一般的に遺言書といっても、実は「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」と3種類から成ります。
これらの特徴をしっかり押さえておかなければ、法律上有効な遺言書を作成することはできません。
ここでは、3種類の遺言書の特徴をご説明するとともに、安全性、手数料、作成方法などの観点から、それぞれを比較していきます。
普通方式の遺言は全部で3種類ある【特徴を解説】
普通方式と言って、一般的に作成される遺言書には、以下の3種類があります。
- 自筆証書遺言
- 公正証書遺言
- 秘密証書遺言
ここでは、普通方式遺言である3種類について、その仕組みを簡単にご説明するとともに、各遺言書の特徴を比較していきます。
遺言書は、満15歳以上であり、有効に意思表示ができる者であれば、誰でも作成することが可能です。
遭難していて死に瀕している場合など、特別な状況下にある方が作成できる特別方式の遺言については「遭難者は遺言書が作れるの?緊急事態に作成する【特別方式の遺言】を解説」で解説しています。
自筆証書遺言の特徴
自筆証書遺言の特徴についてご説明していきます。
まず、自筆証書遺言とは、以下の要件を満たさない場合に無効となります。
- 遺言者が「全文」「日付」「氏名」を自書する
- 署名とともに押印をする
内容はともかく、まずは上記の要件を必ず満たさなければなりません。
自筆証書遺言は、いつでもどこでも手軽に作成でき、費用もかかりません。
しかしその反面、もしも上記の要件を満たさないなど、形式上の不備があった場合に遺言書が無効になってしまうという危険があります。
また、遺言書は遺言者自身で保管することになります。そのため、第三者による変造や偽造、隠匿される危険があります。
これらの危険を減らすために、保管場所を工夫したり、遺言書を封筒に入れ、封印をするなどの対策が必要となります。
なお、被相続人(亡くなられた方)の死後、遺言書は速やかに、家庭裁判所の検認手続きを受けなければなりません。
検認とは、一種の証拠保全手続きです。これを受けないと、遺言の内容が執行できませんのでご注意ください。
遺言書の検認手続きの詳細は「検認とは?遺言書の検認手続き、裁判所への申立書の書き方、必要書類を解説」で解説しています。
より詳細な、無効にならない自筆証書遺言の書き方、訂正のやり方、文例の紹介はこちらをご覧ください。
⇒ わかりやすい!正しい遺言書の書き方、加除訂正、封筒の例【見本あり】
遺言書の保管場所はどこがいい?
遺言書の保管場所はどこが安全?銀行の貸金庫は避けた方が良い理由
遺言書を封筒に入れ封印をするメリット・デメリット
【遺言書】封筒の書き方(見本)|封筒ないと無効?封印は開封厳禁?
公正証書遺言の特徴
公正証書遺言の特徴についてご説明していきます。
公正証書遺言は、公証役場で「法律の専門家である公証人」に作成してもらう遺言書です。全国どこの公証役場でも作成できます。
公正証書遺言は原本が公証役場に保管されるため、偽造、変造や紛失の心配がありません。
また、遺言書は公証人に作成してもらうため、形式や内容の不備により、遺言書が無効となるおそれもありません。
ただし、公証人に作成してもらうので、費用はかかります。
最後に、公正証書遺言は、家庭裁判所での検認手続きは不要です。
公正証書遺言の作成の流れ、手数料などの詳細はこちらでまとめています。
⇒【公正証書遺言】作り方、公証役場の手続き、選ばれるメリットを解説
公正証書遺言を探す「遺言検索システム」とは?
秘密証書遺言の特徴
秘密証書遺言の特徴についてご説明していきます。
秘密証書遺言は、次のような流れで出来上がります。
- 遺言者が遺言書に署名、押印をする
- 遺言書を封筒に入れ、遺言書に押印した印で封印をする
- 証人とともに公証役場へ遺言書を持っていく
- 公証人に遺言書の存在を証明してもらう
つまり、遺言者自身で遺言書を作成し、封筒に入れ、封印をします。そして、出来上がった遺言書を証人立ち合いのもと、公証人に提示するのです。
公証人が、「遺言者の住所氏名とともに、遺言書は本人が作成した旨」を証明してくれるのです。
自筆証書遺言と同じく、保管は遺言者自身で行います。遺言の内容(中身)は証人にも、公証人にも知られません。
遺言書を作成したという事実だけは、公証役場で保証してもらえます。遺言書の作成に公証人が関わるので、費用はかかります。
また、自筆証書遺言と同じく、家庭裁判所での検認が必要です。
自筆証書遺言と同様に、遺言書に形式や内容上の不備があり、無効となる危険があります。
秘密証書遺言の作成の流れ、手数料、知っておくと良い点についてまとめています。
要チェック! 相続、遺言の基礎知識まとめ(カテゴリーごとに解説します)
相続、遺言について深く学ばれたい方はぜひご確認ください。
【比較】3種類ある遺言の「安全性」「手数料」「作り方」など
それでは、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の比較をしていきます。
安全性、手数料、作成方法などの観点からまとめていきます。
自筆証書遺言 | 公正証書遺言 | 秘密証書遺言 | |
作成方法 | 遺言者が全文、日付、署名を自筆で書き、押印をする | 公証役場で公証人に遺言内容を口述し、作成してもらう | ・遺言者が作成し、署名、押印する。封筒に入れ、遺言書に押印したものと同一の印章で封印する。 ・公証役場で自ら作成した遺言であること、氏名、住所を申述する |
作成場所 | どこでも (自宅など) |
公証役場 | どこでも (自宅など) →公証役場 |
手数料 | 不要 | 必要(作成費用をご覧ください) | 必要(一律11,000円) |
保管場所 | 遺言者自身で保管 | 公証役場で原本が保管される | 遺言者自身で保管 |
公証人の関与 | なし | あり | あり |
証人の有無 | 不要 | 必要(2人以上) | 必要(2人以上) |
無効になる可能性 | あり | なし | あり |
内容が知られる可能性 | あり | あり(作成時、証人、公証人に知られる) | ほぼなし |
変造・偽造・隠匿される可能性 | あり | なし | ほぼなし |
遺言書が発見されない可能性 | あり | なし | あり(原本が公証役場では保管されないため) |
家庭裁判所の検認 | 必要 | 不要 | 必要 |
注目すべきポイント
3種類の遺言書の特徴をまとめてみました。中でも、とくに注目すべきポイントがあります。
それは以下の点です。
- 遺言書が無効になる可能性はあるか
- 偽造・変造・隠匿される危険はあるか
- 遺言書が発見されない可能性はあるか
遺言書をせっかく作成した以上、絶対に避けたいことですね。
公正証書遺言であれば、遺言書の作成に公証人が関与するので、形式・内容上の不備で遺言書が無効となる可能性は限りなく低いです。
しかし、自筆証書遺言と秘密証書遺言は、遺言書の中身を公証人がチェックしないので、遺言書が無効となってしまう危険があります。
また、公正証書遺言であれば、原本が公証役場に保管されるので、遺言書が紛失してしまい、発見されない危険はありません。
同様の理由で、遺言書が第三者の手によって偽造されたり、隠匿されたりする心配もありません。
結論としまして、多少の費用はかかりますが、安全性、確実性の観点から、公正証書遺言が一番おススメであると言えます。
まとめ
3種類から成る遺言書の特徴をご紹介し、その比較を行ってきました。近年は遺言書を作成される方も増加傾向にあり、中でも自筆証書遺言と、公正証書遺言が人気があるようです。逆に秘密証書遺言を作成される方は、めったにいません。
大切な遺言書なので、よりよい方法によって、確実に作成したいですね。
要チェック! 相続、遺言の基礎知識まとめ(カテゴリーごとに解説します)
相続、遺言について深く学ばれたい方はぜひご確認ください。