こんにちは。行政書士の大石です。

被相続人が亡くなり、遺言が見つかりました。

ですが、それを見た相続人のあなたは、その内容に愕然としました。

「なぜ、私の相続分だけこんなに少ないんだ!?」

「なぜ、親父の面倒をまったく見なかった兄と同じ相続分なんだ!?」

今回は、不公平な遺言が引き起こす家族間のトラブルと、それを回避するための方法をお話します。

家族トラブルを引き起こす主な要因

遺言の内容により、残された家族の間でトラブルを生じかねない主な要因として、以下のものが考えられます。

  • 自分の相続分があまりにも少ない
  • 他の相続人の相続分や内容に納得できない
  • 遺族が知らない人へ財産が遺贈(いぞう)されている
  • 本当に本人が書いた遺言書なのかが不明

では、なぜトラブルとなるのかを一つ一つ見ていきましょう。

自分の相続分があまりにも少ない

相続人が複数いて、その中でも自分だけの相続分(遺産の取り分)があまりに少なかったらどうでしょう。

誰でも遺言の内容に不満を抱くはずです。

「母とは疎遠になっていたし、老後の面倒も見てこなかったから、仕方ないか・・・」などと、相続分が少ない理由がわかっていればまだ良いのです。

ですが、全く身に覚えがなければ、「何故私だけ少ないの?」とただ困惑するでしょう。

他の相続人の相続分や内容に納得できない

例えば、あなたは被相続人(亡くなった人)の生前、被相続人と同居し、一生懸命に療養看護に努めていたとしましょう。

そして被相続人の死後、遺言が発見されました。

そこには、普段全く顔も出さず介護にも一切協力しなかったあなたの姉と、均等に財産を相続させる旨が記載されていました。

あなたは納得できますか?私なら納得できません。

せめて、そのように判断した理由を添えてくれていれば、まだ良いのです。

ただ「財産は子らで均等に分けること!」としか記載されていないとすれば、これはトラブルの火種となってしまいます。

遺族が知らない人へ財産が遺贈されている

遺贈とは、無償で財産を第三者へ譲渡することです。相続人でない他人へも遺贈はすることができます。

遺言書を確認すると、遺族が全く知らない他人へ「財産の一部を遺贈する」と記載されていました。

たとえば、被相続人と受遺者(遺贈を受ける人)は生前に交流があり、被相続人が大変お世話になっていた人ならば、相続人も納得できるかもしれません。

ですが、全く見たことも聞いたこともない人に財産を遺贈する、なんて書かれていたら、さすがに納得できないですよね。

せめて、何故その人に財産を遺贈することにしたのか、理由を記して欲しかった例ですね。

本当に本人が書いた遺言書なのかが不明

そもそも、遺言書を本当に本人が書いたのか?本人の意思が反映されているのか?など疑う相続人も出てきます。

たいていは、遺言の内容に不満を持つ相続人がこのように考えます。

たとえば、遺言書の筆跡が全く本人のものではない場合には、筆跡鑑定をするなど方法はあります。

ですが、例えば同居の相続人が無理やりに書かせたなど、遺言の内容が本人の真意ではない場合も考えられます。

こうなると、相続人間でトラブルが生じてしまいます。

相続人間で解決できるなら良いですが、たいていは調停や審判など、家庭裁判所の助けを借りることになってしまいます。

家族トラブルを回避する7つの方法

では、被相続人の死後、遺言をめぐる家族のトラブルを回避するためにはどうすれば良いのでしょうか。

被相続人は生前、何に注意して遺言を書くべきだったでしょうか。

相続人にはどのような対応方法があるのでしょうか。

7つの方法をご紹介します。

  • 遺言の根拠を付言として記載する
  • 公正証書遺言を作成する
  • 信頼のできる人に遺言書の保管を任せる
  • 遺言に財産の記載漏れがないようにする
  • 遺言作成時の様子を撮影する
  • 遺留分減殺請求をする
  • 遺言書に従わない遺産分割も可能

上記7つの点に注意すると、どんな良いことがあるのかについて、一つ一つ見ていきましょう。

遺言の根拠を付言として記載する

付言(ふげん)とは、遺産相続に関すること以外の内容を書く部分のことをいいます。

付言に書いた内容は、法的な効力はありません。

付言に書く主な内容としては、「遺産を何故そのように分けることにしたかの理由」「家族への感謝」などです。

つまり、「ある相続人だけ相続分が多い(または少ない)」「全く知らない他人へ財産が遺贈されている」ような場合、付言事項として、そのように記載した理由を書いておくのです。

たとえば、

「相続人の〇〇とは疎遠となってしまったが、病気がちで独り身なので、遺産を多く相続させたい」

「〇〇さんは私の恩師であり、若いころ大変お世話になったので、財産を遺贈したい」

のように、付言として書いておくのです。

付言の書き方を以下に示します。参考にしてみてください。

上図の遺言書の赤枠の中にご注目ください。

遺言者は本来なら相続権のない長男の妻に財産を遺贈していますね。

そして、付言事項として、なぜ長男の妻に財産を遺贈したのかを記しています。

これならば、相続人も納得できるでしょうし、争いの回避につながります。

誰が相続人になるか、相続分はどれだけかについても、よろしければご覧ください。

公正証書遺言を作成する

遺言書は全部で3つの種類が存在します。

自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3つです。中でも、自筆証書遺言と公正証書遺言を選ばれる方が多くなっています。

簡単に違いをご説明しますと、自筆証書遺言は自分1人で自宅などで作成可能であり、遺言書作成に費用もかかりません。

ただし、自分1人で作成するため、遺言の形式を満たしておらず、無効となることがしばしばあります。

さらに、遺言書の原本は本人が保管するため、遺言者の死後、遺言が発見されなかったり、発見が遅れたりする可能性はあります。さらに遺言の内容に不満をもつ相続人に偽造、変造されるおそれがあります。

これに対して公正証書遺言は、公証役場で公証人によって作成される遺言です。

公証人は法律のプロなので、遺言が形式を満たさず無効となることはまずないでしょう。

さらに、遺言書の原本は公証役場で保管されるので、偽造、変造の心配がなく、遺言者の死後に遺言が発見されないという心配もありません。

ただ、公証人に作成してもらうことから、遺言書作成に費用はかかります。

長くなりましたが、要するに遺言を公正証書として作成しておけば、上記のメリットが得られるわけです。

公正証書遺言の作成時には、遺言の内容が、遺言者の真意に基づくものかを公証人と2人の証人で確認します。

また、当然ではありますが、遺言者の本人確認もします。

つまり、遺言が本当に遺言者の真意に基づくものなのかは公証人、証人によって証明されるわけです。

遺言を公正証書遺言として作成しておくことで、のちのちの家族トラブルが回避できます。

信頼のできる人に遺言書の保管を任せる

上でご説明したとおり、公正証書遺言ならば、第三者に遺言の内容を偽造、変造、隠匿される危険はありません。

ですが、自筆証書遺言の場合には、この危険がつきまといます。自筆証書遺言は遺言者自身が保管するためです。

ですので、遺言書を信頼できる第三者に預けておくという選択もあります。

多いのは、弁護士や行政書士などの法律の専門家に預けることです。

保管者と遺言者の間で連絡手段を整えておき、遺言者の死亡を知った保管者から遺言書を提示してもらうわけです。

こうすることで、遺言書が発見されない問題や、偽造、変造、隠匿の危険が少なくなりますね。

ですが、絶対とは言えないので、やはり預ける相手は法律の専門家が望ましいでしょう。

遺言に財産の記載漏れがないようにする

遺言書に財産のすべての分け方が記載されていれば、相続が開始したのち、遺言の内容に従うだけなので、相続人間での遺産分割は不要です。

しかし、もしも財産の記載漏れがあり、後から相続人が認識していない財産が見つかったような場合には、改めて遺産分割協議をしなければなりません。

この協議の段階で、相続人間でトラブルが起こるわけです。

ですので、遺言書に財産の記載漏れがないよう、曖昧な表現がないようにしっかりと事細かく記載しましょう。

遺言作成時の様子を撮影する

遺言作成時の様子を撮影しておくのも良い方法です。

本当に本人が記載しているか、家族に強制させられていないかなどを把握するためです。

ビデオやCD、DVDなどに保存しておきましょう。

また、「この遺言は私の真意に基づくものです。」などのメッセージを残したりするのも良いでしょう。

撮影したデータは、遺言書の原本と一緒にまとめて封筒に入れ、信頼のできる第三者に預けるなど大切に保管しましょう。

遺留分減殺請求をする

不公平な遺言を残された際の相続人の取りうる手段についてお話します。

遺留分(いりゅうぶん)という言葉をご存知ですか?

遺留分とは、相続人に与えられる最低限の遺産の取り分のことです。

他の相続人へ多くの財産が相続されたなどの理由で、この遺留分を侵害された相続人は、財産を多く相続した相続人に対して、遺留分減殺請求を行うことができます。

この請求を行うことで、自身の遺留分を満たす範囲で財産を取り戻すことができます。

遺留分の詳細、遺留分の計算方法、遺留分減殺請求の方法についてもよろしければご覧ください。

遺言書に従わない遺産分割も可能

遺言書があっても、相続人の全員が合意することによって、遺言書とは異なる遺産分割を行うことができます。

相続人全員の合意が必要なので、1人でも反対の相続人がいれば、遺言書の内容に従うことになります。

ですので、到底納得のいかない遺言があった場合には、まずは相続人間で話し合ってみましょう。

それで全員で合意できれば、遺言書とは異なる遺産の分割も可能なのです。

ただ、注意しておきたいのが、遺言で第三者へ遺贈されていた場合、受遺者の合意もとる必要があります。

まとめ

不公平な遺言による相続人同士の争いを回避する方法をご紹介してきました。

遺言は遺言者の最後の大切な意思表示です。遺言者は遺族が仲良く助け合って生きていくことを望んでいます。

それなのに、遺言の書き方に少し不備があったり、曖昧な部分や記載漏れがあったことで、遺族でトラブルとなり、関係が壊れてしまうことは、とても悲しいことです。絶対に回避しなければなりません。

あなたの遺言書の作成と、家族のトラブル防止に、少しでもこの記事がお役にたてれば幸いです。