こんにちは。行政書士の大石です。

予備的遺言というものをご存知でしょうか。”予備的”なので、何かに備える遺言?というイメージを持たれたと思います。その通りです。

予備的遺言とは、できるだけ遺言の内容が実現されやすくなるように、あらかじめ遺言内容に工夫をしておくことと言えます。

この記事では、予備的遺言とは何か、なぜ必要なのかについて、文例を紹介しつつご説明していきます。

この記事でわかること
  • 予備的遺言とは何か?
  • 予備的遺言が必要なケース、文例を紹介

予備的遺言とは?【具体例で必要性を考える】

あなたが遺言者になった気分で考えてみてください。

次のようなケースを考えてみます。

あなたには配偶者がいますが子はいません。あなたの父母は既に他界し、あなたには兄弟が2人います。
兄とは昔から仲が悪く、もう何年も疎遠となってますが、病弱な弟とは交流がありました。
あなたは次の遺言を書きました。
私の財産のすべてを妻の花子に相続させる。

あなたには子がいないので、全財産を妻に相続させるとしたのでしょう。このような遺言を残される方は多いです。ですが、ここで考えていただきたいことがあります。

もしも、妻の花子さんが、あなたより先に亡くなられたら、どうしますか?あなたが用意した遺言書はどうなってしまうのでしょうか・・・

結論として、全財産を相続させると指定した花子が先に亡くなったことにより、上記の遺言は原則として無効となります。

全財産を配偶者に相続させるとしたのに、その配偶者が既に亡くなっているのですから、当然といえば当然でしょう。

では、あたなの財産はどこにいってしまうのか・・・

それは、第3順位の法定相続人である、あなたの兄弟へ均等に相続されることになります。

あなたはもともと配偶者に相続させたかったのです。ですが結果的に兄弟へ財産が渡ることになりました。

ここであなたはこう考えるでしょう。

「それなら、病弱な弟に全財産を与えたかった・・・」

それでは、あなたは一体どうすればよかったのでしょう。

予備的遺言の書き方

そこで予備的遺言の出番となります。上のような事態に備えて、あらかじめ遺言書にそう書いておけばいいのです。

つまり、次のように遺言書に書いておきます。

遺言者は、一切の財産を妻 鈴木花子(〇年〇月〇日生)に相続させる。

上記の鈴木花子が、遺言者の死亡以前に死亡した場合には、一切の財産を遺言者の弟の鈴木太郎(〇年〇月〇日生)に相続させる。

上のような遺言を、予備的遺言というのです。

上の例ですと、第一希望としては、妻に全ての財産を相続させたいわけです。ですが、遺言者より以前に妻が死亡したときは、第二希望として弟に相続させる、としているのです。

遺言者よりも先に妻が亡くなるという事態に備えているわけですね。これにより、遺言者の意思を尊重することができました。

予備的遺言が必要なケースと文例

それでは、どんな状況を想定して、予備的遺言を書いておくべきか、以下にいくつかご紹介します。

  • 相続人が遺言者より以前になくなった場合
  • 遺贈の受遺者が遺言者より以前に亡くなった場合
  • 遺言執行者に指定した者が就任しなかった場合
  • 未成年後見人に指定した者が就任しなかった場合

それでは、上記について一つずつ見ていきましょう。

相続人が遺言者より以前になくなった場合

上でご説明しました例と同様の場合ですね。

例は配偶者と兄弟がいる場合でしたが、子がいれば、次のような予備的遺言も考えられますね。

遺言者の一切の財産を妻 鈴木花子(〇年〇月〇日生)に相続させる。
鈴木花子が遺言者の死亡以前に死亡した場合には、長男 鈴木一郎(〇年〇月〇日生)には土地と家を、二男の鈴木次郎(〇年〇月〇日生)には預金1000万円を相続させる。

予備的遺言とは、まさに第1希望はこれこれ、第2希望はこれこれ、といったイメージですね。

遺贈の受遺者が遺言者より以前に亡くなった場合

遺贈(いぞう)とは、遺言により財産を無償で第三者へ譲ることをいいます。

遺贈を受ける相手を受遺者といい、受遺者は相続人であっても、相続人以外であっても構いません。

受遺者が遺言者より以前に亡くなった場合にも、第2希望があれば予備的遺言として書いておきましょう。

現金100万円を佐藤かずこ(〇年〇月〇日生, 住所)に遺贈する。
遺言者の死亡以前に、佐藤かずこが死亡した場合には、佐藤かずこの妹 佐藤京子(〇年〇月〇日生, 住所)に遺贈する。

上記のように、相続人以外の第三者(他人)へ遺贈する場合には、生年月日に加えて住所も記載しておきましょう。

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遺贈をする場合の遺言書の書き方(文例)を詳しくまとめています。是非ご覧ください。

遺言執行者に指定した者が就任しなかった場合

遺言の内容を円滑に進めるためには、遺言執行者を選任することも必要です。遺言執行者とは、遺言の内容を実現させるための、すべての権利と義務を有します。

遺言で子の認知や、推定相続人の廃除をする場合には、必ず遺言執行者を選任しなければなりません。

遺言で遺言執行者を指定することはできますが、やはりその者が必ず就任するとは限りません。

予備的遺言として、次のように書いておくとよいでしょう。

遺言者は、遺言執行者として、遺言者の長男 浜田一郎(〇年〇月〇日生)を指定する。
ただし、同人が就任できない場合には、以下の者を指定する。

行政書士 山田五郎
山田行政書士事務所 静岡県浜松市〇区〇〇町××番地

未成年後見人に指定した者が就任しなかった場合

遺言で未成年後見人の指定をすることもできます。遺言の効力、遺言でできることについても解説しています。

たとえば、遺言者には未成年の子がいたとします。

遺言者が亡くなってしまうと、親権者が誰もいなくなってしまう場合には、遺言で未成年後見人を指定しておくとよいでしょう。

ただし、指定した者が必ず就任できるとは限りません。その者が遺言者より先に亡くなってしまうかもしれませんし、存命であっても就任を拒否するかもしれません。

そうなると、やはり予備的遺言で備えておく必要はありそうです。

次のように記載すると良いでしょう。

遺言者は、三男の三郎が成人するまでの間、未成年後見人として、遺言者の姉 山田花子(〇年〇月〇日生)を指定する。
なお、山田花子が遺言者よりも以前に亡くなった場合、または未成年後見人に就任できない場合には、遺言者の妹 山田京子(〇年〇月〇日生)を指定する。

まとめ

予備的遺言の大切さがご理解いただけたかと思います。遺言作成時には想定していなかった事態により、遺言者の意思が尊重されなくなるような事態は避けたいですね。万が一を考え、少しでも遺言者の意思が尊重されるよう、備えておきましょう。