私は幼い頃に特別養子縁組をしています。この事実は、戸籍からわかってしまうのでしょうか?また、戸籍をたどることは可能ですか?
今回は、特別養子縁組が戸籍からわかるか、戸籍をたどることは可能かについて解説していきます。
特別養子縁組は戸籍の記載からばれる?【結論:わかります】
まず結論からお話すると、特別養子縁組をした事実は、その方の戸籍をじっくり確認することで、わかってしまいます。
特別養子縁組は実親との親子関係を完全に消滅させます。
実親による子の監護が著しく困難または不適当であり、子の利益のために特に必要と認められる場合にのみ、家庭裁判所の審判によって成立します。
このため、特別養子縁組がなされた事実を他人に知られたくない、という考えをお持ちの方もいらっしゃるのです。
特別養子縁組をすると戸籍謄本には何て記載される?
特別養子縁組が戸籍からわかってしまう、ということは理解しました。具体的に、どんな風に記載されるのでしょうか。
では、特別養子縁組が成立した後の、戸籍の記載例を以下にご紹介します。
次のケースを考えます。
- 養父:鈴木一郎、養母:鈴木和子
- 特別養子:鈴木花子
以下に、特別養子縁組をした場合の養親の戸籍謄本(全部事項証明書)を示します。
上図は、鈴木一郎さんを筆頭者とする戸籍謄本を示しています。筆頭者⇒妻⇒子の順に戸籍に記載されています。
一番下の花子にご注目ください。赤字で強調した箇所に、「民法817条の2」という記載があります。
では、民法817条の2について規定する条文を以下に引用します。
(特別養子縁組の成立)
第八百十七条の二 家庭裁判所は、次条から第八百十七条の七までに定める要件があるときは、養親となる者の請求により、実方の血族との親族関係が終了する縁組(以下この款において「特別養子縁組」という。)を成立させることができる。(出典:e-gov-民法)
つまり、特別養子縁組を規定した条文なのです。
花子さんの現在の戸籍を取り寄せると、見本に示した戸籍が交付されます。そこには、民法817条の2という特別養子縁組を規定した条文の記載があるのです。
ということは、民法817条の2を調べることで、特別養子縁組があった事実は知られてしまうのですね?
そのとおりです。
特別養子の戸籍はたどることが可能か?【結論:可能です】
特別養子縁組が成立すると、養子となる子は次の3ステップで戸籍を移動し、最終的に養親の戸籍に入ります。
- 実親の戸籍から除籍される(外れる)
- 特別養子を筆頭者とする新戸籍を作る
- 養親の戸籍へ入る
つまり、実親の戸籍⇒特別養子の新戸籍⇒養親の戸籍と戸籍を移動します。
特別養子縁組をした後の戸籍の見本を「【特別養子縁組】戸籍からわかる?特別養子の戸籍と記載例(見本あり)」にて説明しています。
上で示した見本とは、上記ステップ3の養親の戸籍です。養親の戸籍には、民法817条の2という記載と、「従前戸籍」という記載があります。
従前戸籍とは、特別養子である花子がこの戸籍に入籍する前の戸籍を表します。つまり、上記ステップ2の花子を筆頭者とする新戸籍のことです。
戸籍謄本とは、本籍と筆頭者氏名がわかれば請求できます。つまり、花子が現在いる養親の戸籍にある情報から、花子の1つ前の戸籍(花子を筆頭者とする新戸籍)を請求する(たどる)ことは可能なのです。
そして、花子を筆頭者とする新戸籍にも、「従前戸籍」の本籍と筆頭者氏名が記載されています。つまり、花子の実親の戸籍です。
このように、特別養子である花子の現在の戸籍から前へ前へたどることで、花子の出生時の戸籍(実親の戸籍)を確認することができるわけです。
つまり、特別養子縁組の事実は戸籍から判明する、さらに戸籍をたどることも可能、ということですね。
わざわざ民法817条の2を調べることがあれば、ということですね。
まとめ
以上、特別養子縁組の事実は戸籍から知られるかについてでした。まとめると、次のとおりです。
- 養親の現在の戸籍では民法817条の2という記載がある
- 特別養子の戸籍をたどることで、実親の戸籍まで確認可能
といっても、民法の条文番号をわざわざ確認することをしなければ、一見してわからないような記載となっているのです。
特別養子縁組をした後の戸籍の表記(記載例)について、より詳しくご覧になりたい方は、以下の記事をどうぞ。
おすすめ【特別養子縁組】戸籍からわかる?特別養子の戸籍と記載例(見本あり)