私たちが亡くなった後、大切な遺族が相続で揉めないように、遺言書を書かれる方は増えています。

その中でも、一番安全で確実な遺言として、公正証書遺言を作成する方も増加傾向にあります。公正証書遺言は、公証役場で法律の専門家である公証人に作成してもらう遺言になります。

では、どこの公証役場で作成すればよいのでしょうか。また、公証役場に行く前に必要な準備は何があるでしょうか。

事前にやっておくべきことをご説明します。

公証役場はどこでもいいの?

公証役場は全国に存在しており、基本的にどこの公証役場で作成しても構いません。

全国の公証役場一覧をご覧ください。

また、遺言者が病気や高齢などで外出できないような場合には、公証人に出張してもらうことも可能です。病院や自宅、施設などに出張してもらえます。

ただし、公証人が出張できる地域の範囲は、公証人が所属している法務局の管轄内とされています。ですので、できるだけ近場の公証役場で手続きするようにしましょう。

公証人に出張してもらう場合には、公証人の日当、現地までの交通費が別途かかります。さらに、遺言書作成にかかる手数料が50%増しとなりますので、注意が必要です。

このように、公証人に出張してもらうと出費が増えてしまうので、できれば公証役場での手続きをお勧めします。

おすすめ【公正証書遺言】作り方、公証役場の手続き、選ばれるメリットを解説

事前準備(遺言の内容を考える、財産目録の作成)

公証人は、遺言者の遺言の意思や内容を確認の上、それを反映した遺言書を作成してくれます。

当然、遺言書作成において重要な法律上の要件を満たすように作成します。つまり、遺言書の形式上の不備などから遺言書が無効となる危険はなくなります。

行政書士 タカ行政書士 タカ

遺言書は作り方、書き方など厳格にルールが決められています。それは遺言書の影響力が非常に大きいためです。形式上の不備があると、遺言全体が無効となる恐れがあります。

当然のことではありますが、どんな内容の遺言書を作成するのか、そして誰に財産を相続させるのかなどを考えるのは、遺言者になります。

ですので、公証役場を訪ねる前に、事前に遺言の内容を固めておかなければなりません。

公証人は、あくまで遺言者の希望通りに、”法的に有効な”遺言書の作成を行ってくれるわけですね。

実現しやすい遺言書を作る(トラブル回避の視点から)

また、大切なことをお話します。それは、財産目録を作成する必要性についてです。

その前に、まずは下記をお読みください。

公証人は法律上の要件を満たした有効な遺言を作成してくれます。ですがそれと、遺言書の内容(遺言者の希望)どおりに相続が実際に行われるかは別問題です。

たとえば、遺言の内容が相続人の遺留分(相続人に与えられる最低限の相続分)を侵害していたとしましょう。

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たとえば、遺言で「私の全財産を愛人のA子に遺贈する!」と書かれていたとします。(遺贈は与えるということ)

すると、もしも遺言者に配偶者や子などの相続人がいると、この遺言は相続人の遺留分を侵害していることになります。※詳細は上記のリンク先のページをご覧ください。

そして、遺留分を侵害する遺言は法律上は有効なのです。公証人はそのまま遺言書を作成します。

 

ですが実際に相続のときに、遺留分を侵害された相続人が、他の相続人や遺贈を受けた者(受遺者)に対して、遺留分減殺請求をする可能性は大いにあります。(この請求により、請求者の遺留分を確保する限度で、財産を取り戻すことができる)

上記のような状況になると、遺言者の意思が尊重されないばかりか、相続人同士で争いとなる危険があります。

 

つまり何が言いたいのかといいますと、せっかく遺言を作成するのですから、実現しやすい遺言を考える必要があるということです。

実現しやすい遺言を作成するためには、上記のとおり相続人の遺留分を意識(事前に遺留分を計算しておく必要あり)する必要があります。

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詳細は遺留分減殺請求をまとめた記事でご説明していますが、遺留分を計算するということは、自己の有する財産の種類、価値を正確に認識している必要がありますね。(現金はいくら、預貯金はいくら、不動産の価値は・・・、有価証券は・・・という具合)

そのためにも、財産目録(ざいさんもくろく)を作成しておくことは非常に大切といえます。

財産目録とは、簡単にいえば、自己の有する財産の種類、その価額をリストアップしたものです。

つまり、それぞれの財産とその価値を一つ一つ評価していくことが必要となるのです。

 

上記のように、遺言内容の実現可能性を高める(遺族のトラブルを防止する)ためには、ある程度の法律の知識、資産価値の評価方法などを知っておく必要があります。

これらの作業はなかなか敷居が高いと思います。それでも後のトラブル防止を考えると、どうしても避けて通れるものでもないのが実情です。

よくわからない場合には、最初から専門家に依頼したほうが良いかもしれません。

たとえば、行政書士は遺言書の文案作成と、財産目録の作成を請け負います。

依頼する場合には、費用はかかりますが、あとあと相続人間でトラブルなどが生じた場合に要する時間と費用に比べれば、かえって安く事が運ぶでしょう。

公証人に遺言の作成を依頼する

遺言書作成の流れですが、遺言書作成の当日を迎えるまでに、公証人と面談を重ね、必要書類をもとに遺言書の文案が出来上がります。

当日は、証人とともに公証役場に向かい、遺言書の最終確認をし、問題なければ公証人、証人、遺言者で署名、押印して完成です。

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公正証書遺言の作成手順、手数料、証人、遺言の撤回方法などについて詳しく記事にしています。よろしければご覧ください。

それでは、公証役場にて公証人に遺言の作成を依頼する場合の必要書類について以下でご説明していきます。

事前に準備しておく書類

遺言書作成の当日を迎える前に、事前に準備しておく書類を以下に示します。

提出された書類をもとに、公証人が遺言書の文案を考えることになります。

必要書類 備考
遺言者本人の本人確認資料 印鑑登録証明書又は運転免許証、住基カード等顔写真入りの公的機関の発行した証明書のいずれか一つ。
相続人の戸籍謄本 遺言者と相続人の続柄がわかるもの
住民票(法人の場合には資格証明書) 財産を相続人以外の人に遺贈する場合の受遺者について
登記事項証明書(登記簿謄本) 財産の中に不動産がある場合
固定資産評価証明書又は固定資産税・都市計画税納税通知書中の課税明細書 財産の中に不動産がある場合
証人予定者の氏名、住所、生年月日及び職業をメモしたもの 証人を遺言者の側で用意する場合
財産目録 作成しておくとその後の手続きが円滑に進む
銀行名、口座番号、会社名等を記載したメモ 預貯金、有価証券などについて
契約書や借用書など 債務がある場合など

 

財産目録の提出は必ずではありません。ですが、既にご説明したとおり、作成しておくことをお勧めします。遺言書の作成を機に、自己の財産を再確認する意味で、財産目録を作成しておきましょう。

また、公証人が遺言書を作成する上でも、財産目録があれば、財産の記載漏れや間違い防止になり、正確に手続きが進みます。

遺言書作成の当日に必要なもの

遺言書作成の当日に、公証役場へ持参するものを以下に示します。

必要なもの 備考
遺言者本人の実印、印鑑証明書
証人2人の認印 朱肉をつけて押印するもの

まとめ

公証役場で公正証書遺言を作成する場合の事前準備、必要書類についてご説明しました。

遺言書の作成は、自身が有する財産を確認することから始まります。

公証人は法律上は有効な遺言書を作成してくれますが、その内容までは関知しません。つまり、遺言書の内容が実現するかどうかまでは関与しないのです。

既にご説明しましたとおり、遺留分を侵害する遺言は有効ですが、侵害された相続人から遺留分減殺請求がなされることは大いに考えられます。

無用なトラブルで遺族の関係が壊れてしまわないように、遺言者自身にも法律の知識が要求されます。

難しい場合には、法律家の手を借りることをご検討ください。

 

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