遺言書の筆跡をめぐって、相続人同士で争いになることがしばしばあります。
「この筆跡は親父のものではない!こんな遺言は無効だ!」
ほとんどの場合、遺言の内容に不満を持つ相続人がこのように主張します。
この記事では、筆跡をめぐるトラブルを防止するための方法についてご説明します。
- 遺言書で筆跡が問題となることがある
- 筆跡トラブルを未然に防ぐ遺言書の作成方法
遺言書(自筆証書遺言)で本人の筆跡が問題となることがある
遺言書には3つの種類があります。自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言です。その中で唯一、自筆証書遺言については、遺言者が自書で書く必要があります。
もしも、自筆証書遺言が本人の自書でないとすると、遺言は無効となります。
ですので、遺言の内容に不満を持つ相続人が、「これは本人の筆跡ではない」と主張するということは、遺言の無効を主張しているということになります。
相続人同士で話し合い、解決できれば良いのですが、たいていは決着がつかず、裁判所の手を借りることになります。
まずは調停で話し合いが行われますが、争いが激しく、決着がつかない場合には、訴訟を提起することになります。
公正証書遺言は公証人が作成しますし、秘密証書遺言は自書でなくても構いません。ワープロやパソコンを使っても良いです。
遺言書の筆跡トラブル:筆跡鑑定が必要となることも・・・
筆跡をめぐるトラブルがこじれ、訴訟になると、筆跡鑑定が行われます。
裁判費用に加え、筆跡鑑定を行う費用もかかってくるのです。この筆跡鑑定にかかる費用がなかなか高く、数十万円かかることもあります。
訴訟では、筆跡が有効だと主張する被告側、筆跡が無効だと主張する原告側がそれぞれ筆跡鑑定を行い、その結果を証拠として出します。
筆跡鑑定をする際の判断材料となるのが、被相続人(亡くなられた方)が生前に自書で書いた手紙や日記などの文書となります。
ですが、それらの文書を作成した時から長年経過し、加齢や病気が原因で、筆跡が変わってしまっているということも十分にあります。
このような場合、筆跡鑑定を行ったとしても、その証明力には限界があるでしょう。
本当に本人が書いた遺言書なのに、加齢や病気で筆圧が変わり、指もうまく動かなくなっていたことで、別人の筆跡と鑑定されてしまった例もあります。
遺言書の筆跡トラブルを未然に防ぐ【対策】
遺言書の筆跡をめぐるトラブルを事前に回避するための手段を3つご紹介します。具体的には以下のとおりです。
- 遺言書作成の様子をビデオで撮影する
- 普段から自書の文書(メモ)を残しておく
- 元気なうちに遺言書を作成する
上記について、具体的に説明していきます。
遺言書作成の様子をビデオで撮影する
遺言書を作成しているときの様子をビデオで撮影しましょう。本人と文書の内容がよく見てとれるように撮影すると良いでしょう。
また、作成した遺言書を声に出して読み上げているところを撮影するのも効果的です。
家族に伝えたいことがあれば、映像として一緒に残しておきましょう。撮影したビデオのデータ(CDやDVDなど)は、遺言書と一緒に保管しましょう。
普段から自書の文書(メモ)を残しておく
既にご説明しましたとおり、筆跡鑑定では、遺言書以外で本人が作成した文書を資料とします。日ごろから日記や手紙などを自筆で書いておけば、それが判断材料になります。
これにより、筆跡鑑定の証明力を上げることができます。できれば、遺言書作成当時から1年以内のメモ書きなどがあれば良いです。
元気なうちに遺言書を作成する
加齢により、若かった頃と筆跡が変わってしまうことは大いにあります。
また、病気によって手が震えてしまい、うまく文字が書けなくなる方もいらっしゃいます。
こうなると、筆跡鑑定を行ったとしても、希望通りの結果が出ないこともありえます。
ですから、できるだけ元気で指がしっかり動くうちに、遺言書を作成されることをおすすめします。
遺言書は後から何度でも書き直すことができます。
まとめ
遺言書の筆跡をめぐるトラブルと、その解決方法についてご説明しました。
できれば裁判沙汰にはしたくありませんが、もしものことを考えて、普段から日記やメモを残すなど、準備をしておきましょう。
または、自筆証書遺言ではなく、公正証書遺言を作成することで無用なトラブルを回避することが可能です。
要チェック! 相続、遺言の基礎知識まとめ(カテゴリーごとに解説します)
相続、遺言について深く学ばれたい方はぜひご確認ください。