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遺言執行者って、本当に必要なんですか?

行政書士 大石行政書士 大石

遺言執行者を選任すべき3つのケースを行政書士が解説します!

 

この記事でわかること

  1. 遺言執行者を必ず選任する3つの遺言事項
  2. 遺言執行者がいるなら遺言執行者に任せるべき4つの事項

遺言執行者の選任が必要な3つの遺言事項

遺言において、下記3つの事項を記載する場合、必ず遺言執行者を指定しなければなりません。

  1. 認知
  2. 推定相続人の廃除及びその取消し
  3. 一般財団法人の設立

それぞれについて、くわしくご説明していきます。

遺言執行者が必要な事項1:認知

認知とは、法律上の婚姻関係にない男女の間に生まれた子(非嫡出子)について、その父親との間に法律上の親子関係を生じさせる行為です。

認知は遺言によって行うことも可能であり、その場合は必ず遺言執行者を指定しておかなければなりません。

その理由は、遺言者の死後、認知の届出を遺言執行者がするからです。

認知がされた場合、子の出生時に遡って認知者との間に親子関係が生じます(民法784条)。

【遺言認知の注意点】相手の承諾が必要なケース

認知は単独行為であり、未成年の子を認知する場合、誰かの承諾は必要ありません。

ですが未成年の子以外を認知する場合には、承諾が必要となります(以下)。

  • 成年の子を認知する
    その子の承諾が必要です
  • 胎児を認知する
    母親の承諾が必要です
  • 死亡した子を認知する
    子の直系卑属が成年の場合、その者の承諾が必要です

死亡した子を認知したい場合、その子に直系卑属(子など)がいる場合に限り、認知を行うことが可能です。

ここで直系卑属が成年者であれば、認知するためにその者の承諾が必要となります。

なお、これらの承諾を得るのは遺言執行者の職務となります。

遺言執行者が必要な事項2:推定相続人の廃除及びその取消し

遺言者は遺言により、推定相続人を廃除したり、一度した廃除の取り消しを行うことができます。

推定相続人とは、相続が開始した場合に相続人となる者をいいます。

廃除とは、推定相続人の相続権を剥奪する制度であり、推定相続人からの虐待、重大な侮辱、その他の著しい非行があった場合に家庭裁判所の審判によって行われます。

遺言による廃除が認められると、被相続人(遺言者)の死亡時に遡って、廃除の効果が生じます(民法893条)。

遺言者の死後、遺言執行者が廃除の申し立て、廃除取消の申し立てを行うため、必ず遺言執行者を指定しておきます。

廃除できるのは遺留分を有する推定相続人のみ

推定相続人から相続権を剥奪する廃除ですが、これができるのは遺留分を有する推定相続人に対してのみです。

遺留分を有する推定相続人の範囲は、配偶者、直系卑属(子や孫)、直系尊属(父母や祖父母)です。

ですので、遺留分を有しない推定相続人(例:兄弟姉妹)を廃除する遺言であったとしても、遺言執行者はその遺言を執行できません。

廃除の理由(証拠)を残しておく

廃除が家庭裁判所によって認められるには、推定相続人から被相続人(遺言者)に対して、虐待、重大な侮辱、その他の著しい非行があった場合とされています。

ですが、遺言書には「廃除する意思表示」があればよく、その理由を細かく記載する必要はないとされています。

そのため、遺言者の死後、遺言執行者が廃除理由を調査することになりますが、可能であれば推定相続人を廃除したい理由(証拠)を書面などで残しておくと手続きが円滑に進みます

遺言執行者が必要な事項3:一般財団法人の設立

遺言者は遺言により、一般財団法人を設立する意思表示を行うことができます。

おおまかな流れとしては、遺言で定款に記載または記録すべき事項を定め、遺言執行者が定款を作成し、公証人の認証を受け、財産拠出を行い、設立登記をすることで成立します。

これらの手続きを遺言執行者が行うため、遺言で一般財団法人を設立する際は、必ず遺言執行者の指定もあわせて行います。

遺言執行者を選任した方が良い4つの遺言事項

以下に示す遺言事項は、遺言執行者を指定しなくても実現できますが、遺言執行者がいるなら任せるべき事項です。

それと同時に、できれば遺言執行者を選任した方が良い遺言事項、とも言えます。

  • 遺贈
  • 特定財産承継遺言
  • 信託
  • 生命保険、傷害疾病定額保険の保険金受取人の変更

それぞれの意味について、簡単にご説明します。

遺贈

遺贈とは、遺言により財産の全部または一部を無償で与える行為をいいます。

遺言者の死後、遺贈を実現すべき義務を負う者を遺贈義務者といいます。

遺贈義務者は基本的には相続人ですが、遺言執行者がいる場合には、遺言執行者のみが遺贈義務者となります(民法1012条2項)。

特定財産承継遺言

特定財産承継遺言とは、すなわち「相続させる」旨の遺言のことです。

相続させる旨の遺言により、目的となる財産は当該相続人が単独で相続する、いわば遺産分割方法を指定したものとされます。

特定財産承継遺言であっても、法定相続分を超える部分の相続については、登記その他の対抗要件を備える手続きを踏まなくては、第三者に対抗(権利の主張)ができません。

そのため、相続人が相続を承認する場合には、遺言執行者は速やかに対抗要件を備えるための動きをするべきと考えられます。

信託

信託とは、特定の者が一定の目的に従って財産の管理または処分その他の目的達成に必要な行為をすべきものとすることをいいます(信託法2条1項)。

簡単に言えば、相続人の中に障害者や未成年者がいて今後の生活が心配な場合に、財産の管理や運用の期限を決めて第三者に委託し、その利益金を子の生活費としてあててもらう、といったイメージです。

遺言による信託の場合、遺言者を委託者、財産を託される人が受託者、利益を受ける人を受益者と呼びます。

遺言執行者は、受託者が信託を引き受けるかどうかを確認し、引き受ける場合には、信託財産を受託者へ移転させる必要があります。

生命保険、傷害疾病定額保険の保険金受取人の変更

生命保険(死亡保険)や傷害疾病定額保険などの保険金の受取人を変更する場合、遺言者の死後すぐに手続きを済ませる必要があります。

例えば死亡保険の場合で、被保険者が亡くなった被相続人(遺言者)である場合には、受取人変更の手続きをしないでいると、変更前の受取人に保険金が支払われてしまう可能性があります。

このため、遺言執行者がいる場合は、遺言者の死後、速やかに受取人変更の手続きを行う必要があります。

まとめ

遺言執行者を選任しなければ実現されない遺言事項、遺言執行者がいなくても実現可能だが、いる場合は遺言執行者に任せるべき遺言事項を解説してきました。

相続後の手続きは急を要することも多いので、可能であれば遺言執行者を指定しておき、相続開始後、速やかに対応できるようにしておくと安心です。