万が一を考えて遺言書を作るのですが、ペットの世話はどうしたら良いのか。誰かに頼むことは可能でしょうか?
今回は、ペットの世話を誰かにお願いしたい場合の、遺言書の文例をご紹介します。
自分が亡くなった後、飼っていたペットのことが心配だ・・・という方は多いと思います。
そんなときは、愛犬や愛猫などの世話を条件に、第三者に財産を与える負担付遺贈の方法があります。
作成に取り掛かる前に、、
あっ、そもそも遺言書の書き方、作成ルールなんて知りません。
大丈夫です。遺言書の作成ルールは、以下の記事にてまとめています。お時間あるときにお読みください。
ペットの世話を条件に財産を遺贈する(負担付遺贈)の文例
それでは、実際に遺言書の文例を見てみましょう。参考にしてみてください。
遺言書の文例を以下に記載します。
遺言書
遺言者 山田太郎は、次の通り遺言する。
第1条
遺言者は、下記の財産を鈴木五郎氏(住所:〇〇、昭和〇年〇月〇日生)に遺贈する。ただし鈴木五郎氏は財産を受け取ることの負担として、遺言者の愛犬ポチの世話を終生行うこととする。
なお、ポチの死後は、「霊園ペットセレモニー(住所〇〇)」に埋葬すること。
〇〇銀行△△支店 普通預金 口座番号××××の200万円
第2条
以下の者を遺言執行者に指定する。
遺言者の長男 山田史郎(昭和〇年〇月〇日生)
付言
私の死後は、愛犬ポチの世話を懇意にしてくださった鈴木五郎氏にお願いすることにしました。そして、資金として200万円を鈴木五郎氏に遺贈することにしました。鈴木五郎氏も承諾済みです。長男の史郎は、遺言執行者として、愛犬ポチを鈴木氏の自宅まで届け、必要に応じて相談にのってあげてください。
平成〇年〇月〇日
静岡県浜松市〇区〇〇町××
遺言者 山田太郎 ㊞
はい、ここで一つポイントです。
財産を取得するのが相続人の場合には「~を相続させる」を使い、相続人以外の第三者の場合には「~を遺贈する」を使います。
見本で言うなら、世話をお願いする相手が相続人でないのであれば、「遺贈する」という言葉を使用します。
ペットの世話をお願いする場合の記載事項
ただペットの世話を任せる代わりに財産を遺贈する、ではなく、ペットの今後について、具体的に記載しておくことが大切です。
例えば埋葬の方法など、ペットが亡くなった後にどうしてほしいのかについても、必要に応じて指定しておくと良いでしょう。
また、実際に遺贈を行い、ペットを相手宅まで運んでもらう必要があるので、遺言執行者を指定しておくとよいでしょう。
とくに独身で相続人がいない場合には、信頼できる第三者(友人、専門家など)を遺言執行者に指定しておくべきでしょう。
ここまで決めておけるのであれば、安心ですね。
注意!ペット自身は遺産を相続できません
そういえば、ペット自身に財産を遺すことってできるのですか?
残念ながら、それはできないのです。
ペットは、飼い主の遺産を相続することができません。
ときどき、自分が亡くなった後、ペットに遺産を相続させたいと考えている方がいらっしゃいますが、ペットに相続権はありません。
ペットは、法律上は「モノ(動産)」として扱われるためです。
つまり、ペットのことが不安であるならば、ペットに遺産を相続させるのではなく、ペットの世話を条件に、第三者に財産を与えるという方法をとる必要があります。
ペットの世話について、相手の承諾を事前に得ること
もしも相手が遺言内容に従ってくれなかったら、どうしましょう…
このような遺言(負担付遺贈)をする場合、最も重要なのが、あらかじめ相手の承諾を得ておくことです。つまり、ペットの世話をお願いする相手の承諾です。
そうでないと、最悪の場合、拒否されることも十分にあり得ます。なぜなら、遺贈は放棄することもできるためです。負担が付いている場合はなおさらです。
生前に相手の承諾を得ておき、遺言を作成すると良いでしょう。
付言に遺産を与える理由を記載するのも大事
財産相続に関すること以外を記載するのが、付言です。付言に書いた内容には法的な効力は生じません。
付言には、例えば家族への感謝や遺言者の気持ちなどを記載します。
被相続人(亡くなられた方)に遺族などの相続人がいる場合には、「ペットの世話を条件に第三者に財産を与えることにした旨」を、付言事項として記載しておきましょう。
相続人でもない知らない人に財産を与えることに納得できない相続人もいるはずだからです。
無用な争いを生まないためにも、気持ちをこめて、丁寧に理由を記載しましょう。
おすすめ遺言に付言として書くべき5項目|家族へ感謝を伝えよう遺言書の文例を豊富にご紹介します
この記事でご紹介した他にも、以下のとおり豊富な文例をご用意しております。ぜひご一緒にご覧くださいませ。
※記事へのリンクはこの下にございます。
- 妻に全財産を相続させる(子供のいない夫婦)
- 妻に全財産を相続させる(子供のいる夫婦)
- 相続権のない内縁の妻(夫)に財産を遺す
- 再婚相手の連れ子に財産を遺す
- 子がいるが父母にも財産を遺したい
- 息子の嫁(または娘の婿)に財産を遺す
- 甥、姪に財産を遺す
- 財産を自治体や法人、団体などへ寄付する
- 非嫡出子(婚外子)を認知して財産を相続させる
- 家族の世話を条件として遺産を与える
- ペットの世話を条件として遺産を与える
- 土地、建物及び建物内の全ての財産(家財)を相続させる
- 区分所有建物(分譲マンション)を相続させる
- 借地権を相続させる、または遺贈する
- 農地を相続させる(農業委員会の許可も)
- 預貯金(預金債権、貯金債権)を相続させる
- 株式、投資信託、国債などの有価証券を相続させる
- 自動車を相続させる
- 絵画、書画、骨董品などを相続させる
- 宝石や貴金属などの高価な物品を換金して相続させる
- 子供の相続分に差がある場合の対処
- 借金などの負債を相続させる割合を指定する
- 祭祀主宰者を指定する
- 遺産を与えたくない推定相続人を廃除する
- 予備的遺言を書く(相続人や受遺者の死亡に備える)
- 遺言執行者を指定する
- 未成年後見人、未成年後見監督人を指定する
- 生命保険金の受取人を変更する
上記文例の一覧は、下記の記事にてまとめています。
文例集【遺言書の文例集】ご遺族で争わず、無効にしない書き方・表現リスト要チェック! 相続、遺言の基礎知識まとめ(カテゴリーごとに解説します)
相続、遺言について深く学ばれたい方はぜひご確認ください。