皆さまは、遺言書(ゆいごんしょ)と遺書(いしょ)の違いをご存知でしょうか。
「どちらも同じようなものでしょ?」
と考えられている方もいらっしゃるかもしれませんね。ですが、全く異なるのです。
この記事では、遺言書と遺書の違いをご説明します。
遺言書と遺書の定義
辞書で「遺言」「遺書」を調べてみると、どちらも「死に際に言葉を残すこと」「死後のために書き残す文書、手紙」といった意味が出てきます。
こうしてみると、どちらも似たような言葉に見えてしまいます。ですが、実際のところ、遺言と遺書の定義は全く異なるのです。
まずは遺言の定義から
遺言とは、法律上次のような意味をもちます。
何年、何十年先かわかりませんが、人はいずれ必ず亡くなります。
そのとき(いつかはわからない未来)に備えて、自己が有する財産の分け方などを遺言に書いておくのです。
つぎに遺書の定義
これに対して、遺書については皆さまがお持ちのイメージのとおりだと思います。
よく新聞やテレビで悲しいニュースを目や耳にします。たとえば、まだ若い学生がイジメが原因で自殺したといったものです。
彼らが亡くなる前に、遺書が残されていたということがよくあります。
遺書の内容としては、たとえばですが、「自分自身が長い間辛い思いに耐えてきたこと、加害者に対する悔しい感情、家族への想い」といったものが多いようです。
他の例としてよく耳にするのは、墜落寸前の飛行機の中で、家族宛てに遺書を書いたというものです。最後に無念の気持ち、家族への感謝の想いを残すものです。
つまり、これが遺書なのです。本当に死に直面した状況で書くものなのです。
遺言書は縁起が悪いものではなかった!
遺言と遺書の明確な違いをご理解いただけたと思います。
中には、遺言書と聞くと、「なんて縁起が悪いことを!わしに早く死ねといいたいのか!?」と言われる方がいます。
もしかすると、遺言と遺書をごっちゃに考えておられるのかもしれません。そのような場合、必ず両者の違いを丁寧にご説明するようにしています。
結論:遺言書は元気なうちに、遺書は亡くなる直前に書く
遺言と遺書には明確な違いがあることを、上でご説明しました。つまり、次のようなことが言えます。
- 遺言は元気なうちに準備しておくもの
- 遺書は亡くなる直前に書くもの
既にご説明したとおり、遺言とは、自己の有する財産の分割方法を指定したり、第三者に財産を遺贈したり、非嫡出子の認知をしたりするものです。
つまり、人生いつ何があるかわかりませんので、万が一に備えて、準備しておく、一種の保険のようなものです。
遺言の効力、遺言でできることについて詳しく記事にしています。よろしければご覧ください。
遺言がないと、被相続人(亡くなられた方)が残した財産(遺産)について、相続人間で遺産分割を行うことになります。
ほとんどの場合、相続人が各々主張するので、トラブルになることが多く、ひどい場合には裁判になります。裁判には多くの費用と時間がかかります。
ですが、もしも遺言があり、そこに遺産の分割方法を理由付きで記してあれば、相続人も納得してそれに従う可能性は大きくなるのです。
このように、遺言は、将来発生しうる相続人間のトラブルを回避する目的もあります。
遺言は元気なうちに書く理由は上記だけではありません。
高齢になり、認知症になってしまえば、法律上は遺言能力がないと判断され、遺言が無効になる恐れが生じるのです。
認知症でなくても、体が弱り入院するようになれば、遺言を書くことすら難しくなるでしょう。
これらのことから、遺言とは元気なうちに書くものであり、決して縁起が悪いものではない、ということがご理解いただけたかと思います。
皆さま、将来に備えて生命保険に加入される方は多いですよね。それと変わるところはないでしょう。
将来にそなえて遺言書を書いてみよう
遺言書は決して縁起が悪いものではありません。
むしろ、遺言書を書いておくことで、それが一種のお守り(保険)のようになり、さらに普段の生活が充実することもあるでしょう。
念のためお伝えしておきますと、遺言書を書いたからといって、そこに記載された財産(不動産や預貯金、株、現金、自動車など)の処分ができなくなる、なんてことは一切ありません。
たまに、遺言書を書いてしまうと、財産を自由に処分できなくなるのでは?と思われている方がいらっしゃいます。
まったくそんなことはないのです。
仮に、遺言書作成時には存在した財産が、期間の経過とともに存在しなくなっていても、その部分についてのみ遺言が無効となるだけです。
遺言は何度でも作り直せる(撤回)ので、新しく作りたくなったら、再度作ればいいだけです。
遺言とは、将来起こりうるトラブルを未然に防ぐ意味で大きな役割を果たします。できれば、若いうちから保険の意味で作成されることをおすすめします。
遺言書は、一定の様式に従って書く必要があります。形式上の不備があると、遺言が無効となる危険があります。
まとめ
遺言と遺書の違いをご説明してきました。遺言は元気なうちに準備しておくもの、遺書は死を目前にした人が書くものです。
遺言は縁起が悪いものでは決してありません。自身の有する財産を再確認する目的でも、将来家族が争い関係が壊れるのを防ぐ目的でも、遺言を作成されることをおすすめします。
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