」の意味です。)

  • 申立てに必要な費用

申立人1人につき収入印紙1200円分、連絡用の郵便切手

※申立てに必要な書類、記載例、その他詳細につきましては、裁判所HP<寄与分を定める処分調停>でご覧いただけます。

参考までに、下記に寄与分を定める処分調停の申立書の記載例を示します。

寄与分が認められるためには、特別の寄与が条件です。

さらに相続人間の話し合いで解決できない場合の調停では、寄与分を主張する具体的な証拠(介護の記録など)が必要となります。

普段から、証拠として残せるものは残すよう心掛けることが大切ですね。