人が亡くなると、相続が始まります。すると、被相続人(亡くなった人)が有していた財産(遺産)は相続人に受け継がれることとなります。これが相続ですね。

相続人が複数いる場合には、誰がどの財産を相続するかを決定する必要があります。これが遺産分割です。

ですが、被相続人が遺言を作成し、遺産の分割方法を指定していた場合には、基本的にはそれに従うことになるので、相続人間での遺産分割は不要となります。

そこで、次の点が問題となります。

  • 遺言がある場合、遺言の内容に従わないことは可能か
  • 遺言があれば、絶対に遺産分割協議は不要か

上記について、わかりやすく解説していきます。

この記事でわかること
  • 遺言書の効力は絶対!遺言者の意思を最大限尊重するもの
  • 遺産分割とは?遺産分割協議の目的
  • 遺言があっても遺産分割協議が必要なケース
  • 遺言に従わない遺産分割は可能かどうか

遺言の効力は絶対です【遺言者の意思を最大限に尊重する】

遺言についてご説明しておきます。

まず、遺言に書ける内容は、法定遺言事項と付言事項の2つがあります。

法定遺言事項として記載できる主な内容は、財産の分割方法の指定、遺贈(いぞう)、推定相続人の廃除遺言執行者の指定などです。

付言事項には、遺産相続に関係するもの以外の内容を記載します。例えば、「なぜ財産をそのように分割することにしたのか(理由)」「家族への感謝」などです。

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遺言の効力、遺言でできることについて詳しく説明しています。よろしければご覧ください。また、遺言の書き方には決まりがあります。もしも形式上の不備があると、遺言そのものが無効となることがあります。遺言の書き方、訂正の仕方、注意事項なども、よろしければご覧ください。

被相続人が生前に、全ての財産について、その分割方法を遺言に記載しておけば、相続人はそれに従うだけです。

この場合、わざわざ遺産分割協議をする必要はないといえます。

遺産分割とは?遺産分割協議をする目的

遺産分割協議についてご説明します。

遺産分割とは、被相続人の遺産(相続財産)を相続人へ具体的に分配していくことです。

相続が開始すると、相続人が複数いる場合には、遺産は相続人が全員で、各々の相続分に応じて共有している状態となります。

この共有状態を解除して、具体的に財産を分配していく作業が遺産分割となります。

たとえば、「妻は土地と家を、長男は預貯金を、次男は自動車を相続する」といった具体に分割していきます。

相続人が一人だけであれば、その一人が全財産を相続するので、遺産分割協議は不要です。

相続人が複数いても、既にご説明したとおり、遺言で財産の分割方法が指定されていれば、やはり遺産分割協議は不要です。

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遺言書によって遺産の分割方法が具体的に書かれていれば、相続人はそれに従うだけなので、わざわざ遺産分割協議をする必要がないということですね。

遺産分割について知りたい方

遺産分割とは何か、仕組み、やり方、遺産分割協議書の作成方法など詳しく知りたい方は、以下の記事で解説しています。

遺産分割の方法、協議書の作成(見本あり)、無効・取消・やり直しを解説

遺言があっても遺産分割協議が必要なケース

遺言があるにもかかわらず、遺産分割協議が必要となる場合があります。

3つの主な事例を以下に示します。

  • 遺言書に指定されていない財産がある
  • 遺言書の作成後に取得した財産がある
  • 遺言書に相続分が割合で指定されている

上記の事例に該当する場合、たとえ遺言書が作成されていても、遺産分割協議が必要となります。

以下、掘り下げて解説していきます。

遺言書に指定されていない財産がある

1つ目は、遺言書に指定されていない財産があった場合です。つまり記載漏れですね。

多くの財産を有しているような場合には、そのすべてを網羅して記載するのは困難な作業です。

不動産や金融機関の預貯金などは記載できても、それ以外の細々とした財産を書き忘れるということはあるでしょう。

そういう場合には、記載されなかった財産について、改めて相続人同士で遺産分割協議をする必要があります。

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遺言書を作成する場合、本来は財産目録を作成し、すべての財産をリストアップ(一覧化)した上で遺言書の文案を考えるべきです。こうすれば、記載漏れ、見落としがなくなります。

遺言書の作成後に取得した財産がある

2つ目は遺言書の作成後に遺言者が新たな財産を取得している場合です。

遺言書の作成から時が過ぎれば、新たに財産を取得することは当然ありえるでしょう。逆に遺言書作成時に有していた財産が、相続開始時になくなっている、ということもありえます。

こういう場合も、新たに取得した財産について、遺産分割協議が必要となります。定期的に遺言書を更新する(作り直す)と良いですね。

遺言書に相続分が割合で指定されている

3つ目は遺言書に相続分が割合で指定されている場合です。

たとえば、「妻には全財産の50%を、長男には30%を、次男には20%を相続させる」と記載されていた場合です。

このような場合にも、指定された割合に応じて、具体的にどの財産を誰が相続するかを決定しなければなりません。

よって遺産分割協議が必要となります。

遺言に従わない遺産分割も可能【相続人全員の合意がある】

遺言で遺産の分割方法が指定されている場合、原則は遺言に従うことになります。それが被相続人の意思であり、尊重する必要があるためです。

ですが、相続人が全員で合意すれば、遺言に従わない遺産分割が可能となります。

「親父は遺言にこう書いているが、やっぱりこの分け方の方がいいだろう。皆も合意してくれたし!」

という具合ですね。全員の合意という点が重要となります。

一人でも反対する者がいれば、全員で合意したことになりませんから、その場合には原則どおり遺言に従うことになります。

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遺言で遺贈がされている場合には要注意です。受遺者(遺贈を受け取る人)の合意もとる必要があります。また、遺言執行者が選任されている場合には、遺言執行者の合意もとるようにしましょう。

まとめ

遺言がある場合に、遺言の内容とは異なる遺産分割ができるかについてご説明しました。それには、相続人全員の合意(受遺者、遺言執行者の合意を含む)が必要でした。さらに、遺言があっても、書き方によっては遺産分割が必要となる場合がありました。

遺産分割は時間と労力がかかります。できれば、遺言で記載漏れがないように、遺産の分割方法を指定しておくのが好ましいでしょう。

 

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