仲の良い夫婦の中には、もしかしたら遺言を一緒に残そうと考えている方々がいるかもしれません。
ですが、注意していただきたいことがあります。それは、「共同遺言」をしてしまうと、遺言として無効となってしまうということです。
共同遺言とは何か?無効になる理由を解説します。
- 共同遺言とは何かについて
- 共同遺言が禁止されている理由:何が不都合なの?
共同遺言は禁止されている【無効となるので注意】
共同遺言とは、複数の者が、同一の証書(遺言書)に共同で遺言を書き、署名・捺印をすることです。
この点に関して、民法975条が定めています。
(共同遺言の禁止)
第975条 遺言は、二人以上の者が同一の証書ですることができない。(出典:e-gov-民法)
上記のとおり、夫婦であっても、共同遺言をすることは許されません。共同遺言であった場合、その遺言は無効となります。
しかし、単に2人の遺言書がホチキスで止めてあるだけの場合など、双方の遺言書を容易に切り離すことができる場合は、共同遺言にあたらず、遺言は有効であるとした裁判例もあります。(最高裁判所第三小法廷 平成5年10月19日 )
つまり、夫婦がそれぞれ作成した遺言書を単純にホチキスやクリップで止めてあるだけで、容易に分離できるのならば問題はありません。
しかし、完全に同一の証書に2人分の遺言が記載してある場合は、共同遺言にあたり、無効となってしまうのですね。
共同遺言は禁止!何がダメなの?
ちなみに、共同遺言になっていると何が悪いかについて簡単にお話します。
まず大前提として、遺言はいつでも撤回することができます。民法の次のとおり規定されています。
(遺言の撤回)
第千二十二条 遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。(出典:e-gov-民法)
撤回は新しく遺言書を作り直すことで行います。他にも、遺言書を丸めて捨てた、つまり破棄した場合も撤回となります。
このように、遺言は一度作成したら終わり、ではなく何度でも撤回して作り直すことが可能なのです。
しかし、例えば夫婦の共同遺言が仮に許されたとすると、その遺言書の中で両者の意思が混じりあってしまいます。
そのため、後日撤回が行われた場合に、誰のどの部分の撤回なのかがよくわからなくなり、大変不都合となってしまうのです。同一文書に複数人の遺言が混ざって書かれていたら、自由に撤回、破棄もできないですよね。
このような意味で、たとえ夫婦であっても、共同遺言は禁止されているのですね。
遺言書の撤回方法について知りたい方
遺言書の撤回方法をくわしく解説しています。とくに公正証書遺言の撤回には注意が必要なのです。具体的には以下の記事をご覧ください。
遺言書の撤回・破棄の方法&注意事項【公正証書遺言の撤回は要注意!】
まとめ
共同遺言とは何か、共同遺言が禁止されている理由を解説しました。仲の良い夫婦ですと、ときどき同一文書で遺言書を作成したい、という方がいらっしゃいます。
ですが、ご説明したとおり、これをやってしまうと遺言全体が無効となってしまうのです。知らずに共同遺言をしてしまうケースもあります。遺言書作成の際には注意していただきたいと思います。
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