『わたしの相続で家族が揉めないように、今のうちに遺言書を作ろうと思います。ただ、作り方がわかりません。書き方や訂正のやり方、見本とか教えてほしいです。』

こんな疑問にお答えします。

こんにちは。行政書士の大石です。以下のテーマで解説していきます。

この記事のテーマ

無効にならない正しい遺言書の作り方、書き方を知っていただきます。
さらに、ケース別の遺言書の文例もご紹介します。

この記事では、以下の内容を解説していきます。

  • 遺言書の書き方
  • 遺言書の訂正の方法(誤記があった場合)
  • ケース別、財産別の遺言書文例

【生前対策】無効にしない正しい遺言書の書き方

自筆証書遺言の書き方について具体的に説明します。

自筆証書遺言は指定された形式を守らないと、遺言全体が無効となってしまうので、注意が必要です。

遺言書の書き方①「全文・日付・氏名」を自書する

遺言書の全文、日付、氏名すべてを自書します。自書でないと遺言は無効です。

そのため、ワープロ、パソコンの使用は認められませんし、家族の代筆もダメです。

遺言書は縦書き、横書きどちらでもよいです。

表題は「遺言書」と記載すればわかりやすいでしょう。

用紙、筆記用具はとくに指定されていませんが、できればボールペンや万年筆などで書くのが望ましいです。

理由は、シャープペンや鉛筆では後から第三者による改ざんのおそれがあるためです。

どんな用紙でもいいの?

遺言書はどんな用紙に書いたら良いのか、お悩みの方は以下の記事をどうぞ。

遺言書を「便箋」や「ルーズリーフ」に書くのはアリ?ナシ?

遺言書の書き方② 日付は「年月日」まで正確に書く

〇年〇月〇日までしっかり書きましょう。遺言書の正確な作成日がわからなければなりません。

ですので、3月吉日のような書き方はダメです。吉日が何日かわからないからです。

また、遺言者の日記など他の資料から、遺言書の作成日が仮にわかるような場合でもダメです。

日付は遺言書そのものから特定できなければなりません

どうして年月日まで必要なの?

年月日までなぜ必要なのかと言いますと、例えば遺言者が認知症になり、意思能力がない状態になってしまった場合、出てきた遺言書の作成日が認知症になる前か後かによって、遺言の有効無効に影響するためです。

病気などで意思能力のない者が作成した遺言書は無効です。

他には、同一人物が作成した複数の遺言書が発見された場合には、基本的により新しい遺言書が有効となります。

作成日の比較のため、日付が必要となる場合ですね。

遺言書の書き方③ 氏名をフルネームで自書し、押印する

遺言の本文を記載したら、最後に署名、押印をします。

署名はフルネームでしっかりと書きましょう。

押印は認印でも問題ないですが、市区町村役場に登録した実印が望ましいです。

遺言書の押印に使えないものは?

遺言書には氏名の自書に加えて押印が必要なのですが、押印として認められないものもあります。詳しくは以下の記事をどうぞ。

自筆証書遺言の押印で「認印」「指印(拇印)」「花押」はアリ?ナシ?

遺言書の書き方④ 加除訂正の方法

本文を書き直したい、文字を削ったり、追加したりしたい、という場合には決められたルールがあるので守りましょう。

それぞれについて説明していきます。

訂正の方法

訂正の方法について解説します。以下のようにします。

  • 訂正箇所を二重線で消し、訂正後の文字を書き込む
  • 訂正箇所の付近(隣)に押印する
  • 欄外に「〇字削除、〇字加入」と記載して署名する

「〇字削除、〇字加入」の〇には字数を入れます。

押印に使う印章は、遺言書本文の最後に署名、押印したものと同じ印章を使います。

削除の方法

削除の方法について解説します。以下のようにします。

  • 削除する文字を二重線で消す
  • 削除した箇所の付近(隣)に押印する
  • 欄外に「〇字削除」と記載し署名する

削除が複数行に渡る場合は、それぞれの行に押印します。

追加の方法

追加の方法を解説します。以下のようにします。

  • 追加したい箇所に文字を書き込む
  • 追加箇所の付近(隣)に押印する
  • 欄外に「〇字加入」と記載して署名する

修正箇所が多くなってしまった…

修正箇所があまりに多くなってしまう場合には、遺言書そのものを新しく作り直した方が良いです。

上記のとおり、加除訂正をするたびに、修正内容や修正文字数、署名などの記載が増えていくので、これらが多くなると遺言書が読みにくくなってしまいます。

ここがポイント!

修正箇所が複数になった場合、「〇字削除、〇字加入」と署名の記載については、遺言書の最後の欄外にまとめて記載してもかまいません。

その場合は、修正した行がわかるように、「〇行目、〇字削除、〇字加入」といったように修正した行番号を記載し、最後に署名をしましょう。

参考までに、自筆証書遺言について規定する民法条文を以下に示します。

(自筆証書遺言)
第968条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
2 自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

遺言書の書き方⑤ 封筒について

遺言書が完成したら封筒に入れ、封をします。こうすることで、第三者による変造・偽造の防止に役立ちます。

封印に使う印章は、遺言書で署名、押印したものと同じものを使います。

以下に封筒の見本を示します。

このように、封筒の表面には「遺言書」と書きましょう。

封筒の裏面には、作成年月日と遺言者の氏名を書いておけば良いでしょう。

さらに、遺言書の裏面に、「遺言書は開封せずに、家庭裁判所の検認を受けてください」と記載しておくと良いです。

遺言書の検認とは?

自筆証書遺言を発見した遺族は、すみやかに家庭裁判所での検認を受けなければなりません。

検認とは、遺言書の証拠保全手続きといえます。

検認についての詳細、具体的な手続きについては、以下の記事をご覧ください。

検認とは?遺言書の検認手続き、裁判所への申立書の書き方、必要書類を解説

遺言書を封筒に入れるデメリット

作成した遺言書を封筒に入れ、しっかりと封をすることは大切ですが、実はメリットとデメリットがあります。

詳しく知りたい方は、以下の記事をどうぞ。

⇒ 遺言書は「封筒なし」だと無効?封印されていないケースは?開封厳禁の場合

遺言書の書き方⑥ 遺言書の見本を見てみよう!

一通り自筆証書遺言の作成方法をご説明しましたので、ここで自筆証書遺言の簡単な見本を以下に示します。

見本の遺言書の全文が自書されたものとお考えください。

なお、見本では訂正箇所をわかりやすく赤字で記載しましたが、赤字でなくても問題ありません。

(画像クリックで拡大表示します)

見本で、妻に不動産を相続させていますが、不動産の情報は不動産の登記事項証明書に記載されている通りに書きましょう。

不動産を相続させる書き方

遺言書で、不動産を相続させる場合の書き方について、くわしくは以下の記事をご覧ください。

【遺言書の文例】土地、建物及び建物内の全ての財産(家財)を相続させる

【重要】自筆証書遺言の方式緩和「財産目録の自書」が不要に!

平成31年(2019年)の1月13日から、自筆証書遺言の方式緩和(財産目録の自書不要)が施行されました。

民法の相続法が改正されたためです。

これにより、これまで自筆証書遺言(上でご紹介してきた遺言書です)を作成する場合には、財産に関する記載を含めて、すべて自書する必要がありました。

ですが、財産に関する記載(財産目録)については、自書する必要がなくなりました。

よって、パソコンで作成することも可能となりました。

自書の何が問題だったの?

所有する財産が多岐にわたる場合、遺言書の作成が大変負担になっていました。

上でご紹介した遺言書の見本をもう一度見てみてください。不動産に関する記載だけで、けっこう書かなければいけない内容がありますよね。

これ以外にも、預貯金や株式、国債などの有価証券など、財産の種類が増えることで、財産を特定するために書かなければならない情報がどんどん増えていきます。

このことが原因で、せっかく遺言書を作ろうと思っても気が進まなかったり、せっかく作成しても誤記があって遺言を執行できなかったりと、問題は多々あったわけです。

方式緩和にも新ルールが!

自筆証書遺言の方式緩和で、守らなければならないルールが存在します。詳しくは、以下の記事をご確認ください。

自筆証書遺言の方式緩和『財産目録の手書き不要』、施行日はいつ?見本あり

【ケース別】遺言書の書き方・文例を多数ご紹介します

ここまでご紹介してきたのは、あくまで超基本的な遺言書の文例となります。

ですが、実際には所有する財産の種類や、相続人への振り分け方など、様々な点に考慮しなければなりません。

また、単に財産を振り分けるだけでなく、どのように書けば遺族が争わずにすむか、これも大変重要な点です。

様々なケース、財産の種別に対応した遺言書の書き方、文例をお知りになりたい方は、以下の記事をご覧ください。

【様々な財産・ケース別】遺言書の文例・サンプル集、書き方(見本付き)

【参考】自筆証書遺言をめぐるトラブル(調停・訴訟)とは?

被相続人の死後、遺言書をめぐり相続人間でトラブルが発生することが多々あります。

このような場合、まずは相続人同士での話し合いで解決を試みますが、話し合いがこじれ、争いとなってしまうことも少なくありません。

そうした場合、調停や訴訟といった裁判手続きへ進むこともあります。

自筆証書遺言についてのトラブルとして、次のような点が主張されることが多いです。

  • 遺言者に遺言能力がなかった
  • 遺言書が必要な方式を満たしていない
  • 詐欺や強迫により仕方なく遺言書が作成された

自筆証書遺言の方式として、全文、日付、氏名を自筆で書く必要がありました。

ここで筆跡が問題となることがあります。「本人の筆跡ではない!」と主張する相続人が現れるためです。

こうなると、相続人同士での話し合いで解決するのは困難となり、裁判所の調停、訴訟の手続きへと進むことになります。

まとめ

自筆証書遺言の書き方、方式についてご説明しました。訂正の仕方まで細かく決まりがあることに、驚かれたかもしれません。

この記事でご説明してきたように、遺言書はどのように作成してもよいわけではありません。しっかりとしたルールがあるのです。

せっかくの遺言書が形式上の不備で無効となってしまうことがないように、作成される際には注意していただければと思います。