遺言執行者に指定されたものの、状況が変わり就任できなくなった、なんとか辞退できないものか、と悩む方もいるでしょう。

この記事では、遺言執行者の就任について、下記内容を解説していきます。

 

この記事でわかること

  1. 遺言執行者の就任拒否はできるか?
  2. 一度承諾した就任の撤回(辞任)はできるか?

知らないでは済まされない事項も解説します。最後までお読みください。

行政書士 タカ行政書士 タカ

初めまして。この記事は遺言に詳しい行政書士が執筆しています。

遺言執行者に指定された|就任拒否(辞退)はできるか?

遺言執行者は故人(遺言者)の遺言で指定されることで決まります。そして、遺言者の死後、就任を承諾することで正式に遺言執行者を引き受けたことになります。

ですが、遺言作成時には遺言執行者になる意志があっても、それから時間が経過して状況や環境の変化により、就任できなくなってしまった、という事態は起こり得ますね。

となると、遺言によって指定された遺言執行者について、就任拒否を行うことができるのかが問題となります。

結論を言うと、遺言執行者の就任拒否は可能です。

遺言執行者が就任を承諾するか拒否するかは、その自由な判断に任せられていて、必ず承諾しなければならないわけではありません。

遺言で指定されたものの、都合が悪くなれば自由に断ってもらって問題ないということです。

遺言執行者の就任を一度承諾したが、就任拒否(辞任)はできるか

遺言執行者は就任を承諾することで、正式に決まります(民法1007条)。

そして、就任後は直ちに任務を行わなければならない、とされています。

遺言執行者は被相続人の財産(遺産)を管理し、遺言の執行という重大な責任を負います。こうした職務内容の重大さから、就任後は素早い行動を要求されているわけです。

こうした事の重大さから、一度は引き受けた(承諾した)遺言執行者を辞任したくなった、ということも考えられます。

結論から言いますと、一度就任を承諾した場合には、自由に遺言執行者を辞任することはできません。

この点に関して、民法1019条2項に次のとおり規定されています。

(遺言執行者の解任及び辞任)
第千十九条
2 遺言執行者は、正当な事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、その任務を辞することができる

参照:e-gov民法

条文のとおり、一度引き受けた遺言執行者でも、「正当な事由」があれば、家庭裁判所の許可を得て、任務を辞する、つまり辞任することができます。

逆に言えば、正当な事由がなければ、辞任できない、つまり自由には辞任できないという意味です。

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知らずに「どうせ後で辞めればいい!」という安易な気持ちで引き受けることがないよう、注意が必要ですね。

遺言執行者の就任を拒否する!やり方は?

遺言執行者には重大な責任がつきまとうこと、そして一度でも承諾した場合には自由に辞任できないことをご説明しました。

ここでは、遺言執行者の就任を拒否する方法を解説します。

実は、遺言執行者の就任の承諾や拒否の方法について、正式なルール(条文の規定)はありません。

そうは言っても、遺言執行者は相続財産の管理や、他にも遺言の執行に関する一切の権利義務を持ちます。さらに、遺言執行者の就任後は、相続人は相続財産の処分その他遺言の執行を妨げる行為をすることができなくなります。

こうした遺言執行者の職務の影響力の大きさから、口頭ではなく、書面による方法で承諾、拒否の意思表示をするのが望ましく、実際そのように行われています。

遺言執行者就任の承諾または拒否をするタイミング

それでは、いったいいつ、どのタイミングで就職の承諾または拒否の意思表示をすれば良いか、悩むと思います。

就任拒否をする場合には、遺言者が亡くなり相続が開始した事実を知った後、直ちに行いましょう。

相続人の全員または一部の者に対して、書面により「遺言執行者への就任拒否をする旨」を伝えます。

反対に承諾をする場合には、相続人の全員に対して、遺言執行者に就任する意志がある旨を伝えます。

まとめ

以上、遺言執行者の就任拒否について解説しました。

知らないで引き受けてしまった場合、後々大変なことにならないよう、次の点をしっかり意識しておきましょう。

  • 就任前の辞退は理由なく可能
  • 就任後の辞任は正当な理由、家庭裁判所許可が必要