皆さん、相続は一体いつ始まるのかご存知でしょうか。
「人が亡くなると、始まるのでは?」
そうです。相続は人が亡くなると、その瞬間から始まります。では、人が亡くなったと判断されるのは、どのような場合でしょう。
脳死のとき?それとも心臓停止のとき?
実は、相続において人がいつ亡くなったかが非常に重要となります。その理由を解説していきます。
被相続人がいつ死亡したかが相続では重要【具体例で考える】
相続では、被相続人がいつ死亡したのかが非常に重要となってきます。これは何故かを解説します。
まず、冒頭で述べたとおり、相続とは死亡によって開始します。ここで問題となるのが、親族の中で、複数の死者が出た場合です。
死亡時刻の早い、遅いによって、相続に大きな影響が出てくるのです。
では、上記を簡単な例でご説明してみます。次のケースを考えます。
- 夫婦がいます。夫婦に子はいません。
- 妻については、親は母親のみ存命、兄弟はいません。
- 夫については、親はなく、兄弟が1人います。
では、上記の場合に、妻と夫のどちらが先に亡くなるかで相続にどう影響するかを考えてみましょう。
ケース1:妻が先に亡くなり、その後に夫が亡くなる
妻の相続人は配偶者の夫と母です。夫は妻の財産の2/3を、母は1/3を相続します。
そして夫が亡くなると、妻から相続した財産(2/3)に自身の財産を加えた分を、夫の兄弟がすべて相続します。
ケース2:夫が先に亡くなり、その後に妻が亡くなる
夫の相続人は配偶者の妻と兄弟です。妻は夫の財産の3/4を、夫の兄弟は1/4を相続します。
そして妻が亡くなると、夫から相続した財産(3/4)に自身の財産を加えた分が、妻の母がすべて相続します。
このように、夫と妻のどちらが先に亡くなったかで、「妻の母」と「夫の兄弟」の遺産の取り分に大きな影響を及ぼします。
これが原因で、どちらが先に亡くなったかで親族が争いとなるケースがあるのです。悲しいことです。
誰が相続人になれるか、相続分はどれだけかについては、「法定相続人の範囲と相続順位・相続分を解説【雛形を無料贈呈!】」で解説しています。
死亡は心臓停止のとき?それとも脳死のとき?【死亡の定義】
心臓が停止すれば、脳に酸素が運ばれなくなり、脳細胞もすぐに死滅します。逆に脳機能が停止すれば、脳が心肺機能を制御できなくなり、やがて心臓も停止します。
このため、どちらが先に停止したか?ということは大した問題ではありませんでした。
ですが現在は、医療技術の発達により、人工呼吸器や人工心臓などの活用により、脳死となっても心臓は動いている、という状態が実現できています。
脳死と心臓死に時間差が生じるようになった今、相続において、どちらが死亡かをはっきりさせなくてはいけません。
例えばですが、夫婦がいて、夫が脳死となった後に妻が亡くなり、その後夫の心臓が停止して死亡した、というケースでは、夫の相続がどの時点(脳死か心臓停止か)で開始するかで、相続に影響してきます。
結論として、相続が始まるのは、心臓停止の時点とされています。
つまり、今現在、脳死となっても民法上は死亡したとはせず、相続は開始しません。しかし、今後の議論や裁判を重ねることで、相続における死亡の概念が変化するかもしれません。
死亡を認定するのは誰?
基本的に人は病院で亡くなることが多いですよね。その場合、担当医によって死亡診断書が出されます。
交通事故などで即死したような場合には、死体を検案した医師により死体検案書が出されます。
死亡診断書、死体検案書ともに、死亡を証明する効力を持つ書類となります。
人が亡くなると、死亡から7日以内に役所に死亡届を提出する必要がありますが、その際に上記の死亡診断書、死体検案書を添付する必要があります。
死亡の認定は、上記の方法以外にも、例えば失踪宣告がされた場合などもあります。不在者の生死が7年もの間、明らかでないときには、関係者の申立てにより、家庭裁判所は失踪宣告ができます。
失踪宣告がなされると、不在者は死亡したものとみなされ、相続が開始します。
まとめ
相続が開始するのは被相続人が亡くなった時ですが、医学的に見て、どのような状態を死亡と判断するのかお話してきました。複数の相続が起こるとき、どちらが先に亡くなったかで、周りの親族の遺産の取り分に大きな影響が出ること、おわかりいただけたかと思います。