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遺言執行者を引き受けることになりました。権利や義務、責任について教えてください。

行政書士 タカ行政書士 タカ

行政書士が遺言執行者の権利義務、責任について易しく解説します。

 

この記事でわかること

  1. 遺言執行者の権利(権限)と義務
  2. 遺言執行者が負うべき責任

遺言執行者の権利義務【1.権利/権限について】

遺言執行者に与えられた権限(権利)について解説します。

大きく2つの権利にわけてご紹介します。

1.遺言執行における一切の行為をする権利

遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有します(民法1012条1項)。

権利義務の範囲、つまり遺言執行者はどこまでの行動がとれるのか、については、

一般的、抽象的に判断せず、個々のケースごとに、遺言内容や遺言者の意思、相続財産の状況などを考慮して、個別具体的に判断していきます。

遺言が相続財産のうち、特定の財産に関するものであるとき、遺言執行者の権利義務も、その範囲にのみ及ぶことになります(民法1014条1項)。

2.遺言執行にかかる費用と報酬の請求権

遺言執行者は、遺言の執行において、以下の請求を行う権利をもちます。

  • 遺言執行にかかった費用の償還請求
  • 遺言執行者の報酬請求

上記について、簡単にご説明します。

 

費用の償還請求について

遺言執行者は、遺言を執行するために必要な費用を支出した場合、相続人に対して費用の償還(返還)を請求することができます。

遺言の執行でかかる費用は、相続財産の中から負担することになるので、遺言執行者が立て替えていた場合には、相続人に費用償還請求ができるのです。

さらに、遺言執行者が遺言執行において何かしらの債務を負担した場合は債務の弁済を、過失なく損害を受けたような場合には損害賠償を、相続人に対して請求できます。

 

報酬請求について

遺言執行者は執行事務が終了した後、遺言執行にかかる報酬を請求することができます(民法1018条)。

被相続人が遺言で遺言執行者の報酬を定めていれば原則それに従います。

定めていない場合、家庭裁判所に申し立てることで、報酬を審判により定めてもらうことができます。

遺言執行者の権利義務【2.義務について】

遺言執行者は、その権限が広く認められると同時に、それに相応する義務を負います。

具体的には次のとおりです。

  • 任務の開始義務(民法1007条1項)
  • 通知義務(民法1007条2項)
  • 財産目録の作成・交付義務(民法1011条)
  • 善良な管理者の注意義務(民法1012条3項)
  • 報告義務(民法1012条③、645条)
  • 受取物等の引渡義務(民法1012条3項)

上記についてご説明します。

任務の開始義務(民法1007条1項)

遺言執行者はその就任を承諾したときから、直ちにその任務を開始しなければなりません。

通知義務(民法1007条2項)

遺言執行者は、その任務を開始したときは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければなりません。

財産目録の作成・交付義務(民法1011条)

遺言執行者は、遅滞なく、相続財産の目録を作成して相続人に交付しなければなりません。

財産目録についてご存知ない方は「財産目録の書き方、記載例を紹介【無料:すぐ使える書式(雛形)付き】」をご覧ください。

善良な管理者の注意義務(民法1012条3項)

遺言執行者は、遺言の執行に当たっては、善良な管理者の注意をもって、その任務に当たらなくてはなりません。これに違反すれば、債務不履行の責任を負うことがあります。

イメージとしては、日頃のご自分の財産に対する程度の注意ではなく、より一層の注意義務が必要、というところです。

注意義務の程度は、遺言の執行に要求される専門知識、遺言執行者の能力その他によって異なり、弁護士等の専門家が遺言執行者となる場合、そうでない場合と比べ、要求される注意義務は高いものとなります。

報告義務(民法1012条3項)

遺言執行者は、相続人から要求があったときは、いつでも遺言執行の状況等について報告しなければなりません。

受取物等の引渡義務(民法1012条3項)

遺言執行者は、遺言執行の任務遂行として相続人のために関係者から受領した金銭その他の物や収受した果実、相続人のために自己の名をもって取得した権利を、相続人に引き渡し、また移転しなければなりません。

遺言執行者と責任(債務不履行責任)

遺言執行者が上でご説明した義務を怠った場合、相続人に対して債務不履行責任を負うこともあります。

債務不履行責任とはこの場合、損害賠償責任や遺言執行者の解任ということになります。

金銭の消費についての責任(民1012条3項)

遺言執行者は、遺言の執行として引き渡すべき金額またはその利益のために用いるべき金額を自己のために消費したときは、消費した日以降の利息を支払うとともに、それによって生じた損害を賠償する責任を負います。

簡単に言えば、遺言を執行する中で、相続人に引き渡すための財産を自分のために使ってしまった場合の責任についてです。

まとめ

遺言執行者の権利義務、責任について解説しました。

遺言執行者には遺言の執行、財産の管理・処分という絶大な権利が与えられる半面、義務や責任も付きまといます。

決して軽い気持ちで担うことができる職務ではありませんので、引き受ける際は慎重にご判断ください。