養子の養母『わたしと養子との間で、養子縁組の解消(離縁)をすることになりました。
養子縁組を解消すると、わたしや養子の戸籍には、どう表記されますか?』

 

この記事では、以下の内容を解説していきます。

  • 養子縁組の解消(離縁)により養親戸籍にどう表記されるか
  • 同じく実親戸籍にどう表記されるか

読者の方へ

この記事では、「協議離縁」をした場合の戸籍について解説していきます。

参考までに、離縁には以下の3種類があります。

  • 協議離縁

養親と養子で協議(話し合い)により行われる離縁

  • 裁判離縁

裁判所での判決(審判)によって行われる離縁

  • 単独離縁

養親または養子の一方が死亡した場合、生存する者が死亡した者とする離縁

養子縁組を解消(離縁)すると戸籍にどう表記される?【記載例】

それでは、養子縁組を解消、つまり離縁した場合に、各々の戸籍にはどのように表記(記載)されるのかについて解説していきます。

この記事では、以下の具体例(ケース)について考えます。

【ケース】

15歳未満の養子と、その養親が養子離縁をする

 

【離縁の協議をする者】

  • 養親
  • 離縁後に養子の親権者となる実父母
    (養子が15歳未満のため)

【養父母の情報】

本籍地:東京都千代田区平河町〇丁目〇番地
養父氏名:山田太郎
養母氏名:山田花子
養子氏名:山田雄介(平成21年10月9日生)

 

【実父母の情報】

本籍地:東京都千代田区永田町〇丁目〇番地
父氏名:鈴木大介
母氏名:鈴木京子

 

【離縁日】

平成31年9月8日

 

【離縁するまでの情報】

  • 養子の山田雄介は養子縁組により、養親・山田太郎の戸籍に入籍した
    (縁組前は実親・鈴木大介の戸籍に在籍していた)
  • 養子の山田雄介は養子縁組により、氏が鈴木から山田に変更された

まず、前提となる知識をおさらいします。一部例外はありますが、以下のとおりお考えください。

養子縁組の基礎知識
  • 養子縁組をすると、養子は養親の戸籍に入籍する
  • 養子となった子の氏は原則として養親と同じ氏となる
  • 養子縁組を解消(離縁)すると、養子は養親の戸籍から除籍され、縁組前の戸籍に戻る
  • 離縁により、養子の氏は縁組前の氏に戻る

養子縁組と戸籍の記載については「【見本解説】養子縁組をした!養子と養親の「戸籍」の記載例を解説」で解説しています。

 

上記のとおり、離縁をすることで、養子はそれまで在籍していた養親の戸籍から除籍され、養子縁組前の戸籍に戻ることになります。

 

養子が15歳未満の場合

養子が15歳未満である場合、協議離縁を行うには、離縁後に養子の法定代理人となる者が養子に代わって協議を行います

これは、15歳未満の子は養子縁組や離縁の意思表示を単独で行うことができないためです。

第八百十一条 縁組の当事者は、その協議で、離縁をすることができる。
2 養子が十五歳未満であるときは、その離縁は、養親と養子の離縁後にその法定代理人となるべき者との協議でこれをする

(出典:e-gov-民法)

つまり、上のケースで言うなら、山田雄介さんは15歳未満であるため、離縁後に親権者(法定代理人)となる実父母が、養子に代わって協議を行うことになります。

 

夫婦が共同で離縁する

今回の例のように、養親が夫婦であり、養子が未成年者の場合、離縁をするには養親夫婦が共に行わなければなりません。(民法811条の2)

(夫婦である養親と未成年者との離縁)
第八百十一条の二 養親が夫婦である場合において未成年者と離縁をするには、夫婦が共にしなければならない。ただし、夫婦の一方がその意思を表示することができないときは、この限りでない

それでは、以降の戸籍のサンプルを用いて離縁の流れを見ていきましょう。

養子縁組を解消(離縁)する:養親の戸籍

上でご説明したとおり、養子縁組によって養子・山田雄介は養親・山田太郎の戸籍に入籍していました。

ところが、養子離縁をしたことで、養親・山田太郎の戸籍から除籍されます。

以下に示すのは、養親・山田太郎の戸籍です。

戸籍の記載例をご覧ください。赤く囲った部分が養子離縁に関する記述です。

離縁前の養親の戸籍

この戸籍から見てとれる情報を確認していきましょう。

まず、この戸籍には筆頭者である山田太郎とその妻・山田花子、さらに養子の山田雄介が在籍しています。

山田雄介の欄には、実父母の名前と養父母の名前が記載されています。

続柄は、実親との関係では「長男」と記載され、養親との関係では「養子」と記載されていますね。

戸籍に在籍する各々の欄(上部)には、出生事項や婚姻事項などが記載されますが、ここでは関係ないので省略しています。

それでは、赤く囲った部分をご覧ください。

養父母について

まず養父・山田太郎と養母・山田花子の欄では次のように記載されています。

養父の欄
平成参拾壱年九月八日妻とともに養子雄介と協議離縁届出

養母の欄
平成参拾壱年九月八日夫とともに養子雄介と協議離縁届出

つまり、平成31年9月8日に、山田夫妻が養子・山田雄介と協議離縁をした旨が記載されているのです。

 

養子について

養子・山田雄介についてはどうでしょうか。

次のように記載されていますね。

  • 平成参拾壱年九月八日養父山田太郎養母花子と協議離縁届出(協議者親権者となるべき父母)
  • 東京都千代田区永田町〇丁目〇番地鈴木大介戸籍に入籍につき除籍

つまり、平成31年9月8日に、養父・山田太郎と養母・山田花子との間で、協議離縁を行った旨が記載されています。

ここで、養子・山田雄介は15歳未満なので、代わりに離縁後に親権者となる実父母が協議を行ったことも記載されています。

そして、最後に実親・鈴木大介の戸籍に入籍するため、この養親の戸籍から除籍された旨が記載されています。

全部事項証明書の記載例

上でご説明した戸籍の記載について、今度は全部事項証明書(コンピュータ管理されるようになった戸籍)の場合を見てみましょう。

今ではほとんどの市区町村で、戸籍謄本の交付請求をすると、以下に示すような全部事項証明書の交付がされるので、こちらの方が見覚えがあるでしょうか。

赤く囲った部分が養子離縁に関する記載です。書いてある内容は、基本的に上で示した内容と同じものとなります。

離縁前の養親の戸籍(全部事項証明書)

筆頭者の山田太郎と妻・山田花子の「身分事項」という欄には、養子離縁に関する記載があります。

離縁日、共同離縁者、養子氏名の記載が見て取れます。

養子・山田雄介の身分事項を見てみましょう。

1つ上で示した戸籍では、氏名が×で消されていましたが、全部事項証明書では[除籍]という記載がされます。

同様に、身分事項では、養子離縁に関する記載があります。

 

全部事項証明書って何?という方は、「戸籍の全部事項証明書とは?見方・戸籍謄本との違い|行政書士が解説」をご覧ください。

養子縁組を解消(離縁)する:実親の戸籍

次は養子離縁があった場合の実親の戸籍について見ていきましょう。

鈴木夫妻の子・雄介は、山田夫妻との養子縁組によって下記に示す戸籍から除籍されていました。

ところが、養子離縁がされたことで、再び子・雄介が下記の戸籍に入籍します。

下記戸籍の赤で囲んだ部分をご覧ください。

離縁後の実親の戸籍

まず、もともと養子縁組前に子・雄介が在籍していた部分の身分事項として、養子縁組による除籍事項が記載されています。(ここでは省略)

つまりは山田夫妻との養子縁組によって、いついつに子・雄介がこの戸籍から除籍されましたよ、という旨が記載されているわけです。氏名も×で消されています。

そして、子・雄介と養親・山田夫妻との離縁によって、再び実親・鈴木大介を筆頭者とする上記戸籍に入籍するわけですね。

上記の戸籍では、除籍された子の記載の左隣に、子・雄介の記載が追加されていますね。

そして、身分事項には次のように書かれています。

平成参拾壱年九月八日養父山田太郎養母花子と協議離縁届出(協議者親権者となるべき父母)
東京都千代田区平河町〇丁目〇番地山田太郎戸籍から入籍

つまり、平成31年9月8日に、養父・山田太郎と養母・山田花子と協議離縁をした旨が書かれています。

養子・雄介は15歳未満なので、協議は代わりに離縁後に親権者となる実親が行った旨も記載されています。

そして最後に、離縁するまで在籍していた養親・山田太郎の戸籍から、実親・鈴木大介の戸籍に入籍した旨が記載されています。

全部事項証明書の記載例

それでは全部事項証明書での記載について見てみましょう。

上で示した戸籍と同様の事項が記載されています。

離縁後の実親の戸籍(全部事項証明書)

戸籍の記載(最下部の赤枠)から、養子縁組によって除籍となっていた子・雄介について、再びこの戸籍に入籍した旨が見て取れますね。

まとめ

15歳未満の養子とその養親が養子縁組の解消(離縁)をした場合に、戸籍にどのように表記されるのかについて見てきました。

養子縁組により、養子は養親の戸籍に入籍すること。その際に氏は養親と同じ氏となること。養子離縁により、もとの戸籍に戻ることを確認しておきましょう。

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