遺言信託(ゆいごんしんたく)という言葉をご存知でしょうか。
最近よく耳にする、この遺言信託ですが、簡単にご説明すれば、信託銀行に遺言書作成から遺言書の保管、遺言執行まで一通りの手続きを依頼すること、の意味で広く知られています。
この遺言信託、利用することのメリット・デメリットは何があるか。
また一番気になるのは、やはり手数料、報酬額ですよね。
今回は、遺言信託のメリット・デメリットと手数料・報酬額についてご紹介します。
そして、これらの手続きを信託銀行ではなく、行政書士に依頼する場合の報酬額にも触れます。
最終的に遺言信託を利用すべきか否かを判断する材料としていただければと思います。
- 遺言信託とは何か
- 遺言信託を利用するメリット・デメリット
- 遺言信託の利用にかかる手数料・報酬額
- 行政書士に依頼した場合の報酬額
遺言信託とは何か
遺言信託とは何かについてご説明します。
まず、遺言によって、実際に遺言の内容を忠実に実行してくれる「遺言執行者」を指定することができます。
この遺言執行者に信託銀行を指定しておく(信託銀行と契約しておく)ことで、相続が始まったときには信託銀行が遺言に記載されている通りに遺言執行の手続きなど行います。
これが遺言信託です。
ちなみに遺言執行の主な手続きとしては、遺言書に記載された通りに財産を相続人に分配したり、銀行関係の手続き(相続人への振り込み、名義変更など)などです。
信託銀行とは、銀行業と信託業の両方を営む会社のことです。[遺言信託 銀行]などとインターネットで検索すれば、有名どころが検索結果に出てきますよ。
遺言信託のメリットとデメリットを紹介
さて、ここでは遺言信託を利用する場合のメリットとデメリットを解説していきます。ご紹介するメリット・デメリットの内容をよく理解し、実際に利用される場合の参考にしてみてください。
遺言信託利用のメリット
遺言信託を利用するメリットには何があるでしょうか。
信託銀行から取り寄せたパンフレットには、おおむね次のような内容が記載されています。
- 財産に関する遺言書作成の相談ができる
- 作成した遺言書の保管をしてもらえる
- 複雑な相続手続きを代行してもらえる
- 相続開始時に遺言執行を代行してもらえる
一度でも相続を経験された方はご存知と思いますが、相続の手続きはかなり複雑で難しいといえます。ほとんどの方が専門家に依頼するのは、これが理由です。
その点からすると、信託銀行が遺言作成から執行まで一括で面倒をみてくれるのは、たしかに魅力的と思えます。
遺言信託利用のデメリット
それでは、遺言信託を利用することのデメリットも見てみましょう。
次のようなことが考えられます。
- 申し込み時の基本手数料、遺言執行後に支払う報酬額が高い
- 相続人間で遺産分割に争いが生じている場合や、紛争になる可能性が高い場合、信託銀行は遺言執行者になれない
- 相続税の申告など税に関することは別途税理士に依頼する必要がある
やはり、一番気になるのが基本手数料と報酬額についてだと思います。それについては、以降でご説明します。
さらに、相続手続きのハードルを上げている原因として、戸籍謄本(改製原戸籍・除籍謄本を含む)や住民票、不動産登記事項証明書などの各種書類の収集があります。
普段耳慣れないこれらの書類は、遺言信託の申込者が自ら収集しなければなりません。
遺言信託の基本手数料・報酬額【高額は本当か?】
実際に2つの有名な信託銀行からパンフレットを取り寄せ、基本手数料と報酬額を確認してみました。
- 基本手数料:遺言信託の申し込み(契約)時に、申込者が支払う
- 報酬:実際に相続が開始し、遺言が執行された後に、相続人が支払う
おおむね、次のような2つのプランがあります
プラン1:基本手数料が安く、報酬額が高い
プラン2:基本手数料が高く、報酬額が安い
つまり、申込者が多く払うか、相続人が多く払うかの違いといえるでしょう。(業務内容は全く同じです。)
一般的な基本手数料と報酬額は、大体つぎのとおりです。
プラン1:基本手数料(30万円~)、報酬額(100万円~)
プラン2:基本手数料(80万円~100万円)、報酬額(30万円~)
さらに、遺言書保管料として、年間6,000円程度かかります。
上記に表示したのは、最低報酬額となります。つまり、どんなに安くても(遺産が少なくても)、上記の額はかかるということです。
通常は、遺産の総額に応じて、報酬額が割合で決定されることとなります。(遺産総額の0.5%など)
※上記の内容は一部の信託銀行の情報となります。具体的な情報は実際に利用される信託銀行のパンフレットで確認しましょう。
行政書士に[遺言書作成~執行]を依頼をした場合
では、遺言信託として上記でご紹介してきた内容を行政書士に依頼した場合、どのくらいの手数料や報酬を支払う必要があるでしょうか。
行政書士事務所によって、報酬額はまちまちですが、大体は次のとおりです。(複数の事務所HPを参照)
- 遺言書の作成:4万円~6万円程度
- 遺言執行者の引き受け:15万円~、20万円~
※遺産総額の〇%と割合で報酬を決定している事務所あり
遺言書の作成は、自筆証書遺言か公正証書遺言かで変わってきますが、大体上記のとおりです。(報酬額がさらに高額な事務所もあります。)
遺言執行者の引き受けも、固定額を報酬としている事務所もあれば、遺産総額に応じて割合で報酬を決定している事務所もあります。
遺言作成の相談なども当然応じてもらうことはできます。
まとめ
遺言の作成から執行までを一括して依頼できる遺言信託についてご紹介しました。手数料や報酬額を調べてみると、遺言信託の場合は高額となっているようです。
逆に、行政書士に依頼した場合は、事務所にもよりますが、遺言信託に比べて、手数料・報酬額は安く抑えることができるかもしれません。遺言信託は高額な最低報酬額があるため、財産が少額の場合には、なかなか苦しいところではあります。
これから遺言を作成しようとしている方は、是非よく考えてみてください。
行政書士なども事務所のホームページで報酬額を記載しているところは多いですし、遺言信託もパンフレットを無料で取り寄せることはできます。あたなにとって人生で一度の大きなイベントです。悔いの残らない選択をしてくださいね。
要チェック! 相続、遺言の基礎知識まとめ(カテゴリーごとに解説します)
相続、遺言について深く学ばれたい方はぜひご確認ください。