離婚や死別により、夫婦の婚姻関係は解消されます。

 

それでは、配偶者のや、相手側の親族との姻族関係はどうなるのでしょうか。

 

ここでは、離婚と死別のそれぞれについて、氏と姻族関係の変化についてご説明していきます。

 

 

姻族とは何か、親族や血族と何が違うのか詳細はこちらで解説しています。

今さら人に聞けない!親族の範囲と親等の数え方を丁寧に!

離婚と死別の違い

 

配偶者と離婚した場合も、死別した場合も、どちらも婚姻関係は解消されます。

 

しかし、離婚とはそもそも「婚姻関係を解消させる意思」が夫婦に存在し、お互い合意のもと行われます。

 

対して、死別には婚姻関係を解消させる意思はありません。

 

この違いから、婚姻関係が解消された後の、配偶者の氏、姻族関係への影響に違いが出てくるのです。

 

それでは、配偶者と離婚した場合と、死別した場合について、氏と相手側との姻族関係の変化についてご説明していきます。

 

配偶者の氏(離婚の場合)

 

婚姻により妻が夫の氏を名乗っているとします。

夫と離婚した妻の氏について見てみましょう。

 

離婚は、「夫婦関係を解消させる」という明確な意思のもと、行われます。

 

そのため、妻の氏は次のようになります。

 

  • 妻の氏は、当然に婚姻前の氏に戻る

 

ただし、離婚により婚姻前の氏に戻った妻は、離婚の日から3ヶ月以内に戸籍の届出をすることで、婚姻中に称していた氏を称することができます。

 

民法に次のとおり規定されています。

 

(離婚による復氏等)
第七百六十七条 婚姻によって氏を改めた夫又は妻は、協議上の離婚によって婚姻前の氏に復する。
2 前項の規定により婚姻前の氏に復した夫又は妻は、離婚の日から三箇月以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、離婚の際に称していた氏を称することができる。

 

 

さて、なぜ「離婚の日から3ヶ月以内なら婚姻中の氏を称することができる」なんて規定が存在するのでしょうか。

 

例えば、ちょっとした例で考えてみましょう。

 

夫婦は婚姻により、夫の氏を称することにしました。

夫婦には未成年の子がいました。

夫婦は離婚をし、子の親権者は母親となり、子は母親と暮らすことになりました。

母親は離婚により、婚姻前の氏に戻りましたが、子の氏は戻りません。

母親は婚姻前の氏、子は離婚した夫の氏となり、母子で氏が異なる状態になってしまいました。

 

上記のようなことが起こりうるので、婚姻で夫の氏を称していた妻が、離婚により婚姻前の氏に戻らず、子と同じ夫の氏のままとするケースがあるのです。

 

配偶者の氏(死別の場合)

婚姻により妻が夫の氏を名乗っているとします。

亡き夫と死別した妻の氏について見てみましょう。

 

死別の場合には、「婚姻関係を解消させる」という意思はありません。

 

そのため、妻の氏は次のようになります。

 

  • 夫が死亡した場合の妻の氏は変わらない

 

上記のとおり、生存配偶者である妻の氏に変化はありません。婚姻中に称していた氏のままとなります。

 

ただし、妻はいつでも婚姻前の氏に戻ることができます。

 

(生存配偶者の復氏等)
第七百五十一条 夫婦の一方が死亡したときは、生存配偶者は、婚姻前の氏に復することができる。

 

姻族関係への影響(離婚の場合)

 

離婚なので、「婚姻関係を解消する」という明確な意思があります。

 

そのため、姻族関係は次のようになります。

 

  • 婚姻により生じた姻族関係は、一挙に消滅する

 

民法に次のとおり規定されています。

 

(離婚等による姻族関係の終了)
第七百二十八条 姻族関係は、離婚によって終了する。

 

姻族関係への影響(死別の場合)

死別の場合には、「婚姻関係を解消する」という明確な意思がありません。

 

そのため、姻族関係は次のようになります。

 

  • 婚姻により生じた姻族関係はそのまま(変化せず)

 

ただし、生存配偶者に限っては、いつでも姻族関係を終了させる意思表示をすることができます。

 

第七百二十八条 姻族関係は、離婚によって終了する。
2 夫婦の一方が死亡した場合において、生存配偶者が姻族関係を終了させる意思を表示したときも、前項と同様とする。

 

上記の姻族関係を終了させる意思表示がでいるのは、生存配偶者だけです。亡くなった配偶者側の親族が行うことはできません。

 

まとめ

離婚と死別のそれぞれにおいて、配偶者の氏と姻族関係がどう変化するのかをご説明してきました。

大切なことなので、この機会に覚えておいていただければと思います。