遺言書を書く人『遺言書を作ろうと思っています。
そこで、「遺言書の効力発生時期」「遺言能力」「遺言でできること」を詳しく知りたいです。
あと、私に遺言書を作成する遺言能力があるのか、その判断基準も併せて教えて下さい。』

このような疑問にお答えします。

こんにちは。行政書士の大石です。以下のテーマで解説していきます。

記事のテーマ

  • 遺言書の効力が発生する時期について
  • 遺言能力とは何かとその判断基準
  • 遺言でできること(法的効力が発生する事項)

<ケース別!>遺言書の書き方・文例

様々なケース別、財産の種別に遺言書の書き方、文例をご紹介しています。どう書いたら良いのかお困りならご覧ください。

【様々な財産・ケース別】遺言書の文例・サンプル集、書き方(見本付き)

遺言の効力発生はいつから?遺言能力と判断基準、遺言で「できること」

遺言書を作成されるにあたり、以下の事項に関心があることと思います。

  • 遺言の効力が生じるのはいつからか
  • 遺言書を書くのに必要な「遺言能力」とは何か
  • 遺言能力があるかどうかの判断基準
  • 遺言でできること(法的効力が発生する事項)

この記事では、多くの方が関心を持つであろう上記の内容を詳しく解説していきます。少し長くなりますが、大変重要な事項なので、ぜひ最後までお付き合いください。

遺言能力とは?

遺言を有効に作成するためには、遺言者に「遺言能力」がなければなりません。遺言能力とは、以下に示すような能力を言います。

遺言をするために必要な、行為の結果を弁識、判断しうるに足りる意思能力

つまり簡単に言いますと、遺言を書いたことで、その後どのような結果となるのか(法的効力が生じるのか)を、遺言を書く当時に理解できるだけの能力ということです。

遺言書の作成当時、この能力(理解力・判断力)がなければ、遺言能力がないことになるのです。

民法963条に次のとおり規定されています。

第九百六十三条 遺言者は、遺言をする時においてその能力を有しなければならない。

(出典:e-gov-民法)

遺言能力がない方が書いた遺言は無効です。

遺言能力の判断基準は?【長谷川式簡易知能評価スケール】

まず、遺言能力が問題となるケースでは、高齢による認知症のり患が一般的に考えられます。

そこで、認知症の可能性があるかどうかを簡易的に調べる方法として、「長谷川式簡易知能評価スケール」というものがあります。全9問の設問から構成されるもので、満点は30点であり、20点以下の場合は認知症の可能性を疑うこととされています。

しかし、あくまで認知症の可能性を簡易的に調べるものであるので、得点が低かったからと言って必ず認知症であるということではありません。ただし、その場合には病院で検査してみるというのも良いでしょう。

長谷川式簡易知能評価スケールの概要、設問内容、配点などの詳細はこちらのページ(外部サイト)で詳しく解説されています。

公正証書遺言の無効が争われた公正証書遺言無効確認等請求(平成13年10月10日)でも、遺言者の遺言能力について争点となり、長谷川式簡易知能評価スケールの得点について言及されています。

遺言能力の担保として「医師の診断書」を準備する

遺言書作成当時に遺言者本人に遺言能力があったことを担保するために、念のため医師の診断書をとっておくことも効果的です。

将来、相続人同士で遺言の無効が争われる可能性が少しでもある場合、万全を期しておきたいところです。かかりつけ医があれば、遺言書作成当時の遺言者の意思能力、判断能力を診断してもらい、診断書を作成してもらうことが有効となります。

仮に争いとなった場合、最終的に判断するのは裁判官ですが、相続において利害関係のない医師の診断書があれば、有効な証明資料として提出できます。

遺言の効力発生はいつから?

遺言書を作成した場合、その効力はいつから発生するのかをご説明します。

遺言の効力は、遺言者の生前は効力を発することはなく、遺言者の死亡によって法的な効力が生じます。

以下の民法985条に規定されています。

(遺言の効力の発生時期)
第九百八十五条 遺言は、遺言者の死亡の時からその効力を生ずる。
2 遺言に停止条件を付した場合において、その条件が遺言者の死亡後に成就したときは、遺言は、条件が成就した時からその効力を生ずる。

(出典:e-gov-民法)

なお、遺言に条件がついていて、遺言者の死後に条件が成立した場合には、その遺言の効力はその条件が成立した時点で生じます。

たとえば、「長男の山田太郎が大学に合格したら、私の自動車を相続させる」のようなケースです。

遺言の法的効力・できること

ここからは遺言の法的効力と、遺言でできることについて解説をしていきます。ここでご紹介する事項を遺言書に書くことで、法的な効力が発生します。

遺言でできること① 法定相続に関すること

法定相続に関して、遺言でできることとして以下の事項が挙げられます。

  • 推定相続人の廃除(民法893条)
  • 推定相続人の廃除の取り消し(民法894条2項)
  • 相続分の指定(民法902条)
  • 遺産分割方法の指定、遺産分割の禁止(民法908条)
  • 共同相続人の担保責任に関する別段の定め(民法914条)

1つずつ詳しく解説していきます。

推定相続人の廃除とその取消について

遺言者は推定相続人から相続権をはく奪する「廃除」を行うことができます。廃除は遺言者本人が生前に家庭裁判所に申立を行うほか、遺言によって行うこともできます。

推定相続人というのは、現時点で遺言者が亡くなったと仮定した場合に、相続人となるはずの人を表します。廃除されると、その者は相続開始後も、遺産を相続できなくなります。

(遺言による推定相続人の廃除)
第八百九十三条 被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは、遺言執行者は、その遺言が効力を生じた後、遅滞なく、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければならない。この場合において、その推定相続人の廃除は、被相続人の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。

(出典:e-gov-民法)

また、一度行った廃除の申立を取り消したい場合には、推定相続人廃除の取り消しを遺言で行うことも可能です。

(推定相続人の廃除の取消し)
第八百九十四条 被相続人は、いつでも、推定相続人の廃除の取消しを家庭裁判所に請求することができる。
2 前条の規定は、推定相続人の廃除の取消しについて準用する。

(出典:e-gov-民法)

相続権をはく奪する制度である廃除、相続欠格について、その要件や該当事由、手続きなどをくわしく解説しています。

相続欠格と廃除の違いは?相続欠格事由と廃除の要件、手続きを解説!

相続分の指定、遺産分割方法の指定について

遺言者は遺言で、遺産の取り分である相続分を指定することができます。たとえば、「妻には全財産の2/3を、長男には1/3を相続させる」というような具合です。

(遺言による相続分の指定)

第九百二条 被相続人は、前二条の規定にかかわらず、遺言で、共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる。
2 被相続人が、共同相続人中の一人若しくは数人の相続分のみを定め、又はこれを第三者に定めさせたときは、他の共同相続人の相続分は、前二条の規定により定める。

(出典:e-gov-民法)

また、遺言で遺産分割方法を指定することもできます。たとえば、「長男には不動産を、長女には預金1000万円を相続させる」という具合です。

(遺産の分割の方法の指定及び遺産の分割の禁止)
第九百八条 被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定め、若しくはこれを定めることを第三者に委託し、又は相続開始の時から五年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる。

(出典:e-gov-民法)

条文にあるとおり、相続開始から5年を超えない期間において、遺産分割を禁止させる旨を遺言に書くこともできます。

共同相続人の担保責任について

民法911条、912条、913条ではそれぞれ「共同相続人間の担保責任」「債権についての共同相続人間の担保責任」「共同相続人間で担保責任を負う者が無資力の場合の責任分担」を規定しています。

(共同相続人間の担保責任)
第九百十一条 各共同相続人は、他の共同相続人に対して、売主と同じく、その相続分に応じて担保の責任を負う。

(遺産の分割によって受けた債権についての担保責任)
第九百十二条 各共同相続人は、その相続分に応じ、他の共同相続人が遺産の分割によって受けた債権について、その分割の時における債務者の資力を担保する。
2 弁済期に至らない債権及び停止条件付きの債権については、各共同相続人は、弁済をすべき時における債務者の資力を担保する。

(資力のない共同相続人がある場合の担保責任の分担)
第九百十三条 担保の責任を負う共同相続人中に償還をする資力のない者があるときは、その償還することができない部分は、求償者及び他の資力のある者が、それぞれその相続分に応じて分担する。ただし、求償者に過失があるときは、他の共同相続人に対して分担を請求することができない。

(出典:e-gov-民法)

共同相続人間における担保責任とは、遺産分割後、一部の相続人が取得した権利や目的物にだけ欠陥があったような場合、他の共同相続人と欠陥を担保し合う仕組みです。

イメージとしては、欠陥による損失をカバーし合う(助け合う)という感じですね。

上記の民法911条から913条の規定は、被相続人(亡くなられた方)が遺言で別の意思を表明していた場合には適用されません。

(遺言による担保責任の定め)
第九百十四条 前三条の規定は、被相続人が遺言で別段の意思を表示したときは、適用しない。

(出典:e-gov-民法)

遺言でできること② 財産処分に関すること

財産処分に関して、遺言でできることとして以下の事項が挙げられます。

  • 包括遺贈、特定遺贈(民法964条)
  • 受遺者の相続人による遺贈の承認または放棄に関する別段の定め(民法988条)
  • 受遺者の死亡による遺言の執行に関する別段の定め(民法994条2項)
  • 受遺者による果実の取得に関する別段の定め(民法992条)
  • 遺贈の無効または失効の場合の財産の帰属に関する別段の定め(民法995条)
  • 相続財産に属さない権利の遺贈における遺贈義務者の責任に関する別段の定め(民法997条2項)
  • 第三者の権利の目的である財産の遺贈に関する別段の定め(民法1000条)
  • 負担付遺贈の放棄に関する別段の定め(民法1002条2項)
  • 負担付遺贈の受遺者の免責に関する別段の定め(民法1003条)

包括遺贈、特定遺贈

遺贈とは、遺言により遺言者の財産を無償で譲る行為をいいます。

包括遺贈とは、「全財産を遺贈する」「全財産の1/3を遺贈する」というように、財産の割合で遺贈を行うことです。特定遺贈とは、「不動産Aを遺贈する」のように特定の財産を指定して行う遺贈です。

(包括遺贈及び特定遺贈)
第九百六十四条 遺言者は、包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処分することができる。

(出典:e-gov-民法)

受遺者の相続人による遺贈の承認または放棄に関する別段の定め

遺言で遺贈をすることができますが、遺贈の相手(受遺者)が遺贈の承認、または放棄をしないまま亡くなった場合、その相続人が自己の相続分の範囲で、遺贈の承認または放棄をすることができます。

ただし、もしも遺言者が「私の死後、受遺者が亡くなった場合には、遺贈の目的物は私の息子に相続させる」のような意思表示を遺言でしていた場合には、それに従うことになります。

(受遺者の相続人による遺贈の承認又は放棄)
第九百八十八条 受遺者が遺贈の承認又は放棄をしないで死亡したときは、その相続人は、自己の相続権の範囲内で、遺贈の承認又は放棄をすることができる。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

(出典:e-gov-民法)

受遺者の死亡による遺言の執行に関する別段の定め

遺贈の相手である受遺者が、遺言者よりも前に亡くなっていた場合、この遺贈は効力を生じません。遺贈の相手方がいなくなったので当然の結果でしょう。

また、条件付きで遺贈がされていた場合、その条件が成立する前に受遺者が亡くなった場合も同様です。

ただし、遺言者が遺言で「受遺者が受け取れない場合には、別の〇〇に遺贈する」というような別の意思表示が遺言でされている場合には、それに従うことになります。

(受遺者の死亡による遺贈の失効)
第九百九十四条 遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力を生じない。
2 停止条件付きの遺贈については、受遺者がその条件の成就前に死亡したときも、前項と同様とする。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

(出典:e-gov-民法)

受遺者による果実の取得に関する別段の定め

果実とは、「利息」「家賃」などの、物から収益される利益のことをいいます。

遺贈された物から果実が生じるような場合には、受遺者がその遺贈の実行を遺贈義務者に対して請求できるようになった時点から、遺贈の目的物から生じた果実も受遺者のものとすることができます。

原則としては上記のとおりですが、遺言者が遺言でそれと異なる意思表示をしていた場合にはそれに従います。たとえば、遺贈した物が不動産の場合は、果実(賃料)は受遺者でなく配偶者にあげたい、といった具合です。

(受遺者による果実の取得)
第九百九十二条 受遺者は、遺贈の履行を請求することができる時から果実を取得する。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

(出典:e-gov-民法)

遺贈の無効または失効の場合の財産の帰属に関する別段の定め

何らかの理由で遺贈が効力を生じなかったとき、または受遺者が放棄した場合には、その遺贈は効力を失うことになります。

この場合、原則として遺贈の対象とされていた物は、遺贈者(被相続人)の相続人の所有となります。

ですが、「山田さんに遺贈できなかった場合には、鈴木さんに遺贈する」のような別段の意思表示が遺言書でされていた場合には、それに従うことになります。

(遺贈の無効又は失効の場合の財産の帰属)
第九百九十五条 遺贈が、その効力を生じないとき、又は放棄によってその効力を失ったときは、受遺者が受けるべきであったものは、相続人に帰属する。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

(出典:e-gov-民法)

相続財産に属さない権利の遺贈における遺贈義務者の責任に関する別段の定め

通常、遺贈の目的物が遺贈者(遺言者)の所有に属さない場合には、その遺贈は無効となります。つまり、他人の物を遺贈するとしたようなケースです。

ですが遺贈者が、その目的物が自分の財産に属するか否かを問わず遺贈の対象としたような場合には、その意思に従うことになります。

たとえば、「不動産をお世話になった山田氏に遺贈する。不動産は現在、私の長男の所有だが、私の相続人はそれを買い取ってでも山田氏に遺贈すること」というような遺言がされている場合です。

このような遺言がされていた場合、遺贈義務者(相続人)はその権利を取得して受遺者に引き渡す義務が生じます。

そして、遺贈義務者が遺贈の対象物を入手できない場合や、取得に莫大な費用がかかるような場合は、遺贈義務者はその対象物の時価相当額を受遺者に支払う義務が生じます。

ただし、遺言者が遺言にそれとは異なる別段の意思を表示していた場合には、それに従います。

(相続財産に属しない権利の遺贈)
第九百九十六条 遺贈は、その目的である権利が遺言者の死亡の時において相続財産に属しなかったときは、その効力を生じない。ただし、その権利が相続財産に属するかどうかにかかわらず、これを遺贈の目的としたものと認められるときは、この限りでない。

第九百九十七条 相続財産に属しない権利を目的とする遺贈が前条ただし書の規定により有効であるときは、遺贈義務者は、その権利を取得して受遺者に移転する義務を負う。
2 前項の場合において、同項に規定する権利を取得することができないとき、又はこれを取得するについて過分の費用を要するときは、遺贈義務者は、その価額を弁償しなければならない。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

(出典:e-gov-民法)

第三者の権利の目的である財産の遺贈に関する別段の定め

遺贈の目的物に第三者の権利が付いている場合があります。たとえば、遺贈する不動産に抵当権が付いていたり、建物に賃借権が付いていたりする場合です。

この場合、受遺者は遺贈義務者に対して、第三者の権利(抵当権や賃借権など)の消滅を請求することができません。つまり、「あの土地には抵当権が付いているので、それを消滅させた上で私に渡してください」という請求はできません。

ただし、遺言者が遺言で「甲不動産の抵当権を消滅させた上で、山田氏に遺贈すること」のような別段の意思が表明されていた場合には、それに従います。

(第三者の権利の目的である財産の遺贈)
第千条 遺贈の目的である物又は権利が遺言者の死亡の時において第三者の権利の目的であるときは、受遺者は、遺贈義務者に対しその権利を消滅させるべき旨を請求することができない。ただし、遺言者がその遺言に反対の意思を表示したときは、この限りでない。

(出典:e-gov-民法)

負担付遺贈の放棄に関する別段の定め

何かしらの負担を負わせる代わりに財産を遺贈することを負担付遺贈といいます。受遺者は、遺贈の価額を超えない範囲で、この負担を負うことになります。

負担付遺贈の受遺者が遺贈を放棄した場合には、負担によって利益を受ける者はみずから受遺者となることができます。ただし、遺言者がそれとは異なる別段の意思を遺言で表明した場合には、それに従うことになります。

(負担付遺贈)
第千二条 負担付遺贈を受けた者は、遺贈の目的の価額を超えない限度においてのみ、負担した義務を履行する責任を負う。
2 受遺者が遺贈の放棄をしたときは、負担の利益を受けるべき者は、自ら受遺者となることができる。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

(出典:e-gov-民法)

負担付遺贈の受遺者の免責に関する別段の定め

限定承認をした場合や、遺留分侵害額の請求があった場合には、遺贈の価額が目減りすることもあります。

負担付遺贈の場合には、遺贈の価額が目減りした場合、負担すべき義務もその割合で免除されることになります。

ただし、遺言者が遺言で上記に関して別段の意思を表示したときは、それに従います。

(負担付遺贈の受遺者の免責)
第千三条 負担付遺贈の目的の価額が相続の限定承認又は遺留分回復の訴えによって減少したときは、受遺者は、その減少の割合に応じて、その負担した義務を免れる。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

(出典:e-gov-民法)

遺言でできること③ 遺言の執行、撤回に関すること

遺言の執行、撤回に関して、遺言でできることとして以下の事項が挙げられます。

  • 遺言執行者の指定(民法1006条1項)
  • 遺言執行者の復任権に関する別段の定め(民法1016条1項)
  • 遺言執行者が複数人いる場合の任務執行に関する別段の定め(民法1017条1項)
  • 遺言執行者の報酬に関する別段の定め(民法1018条1項)
  • 遺言の撤回(民法1022条)

遺言執行者の指定

遺言者は遺言により、遺言執行者を指定することができます。遺言執行者は、遺言内容を実現する者です。

遺言で子の認知や推定相続人の廃除を行う場合、必ず遺言執行者を選任する必要があります。

(遺言執行者の指定)
第千六条 遺言者は、遺言で、一人又は数人の遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に委託することができる。
2 遺言執行者の指定の委託を受けた者は、遅滞なく、その指定をして、これを相続人に通知しなければならない。
3 遺言執行者の指定の委託を受けた者がその委託を辞そうとするときは、遅滞なくその旨を相続人に通知しなければならない。

(出典:e-gov-民法)

遺言執行者の権限と義務、職務の内容、報酬などをくわしく解説しています。

遺言執行者とは?権限と義務、職務内容、選任申立から報酬を解説!

遺言執行者の復任権に関する別段の定め

遺言執行者は自分の責任で第三者にその任務を行わせることができます。

遺言執行者に選任されるのは法律の専門家だけではなく、被相続人の配偶者や長男でも良いのです。すると、法律の知識がなく、職務が滞るケースも想定されます。

そのため、必要に応じて弁護士などの法律の専門家に任務を行わせる復任権が認められているわけです。

ただし、遺言者が遺言で別段の意思表示をしていた場合、それに従うことになります。

(遺言執行者の復任権)
第千十六条 遺言執行者は、自己の責任で第三者にその任務を行わせることができる。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
2 前項本文の場合において、第三者に任務を行わせることについてやむを得ない事由があるときは、遺言執行者は、相続人に対してその選任及び監督についての責任のみを負う。

(出典:e-gov-民法)

遺言執行者が複数人いる場合の任務執行に関する別段の定め

遺言執行者を複数人選任することも可能です。遺言執行者が複数の場合には、執行については過半数の決で決めることになります。

ですが、遺言者が遺言で別段の意思表示をしていれば、その方法に従います。

(遺言執行者が数人ある場合の任務の執行)
第千十七条 遺言執行者が数人ある場合には、その任務の執行は、過半数で決する。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
2 各遺言執行者は、前項の規定にかかわらず、保存行為をすることができる。

(出典:e-gov-民法)

遺言執行者の報酬に関する別段の定め

遺言執行者が事務を完了した場合の報酬ですが、基本的には家庭裁判所が審判により決定します。ですが、遺言者が遺言で別段の定めをしていた場合には、それに従います。

たとえば、「山田氏が遺言執行を完了した場合には、100万円を支払うこと」のように定められていた場合です。

(遺言執行者の報酬)
第千十八条 家庭裁判所は、相続財産の状況その他の事情によって遺言執行者の報酬を定めることができる。ただし、遺言者がその遺言に報酬を定めたときは、この限りでない。
2 第六百四十八条第二項及び第三項の規定は、遺言執行者が報酬を受けるべき場合について準用する。

(出典:e-gov-民法)

遺言の撤回

遺言者は一度作成した遺言書を、いつでも撤回できます。撤回の方法は、もう一度新しく遺言書を作成することで行います。基本的に、作成日付の新しい遺言書が有効となるためです。

(遺言の撤回)
第千二十二条 遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。

(出典:e-gov-民法)

遺言の撤回について詳しく解説しています。

公正証書遺言の撤回は要注意!撤回の撤回はできない?

遺言でできること④ 遺留分に関すること

遺留分に関して、遺言でできることとして以下の事項が挙げられます。

  • 受遺者または受贈者の負担額に関する別段の定め(民法1047条)

受遺者または受贈者の負担額に関する別段の定め

遺言者が遺言で遺贈をしたり、生前に行った贈与によって相続人の遺留分が侵害されていた場合には、遺贈の相手(受遺者)または贈与の相手(受贈者)に対して、遺留分侵害額の請求を行うことができます。

遺留分とは簡単にご説明しますと、相続人に保障された最低限の遺産の取り分のことです。遺留分侵害額の請求をすると、保障された遺留分の限度で金銭で取り戻すことが可能です。

遺贈が複数の相手にされている、または生前贈与が同時に複数の者にされている場合、遺留分侵害額の請求ができる額は、受遺者または受贈者が受けた価額の割合に応じて決まります。

ですが、遺言者が遺留分侵害額請求の順序や額について別段の意思表示をしていた場合、それに従うことになります。

(受遺者又は受贈者の負担額)
第千四十七条 受遺者又は受贈者は、次の各号の定めるところに従い、遺贈(特定財産承継遺言による財産の承継又は相続分の指定による遺産の取得を含む。以下この章において同じ。)又は贈与(遺留分を算定するための財産の価額に算入されるものに限る。以下この章において同じ。)の目的の価額(受遺者又は受贈者が相続人である場合にあっては、当該価額から第千四十二条の規定による遺留分として当該相続人が受けるべき額を控除した額)を限度として、遺留分侵害額を負担する。
一 受遺者と受贈者とがあるときは、受遺者が先に負担する。
二 受遺者が複数あるとき、又は受贈者が複数ある場合においてその贈与が同時にされたものであるときは、受遺者又は受贈者がその目的の価額の割合に応じて負担する。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

(出典:e-gov-民法)

遺留分とは何か、遺留分減殺請求のやり方について詳しく解説しています。

相続で損しない!遺留分の割合と計算、減殺請求の方法・書式、期限を解説!

遺留分規定の改正について

民法の改正により、遺留分減殺請求に関する規定が改正されます。これにより、遺留分減殺請求は「遺留分侵害額請求」に変わります。詳細は以下の記事で解説しています。

遺留分侵害額請求権とは?遺留分と遺留分侵害額の計算方法をわかりやすく解説

遺言でできること⑤ 身分上の事項(家族関係)に関すること

身分上の事項(家族関係)に関して、遺言でできることとして以下の事項が挙げられます。

  • 遺言による子の認知(民法781条2項)
  • 未成年後見人の指定(民法839条1項)
  • 未成年後見監督人の指定(民法848条)

遺言による子の認知

子の認知は遺言によって行うこともできます。その場合には、必ず遺言執行者を選任する必要があります。嫡出でない子を認知することで、子は嫡出子としての身分を取得し、父親を相続できるようになります。

(認知の方式)
第七百八十一条 認知は、戸籍法の定めるところにより届け出ることによってする。
2 認知は、遺言によっても、することができる。

(出典:e-gov-民法)

胎児、未成年者、成年の子の認知とやり方、認知届の書き方について解説してします。

胎児・未成年・成年の子の認知のやり方|認知届の書き方

未成年後見人の指定

子に対して最後に親権を行使する者(基本的には親)は、遺言で子のために未成年後見人を指定することができます。ただし、その者が子に対する財産管理権を有していない(失っている)場合には、未成年後見人の指定はできません。

(未成年後見人の指定)
第八百三十九条 未成年者に対して最後に親権を行う者は、遺言で、未成年後見人を指定することができる。ただし、管理権を有しない者は、この限りでない。
2 親権を行う父母の一方が管理権を有しないときは、他の一方は、前項の規定により未成年後見人の指定をすることができる。

(出典:e-gov-民法)

親権とはどんな権利から構成されるのか、親権の喪失、停止、辞任、未成年後見について詳しく解説しています。

【親権って何?】親権の喪失、停止、辞任、未成年後見を【易しく】

未成年後見監督人の指定

未成年者に対して最後に親権を行う者など、未成年後見人を遺言で指定できる者は、未成年後見監督人についても遺言で指定することができます。未成年後見監督人は、未成年後見人の事務を監督する役割です。

(未成年後見監督人の指定)
第八百四十八条 未成年後見人を指定することができる者は、遺言で、未成年後見監督人を指定することができる。

(出典:e-gov-民法)

遺言でできること⑥ その他

その他、遺言でできることとして以下の事項が挙げられます。

  • 祭祀主宰者の指定(民法897条)
  • 特別受益の持ち戻しの免除(民法903条3項)
  • 一般財団法人の設立(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律152条2項)
  • 信託の設定(信託法3条2項)
  • 保険金の受取人の変更(保険法44条)

祭祀主宰者の指定、保険金受取人の変更についての遺言書の書き方、文例を解説しています。

【様々な財産・ケース別】遺言書の文例・サンプル集、書き方(見本付き)

特別受益の持ち戻し免除については、以下の記事で詳しく解説しています。

特別受益とは?生前贈与で特別受益者?持ち戻し免除・遺留分の計算方法を解説!

まとめ

遺言書の作成に必要な遺言能力とその判断基準、遺言書の効力発生時期、遺言でできることをご説明してきました。遺言書とは、亡くなる前に作成するものではなく、元気なうちに将来を見据えて作成するものです。

高齢になり、判断能力が衰えてくるのは誰でも同じで、その状態で作成された遺言書は遺言能力の有無が争いとなる可能性があります。可能なかぎり、お早めに作成しておかれることをおすすめします。