数年前に遺言書を作成したのですが、それから離婚し苗字が旧姓に戻りました。遺言書の効果はなくなりますか?
遺言書を作成したものの、結婚または離婚により苗字が変わり、遺言書に署名した苗字と異なってしまうことは十分起こり得ます。
今回は、この場合の遺言書の効力について、解説します。
- 苗字が変わった場合の遺言書の効力
- 苗字が旧字体から新字体になった場合
- 苗字が変わったら遺言書を作成し直すべきか
結婚、離婚で苗字が変わった|遺言書は無効になる?
ここで問題となる遺言書とは、ご自身で作成された自筆証書遺言、公証役場で作成された公正証書遺言になります。
どちらにも遺言者の名前が記載されることになりますが、遺言書作成時から亡くなるまでの間に苗字が変わっていた場合、遺言書は有効か無効かという問題が生じます。
結論として、結婚、離婚で苗字が変わっていても、本人が特定可能であれば、遺言書は無効にはなりません。
苗字が変わっても、その者の戸籍を確認すれば、変更前の苗字、変更後の苗字がどちらも判明します。
これと照合させることで、遺言書作成者がその者であると、特定することが可能です。
たとえ苗字が変わっていたとしても、遺言書を作成した方と、お亡くなりになった方が同一人物であれば、遺言書の効力に影響はないのです。
作成日が離婚前なのに、苗字が離婚後(旧姓)の場合
離婚前に遺言書を作成したとします。それから離婚して、苗字が結婚前の苗字(旧姓)に戻ったとしましょう。
この時、遺言書は離婚前に作成されているので、記載される苗字は離婚前の苗字であるはずです。
ですが、離婚後の苗字(旧姓)が記載されていた場合、遺言の効力はどうなるでしょうか。
この場合、本当に離婚前に作成された遺言書かどうか怪しいということになるので、遺言が無効となる可能性があります。
遺言書を作成する時点で離婚が決定していたとしても、作成日が離婚前か離婚後かで正しく苗字を記載しましょう。
苗字が旧字体から新字体になった|遺言書は無効になる?
漢字には旧字体、新字体があります。遺言書を作成した時点では、旧字体で書いていたとします。
ですがその後、戸籍で使う苗字(旧字体)が難しいということで、旧字体から新字体に変更したとします。
この場合、旧字体で書かれた遺言書の効力はどうなるのか、問題となります。
結論として、苗字が旧字体から新字体になっても、遺言書の効力に影響はなく、無効にはなりません。
結婚、離婚で苗字が変更になった場合と同様に考え、苗字が新字体に変わっても、亡くなった者が遺言書を作成した本人であると特定できれば、問題ありません。
苗字が変わったら、遺言書を作成し直すべき?
ここまで苗字が遺言書作成時から変わった場合の、遺言の有効性について述べてきました。
それとは別として、そもそも遺言書作成時から苗字が変わった場合、遺言書を作成し直すべきかどうか、お話します。
遺言書が簡易なもので、作成にかかる負担が少ないのであれば、苗字の変更に伴い遺言書も新しくしてもよいでしょう。
もしくは、遺言書作成からかなり時間が経っている場合には、財産や遺言内容を見つめ直す意味で、新しくしても良いでしょう。
ただ、苗字は変わっても、遺言書作成からほとんど時間が経っていない場合には、わざわざ作り直す必要もないかと思います。
まとめ
以上、遺言書の作成と苗字の変更について、遺言の有効性を解説しました。
苗字が変わっても、本人であると特定ができるならば、遺言は無効にはなりません。