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亡くなった父が遺言で指定した遺言執行者を解任したいのだが、できるだろうか…

行政書士 大石行政書士 大石

遺言執行者の働きぶりを見ていて、このような願望が出てしまうことはあります。

そもそも遺言者自身が生前に指定した「遺言執行者」。

結論から言えば、一度定めた遺言執行者でも解任することは可能なんです。

この記事でわかること
  1. 遺言執行者を解任できる条件とは?
  2. 遺言執行者を解任させる方法
  3. 解任申立書の記載例(家庭裁判所)
  4. 解任審判前の保全処分について(緊急時)
  5. 解任申立てがされた後の遺言執行者の対応は?

遺言執行者は解任できる|解任の条件とは?

遺言者が生前に遺言で指定した遺言執行者も、遺言者の死後、家庭裁判所が選任した遺言執行者も、どちらも解任できます。

とはいえ、実際に解任するのは相続人ではなく、家庭裁判所になります。つまり、遺言執行者の解任を家庭裁判所に申し立てることになります。

遺言執行者の解任について、民法第1019条第1項に次のとおり規定があります。

第千十九条 遺言執行者がその任務を怠ったときその他正当な事由があるときは、利害関係人は、その解任を家庭裁判所に請求することができる。

(出典:e-gov-民法)

条文には「遺言執行者がその任務を怠ったとき」と「正当な事由があるとき」という表現があります。

これらの意味について解説します。

解任条件1:遺言執行者がその任務を怠ったとき

遺言執行者が任務を怠るとはつまり、遺言執行者が任務を引き受けた後も手を付けず放置したり、任務に背く行為をしたりして、適切に遺言執行をしない場合を言います。

遺言執行者が就任した場合には、相続人は相続財産(遺産)を処分することができなくなります(民法1013条1項)。これは、遺言執行者に相続財産の管理や遺言執行に必要な一切の行為をする権利が与えられているためです(民法1012条1項)。

また、不動産は速やかに対抗要件(登記)を備えなければならないなど、遺言執行は急を要します。

このため、遺言執行者は就任後、ただちに任務を行わなければならないと定められているのです(民法1007条)。

つまり、就任後に任務を放置するような遺言執行者は解任できるわけです。

解任条件2:正当な事由があるとき

遺言執行者が病気を患っていたり、長期不在などで、遺言執行が長期間できない状況にある場合等が該当します。

他にも、一部の相続人に加担したり、その恐れがあることで公正な遺言の実現が期待できない場合なども含まれます。

遺言執行者の解任は家庭裁判所の審判で行われる

遺言執行者の解任は家庭裁判所の審判によって判断されます。つまり、申立を行うだけで必ず解任できるわけではありません。

中には、遺言執行者と相続人とが対立関係にある場合に、解任の申立てが行われることも少なくありません。

そのため裁判所は、次のような観点から遺言執行者の解任を判断します。

  • 任務懈怠の程度
  • 相続人や受遺者の利益を現に侵害しているか
  • 公平性に問題があるか

仮に任務懈怠があってもそれが軽微であり、その原因が遺言執行者にのみあるわけではない場合や、相続人や受遺者の利益を現に侵害しているわけではない場合には、解任事由に当たらないと判断することもあります。

ほか、任務懈怠の程度だけでなく、遺言執行者の公平性を重視するとの指摘もあるようです。

遺言執行者を解任する方法|家庭裁判所への申立て

遺言執行者の解任申立て手続きについてご説明します。

解任申立ての手続き(家庭裁判所)

申立人 相続人、受遺者、相続債権者等
申立先 相続開始地の家庭裁判所
添付書類(申立書以外)
  • 遺言者の戸籍(除籍)謄本(※1)
  • 遺言書の写し(※2)(※3)
  • 遺言執行者の住民票または戸籍の附票(※4)
  • 申立人の戸籍謄本(※5)
  • 利害関係を証する資料(※6)
  • 解任を必要とすることを証する資料
  • 手続代理委任状

(参照:書籍「遺言執行実務マニュアル」 弁護士 中根秀樹 著)

添付書類の注釈

(※1)(※2) 申立先の家庭裁判所に遺言書検認事件の事件記録が保存されている場合(検認から5年間保存)、添付省略可。
(※3) 検認の必要な遺言書の場合は、検認済みの遺言書の写し又は検認調書謄本の写し
(※4) 3か月以内のもの
(※5) 申立人が親族でない場合は不要
(※6) 申立人が親族の場合は不要

(参照:書籍「遺言執行実務マニュアル」 弁護士 中根秀樹 著)

 

上記以外にも、必要に応じて書類の提出を求められたり、または省略できたりする場合がありますので、必ず事前に問い合わせをしてください。

解任申立書の記載例

遺言執行者解任申立書の記載例を以下に示します。

遺言執行者解任審判申立書01

遺言執行者解任審判申立書02(出典:書籍「遺言執行実務マニュアル」 弁護士 中根秀樹 著)

申立書のフォーマット(書式)は家庭裁判所HP(遺言執行者の選任)よりダウンロード可能です(上の例とは若干書式が異なります)。

または、お近くの家庭裁判所窓口から入手してください。

なお、上記例は申立人が弁護士を代理人とし、解任手続きを行うものです。

職務執行停止と職務代行者選任の保全処分について

遺言執行者の解任を家庭裁判所に申立てしても、審判が確定するまでは遺言執行者はなおその地位にあるため、これだけで遺言執行を停止させることはできません。

そのため、すぐにでも遺言執行者の職務を停止させる必要がある場合には、下記の保全処分を申し立てる必要があります。

  • 職務執行停止の保全処分
  • 職務代行者選任の保全処分

上記は遺言執行者解任の審判前に行う保全処分です。詳しい手続きは家庭裁判所にお問い合わせください。

遺言執行者解任の申立てがあった場合の遺言執行者の対応

上で述べたように、遺言執行者解任の申立てをしても、審判が確定するまでは遺言執行者はその地位にあり、執行を継続することが可能です。

ですが、遺言執行者と相続人らの間で対立関係が生じてしまい、公正な遺言の執行が困難になっている状況であれば、以後の遺言執行が更なる紛争を招く恐れがあるので、保存行為や緊急を要する行為を除き、執行行為を控えることも選択肢の一つとなります。

まとめ

遺言執行者の解任ができること、その条件、家庭裁判所への申立てについて解説してきました。

手続きで不明な点は相続開始地を管轄する家庭裁判所に問い合わせてみてください。

申立書を受け取りに行くついでに色々と質問をしてみるのも良いでしょう。