養子縁組をする予定でいます。養子縁組をすると、わたしや養子の戸籍には何と記載されますか?パッと見でわかるのでしょうか?
養子縁組の結果、戸籍がどのように変わるのか、気になる方は多いかと思います。今回はこのような疑問にお答えします。
ということで、この記事では養子縁組(普通養子縁組)をした場合の戸籍の表記(記載)について、見本つきで解説していきます。
目次
養子縁組は「普通養子縁組」と「特別養子縁組」の2種類あります
養子縁組には、普通養子縁組と特別養子縁組の2つがあります。一般的には、単に養子縁組と言うと、普通養子縁組を指します。
両者の違いは次のとおりです。
- 普通養子縁組
子と実親の親子関係を継続し、養親とも親子関係を結ぶ養子縁組です。養子と実親との親子関係が継続するので、実親が亡くなった場合に、養子は実親を相続できます。
- 特別養子縁組
子と実親との親子関係を完全に消滅させ、養親とだけ親子関係が結ばれる養子縁組です。養子と実親との親子関係が消滅するので、養子は実親を相続できません。
この記事では、普通養子縁組をした場合の戸籍の記載について解説していきます。
特別養子縁組をした場合の戸籍の記載については、以下の記事をご覧くださいませ。
おすすめ【特別養子縁組】戸籍からわかる?特別養子の戸籍と記載例(見本あり)養子縁組の有無は戸籍謄本から確認できる。戸籍謄本を取り寄せる
まず大前提として、養子縁組をしたかどうかの有無は、その人の戸籍謄本から確認できます。つまり、養子縁組をした事実はしっかりと戸籍謄本に記載されるということです。
特別養子縁組の場合はその性質上、一見してわかりにくい記載がされますが、普通養子縁組の場合には、戸籍謄本にはっきりと「養子縁組」の文字が記載されます。
戸籍謄本は本籍地の役所に請求することになります。本籍地の役所が遠方で取り寄せできない場合には、郵送でも取り寄せが可能です。
戸籍謄本を郵送で取り寄せる方法は以下の記事で詳しく解説しています。
養子縁組をすると戸籍にどう表記される?【記載例】
それでは、次の3つの場合について、戸籍にどう表記されるのかを見ていきましょう。
戸籍の見本を掲載しました。参考にしてみてください。
- 単身者が養子となった場合
- 夫婦で養子となった場合
- 婚姻により氏を変更した者が養子となった場合
1.単身者が養親夫婦と養子縁組をした場合
単身で養子となる場合には、養子は養親夫婦の戸籍に入ります。
その結果、養親夫婦の戸籍の身分事項欄には、「いつ、誰を養子とする縁組の届出をしたか」が記載されます。そして、養子の情報が戸籍に追加されるのです。
養子の身分事項欄にも同様に、「いつ、誰と養子縁組をしたか」が記載されます。
それでは、以下の具体例で養子縁組をした場合の戸籍の表記を見てみましょう。
- 静岡太郎さんと浜子さんは夫婦である。
- 静岡さん夫婦は、浜松一郎くんと平成12年5月5日に養子縁組をする届出をした。
戸籍の見本で確認しよう / 養子と養親の戸籍
それでは、上で示した例をもとに、養親夫婦の戸籍がどう変わるのか、見本で確認してみましょう。
以下に示した戸籍は、平成6年の戸籍改製前(戸籍がコンピュータ管理される前)の様式です。最新の様式については後ほどご紹介します。
(画像クリックで拡大表示します。)
上の例で、赤と青で強調した箇所が注目していただきたいところです。
養親夫婦の太郎さん、浜子さんそれぞれの身分事項欄に「平成12年5月5日に養子縁組の届出をした」旨が記載されていますね。
数字がなんだか難しい漢字を使っているようですね。。
平成6年の戸籍改製で、戸籍がコンピュータ管理される前までの戸籍では、「一」は「壱」、「二」は「弐」、「三」は「参」、「十」は「拾」と記載されていました。ちょっと難しいですね。
戸籍に追加された一郎くんの身分事項欄にも、養子縁組をした旨の記載がありますね。そして、一郎くんの実親の氏名と続柄、養親である養父、養母の氏名と続柄が記載されます。
続柄も、実親との関係では「二男」と記載されていますが、養親との関係では「養子」と記載されます。
こうして、戸籍を見ることで、養子と養親の関係が把握できるわけですね。
全部事項証明書での記載例 / 養子と養親の戸籍
平成6年にコンピュータ管理されるようになった戸籍(全部事項証明書といいます。)における記載例も見てみましょう。
この戸籍は一番新しい様式なので、ご存じの方は多いのではないでしょうか。
上図で、赤字で強調した箇所が「養子縁組」に関する記載です。
2つの様式で養子縁組の表記をご紹介しました。ぜひ比較してみてください。
養子の身分事項欄にて、「代諾」という言葉が表示されています。
養子となる者が15歳未満である場合には、その法定代理人(親権者など)が養子に代わって養子縁組の承諾をすることができるのです。これを代諾といいます(民法797条1項)。
いまいち、戸籍謄本とか全部事項証明書とかの違いがわかりません…
知らないと難しく感じますが、実際はすごく簡単です。以下の記事にて易しく解説しています。
2.養親と養子がともに夫婦である場合
今度は、養親と養子がともに夫婦である場合についてです。
どういう意味かといいますと、上の例では養子が単身者でしたが、今度は「夫婦である男女」がそろって養子となり、養親夫婦と養子縁組をする、というパターンです。
夫婦そろって養子になることができるのですね。知りませんでした。
夫婦が養子となる場合では、養子夫婦は養親の戸籍に入ることはありません。
何故かといいますと、戸籍は「一の夫婦と氏を同じくする子」で構成される必要があるためです。
養子夫婦がもしも養親夫婦の戸籍に入ってしまうと、その戸籍には二組の夫婦が同籍していることになってしまいますので、これでは現行戸籍の編製基準に合いません。
では、どうなるのかと言いますと、
養子となる夫婦のために、養親と同じ氏で新戸籍が編製(作成)され、縁組前の養子夫婦の戸籍は除籍となる、という扱いになります。
養子縁組をしたことで、養子夫婦の氏は養親と同じになるのですね?
はい。とはいえ氏が変わっても養子夫婦は養親夫婦の戸籍に入れないので、新しい戸籍が作られる、という流れです。
養親夫婦の戸籍には、身分事項欄に「いつ、誰を養子とする縁組の届出をしたか」が記載されます。
それでは、新しく編製された養子夫婦の戸籍の表記について、以下の例で見てみましょう。
- 静岡太郎さんと浜子さんは夫婦である。
- 田中甲男さんと文子さんは夫婦である。
- 静岡さん夫婦は、田中さん夫婦を養子に迎えることにし、平成26年4月6日に養子縁組の届出をした。
(養親:静岡さん夫婦、 養子:田中さん夫婦)
戸籍の見本で確認しよう / 養子の戸籍
それでは、上で示した例をもとに、戸籍の見本で確認してみましょう。以下は、養子となった田中さん夫婦のために新しく作られた戸籍です。
(画像クリックで拡大表示します。)
例では、「平成26年4月6日」に養子縁組をしています。
本籍のすぐ左の欄(戸籍事項欄)をご覧ください。「平成弐拾六年四月六日編製」とありますね。
養子縁組が原因でこの戸籍が新しく編製(作成)されました、ということを表しています。
本籍欄の下の筆頭者氏名は、養親の氏である「静岡」に変わっていますね(縁組前は田中でした)。
そして、夫婦の身分事項欄には養子縁組をした旨の記載があります。夫婦それぞれの身分事項欄に養父、養母の氏名が記載されています。
続柄ですが、夫の場合は「養子」、妻の場合は「養女」と記載されます。
3.婚姻により氏を改めた者が養子となった場合
養子縁組をした場合、基本的に養子は養親の氏を名乗ることになります。これが原則です。
ただし、婚姻により氏(苗字)を改めた者が養子となる場合は、婚姻関係が解消されるまでは、例外として、養親の氏を名乗ることはありません。
ちょっと、何を言っているのかわかりません。
ちょっと難しいので、例で考えてみましょう。
たとえば、浜松花子が静岡太郎と結婚し、夫の氏を称することになったとします。これにより「浜松花子 → 静岡花子」になりますね。
この後、静岡花子が浜北夫妻の養子となったとします。
養子縁組の原則に従えば、「静岡花子 → 浜北花子」になるわけですが、花子は婚姻で氏を改めた者に当たるので、養親の氏(浜北)を名乗ることはなく、静岡花子のままとなります。
なぜ、このような扱いとなるのかご説明します。
上の例で、花子が養親の氏を名乗ることになると、「夫は静岡太郎、妻は浜北花子」となり、夫婦は同一の姓を称する(名乗る)という決まりに反してしまうためです。
夫婦は同じ氏でなければならないので、婚姻で氏を改めた花子は、養子縁組によっても、養親の氏を名乗ることはないのです。
戸籍の記載について
それでは、婚姻で氏を改めた花子が養子となった場合には、養子と養親の戸籍はどう変化するのでしょうか。
氏は変わりませんが、花子の戸籍の身分事項欄には、養子縁組をした事実と養父母の氏名が記載されます。
そして、養親の戸籍にも、花子と養子縁組をした旨の記載がされます。
このケースでの養子縁組では、養子は養親の戸籍に入ることはありませんし、養子のために新しい戸籍が編製されることもありません。それぞれの戸籍に「養子縁組」をした事実が記載されるだけです。
ちなみに、もしも養子となったのが、婚姻で氏を改めていない者(上の例なら、夫・静岡太郎)であった場合、原則どおり養親の氏を名乗ることになります。
そして、その配偶者(上の例で花子)も同様に、その氏を名乗ることになります。夫婦の氏は同一でなければならないためです。
まとめ
普通養子縁組をした場合の戸籍の表記について、いくつかご紹介しました。相続手続きの際には、被相続人の出生から死亡までの戸籍を収集して、相続人を確定させます。養子も立派な相続人です。確認漏れがないようにしなければなりませんので、ご注意ください。
これから自分の戸籍謄本を取り寄せたいと思います!
戸籍は郵送でも取り寄せできます。忙しく役所に行く暇がない方は、郵送で取り寄せてみましょう。
養子縁組や離縁、届出などに関する基礎知識をまとめたリストです。お好きな記事からご覧ください。